俺だけ【UR確定ガチャ】で世界最強♪貧乏で無料ガチャしか引けなかったけど、貯めたお金で引いた初めての有料ガチャで無事《ウルトラレア》が出ました!その後も引くたびに最強種の神獣、レア武器、手に入り放題!第1話 父「子ガチャ失敗かよ」

「ハズレ……だな。ッチ、失敗作の出来損ないめ」

 【剣聖】である父はそう言って、俺のことを心底侮蔑した目で見下ろした。
 スキル選定の儀式でのことだ――。

 俺はウルト=ラマン14歳。
 この世界では14歳になると、スキル選定の儀式が行われる。
 誰もが一つ、自分のスキルを得られるのだ。

 父が持つスキルは【剣聖】、誰よりも強い剣の達人だ。
 そんな父は、当然俺にも剣関連の強スキルを期待した。

 だが、そんな俺が授かったスキル――。

「スキル【UR確定ガチャ】……って、なんだよ……それ」

 俺が授かったのは、きいたこともないスキルだった。
 父は不満そうな顔をする。だが一応、俺にスキルを使うようにと促す。

「一応、どんなものか使ってみろ」
「そうですね。お父様」

 俺は父に言われた通り、一度スキルを発動させてみることにした。
 きいたこともない謎のスキルだが、使えるスキルかどうかはやってみないとわからないからな。

「えい! スキル発動! 【UR確定ガチャ】!」

 すると、俺の目の前に文字列が表示される。
 どうやら選択肢のようだ。

【有料ガチャ 1回 100万G / 無課金ガチャ 無料(レアなし)】

 俺はそれを口にだして読み上げる。

「えーっと、一回100万G……って……無理だろそんなの……」

 それをきいた瞬間、父は激怒した。

「何……!? スキルを使うのに金がいるのか!? このハズレスキルの出来損ないめ!」
「ひぃ……」

 その剣幕に、俺は思わず怯えてしまう。
 父の性格は昔から苦手だった。
 いつも剣の修行が厳しくて、俺は泣いてばかりいたっけ。
 くそ……スキル選定の儀式で、父を見返すチャンスだと思っていたのに。
 このままじゃ……。

「ま、待ってくださいお父様。まだこの無課金ガチャなるものがあります。こっちなら、お金がなくても使えるはずです……!」
「そうか。よし、使ってみろ。これが最後のチャンスだぞ」

 俺は目の前に浮かんでいる文字列を、指でタップする。
 無課金ガチャという項目を選んで、使用してみる。
 すると――。

【無課金ガチャを1回引きます。よろしいですね?】

「はい」

 俺の目の前に、まばゆいエフェクトが現れる。
 そして、大げさな効果音が流れ、目の前に光り輝く物体が現れる。

「こ、これは……!」

【じゃん! ノーマルの『やくそう』が手に入りました! 無課金ガチャは一日に一回無料で引くことができます。本日の無課金ガチャはこれで終了です】

 とのメッセージとともに、俺の手元には一つのやくそうが残された。

「え……? これだけ……?」

 俺のスキルは、やくそうを一個生み出すだけのクソスキルだってことなのか……????
 振り返ると、さっきとは比べ物にならないくらい激怒する父の姿があった。

「貴様は……! ゴミを生み出すことしかできぬのか! この失敗作め! お前などはもう息子ではない! 今日でうちを追放だ! このカスが!」

 俺は無能の烙印を押されてしまった。
 そして、俺はあてもなく無一文で家を追い出されることになる――。

 一方で、俺の幼馴染のヘシリ・プーサックが【剣聖】のスキルを引き当てた。

「げへへ、やったぜ! この俺様が【剣聖】だってよ!」
「おお! ヘシリくん、出来損ないの息子の代わりに、うちの養子にならないか?」
「ええ!? いいんすか! やったぁ! 【剣聖】様の息子だぜ!」

 父はあろうことか、あのぶっきらぼうで性格が最悪なヘシリを、俺の代わりに養子にするというのだ。
 まあ、もう家を追放された俺には、関係のないことだ。

◆◆◆

「はぁ……これからどうするかな……」

 着の身着のまま追い出されたので、行く当てもなければ、持ち物もない。
 せめて金さえあればなんとかなるんだがな……。
 俺に残されたのは、この【UR確定ガチャ】とかいう謎のクズスキルだけだ。

「もう一回、使ってみるか。くそ、こっちの有料ガチャさえ引ければな……1回100万Gとかおかしいだろ……」

 あれから一日経ったので、俺はまた懲りもせずスキルを発動させてみることにした。
 自分のスキルが本当にゴミだったのか、確かめたかったのだ。
 きっと俺のスキルにだっていいところがあるはず……そう信じたかった。

「えい! 発動! 無課金ガチャを1回っと……」

 すると、今度は昨日とは違う結果が出た。
 どうやらこのガチャというのは、やるたびに違う結果が出るようだ。

【じゃじゃーん! Nノーマルの『どうのつるぎ』が当たりました!】

「おお……!? やくそうよりはまだましか……。でも、これじゃあ毎日カスを吐き出すだけのカススキルだな……」

 この世界のアイテムには、それぞれレア度が存在した。
 レア度はノーマルか……まあ、無課金ガチャってのはNしか出ないみたいだな。
 もしかしてこの【UR確定ガチャ】ってスキル……URってのはレア度のことか!
 そしておそらくガチャってのは、くじ引きのようなもののことなんだろう。
 ってことは、100万Gあつめたら、確定でURが出るスキルってことか……!?

「もしかしたら、案外このスキルは使えるのかも……!?」

 だけど、俺にそんな大金を用意できるわけもなかった。
 それどころか、昨日は野宿をする羽目になったくらいだ。
 今の俺にはその日暮らしをする金すらない。

「しゃあない、冒険者にでもなって、自分で稼ぐとするか! ちょうどさっき武器も手に入れたことだしな!」

 俺は、冒険者ギルドに歩を向けた。

◆◆◆

 冒険者として登録するには、どこかのパーティに所属しているか、紹介が必要らしい。
 ということで、俺は『どうのつるぎ』片手に、パーティを組んでくれる人を探すことにした。

「あの……俺とパーティを組んでくれませんか!?」

 可愛い女の子のいるパーティに、声をかけてみる。
 たしか彼女は有名冒険者のカスミさんだ。
 有名冒険者のカスミさんとパーティを組めたら、俺も……!
 しかし――。

「あんたの持ってるの、どうのつるぎ?」
「そうです!」
ノーマルランクの装備しかない初心者じゃちょっとね……せめてRレア以上の武器じゃないと……お話にならないわ」
「そんな……」

 そんなことを言われても、今の俺にRレア以上の武器を用意することなんてできない。
 なにせ金がないんだから。金を稼ぐために冒険者になりたいっていうのに……。

「お願いです! そこをなんとか……!」
「うーん、身の程知らずは嫌いよ。失せなさい」

 そんな感じで、俺はたくさん声をかけたが、断られ続けた。
 こうなんども女に振られると、さすがにメンタルにくる……。
 男だらけのむさ苦しいパーティにも声をかけたが、よけいに雑魚だと罵られた。

「くそ……俺は冒険者になって金を稼ぐことすらできないのか……」

 俺は絶望のまま、冒険者ギルドを後にした。
 こうなりゃ、生きるために雑用でも日雇いでもなんでもするしかねえ。
 とにかく、肉体労働でもなんでも、仕事を見つけなきゃ。
 今まで剣聖の息子として比較的楽に生きてきた俺には、つらい道のりになりそうだ……。

「だけど働いてなんとか100万Gさえ貯めれば……俺も人生一発逆転……!」

 それだけをモチベーションに、俺は死に物狂いで働き続けた――。
 そして5年の月日が経過する――。

「やったぁ……! ついに、100万G貯めたぞ……! これで、有料ガチャを引ける……!」

 そして俺が引き当てたものとは――。

 ――つづく。


「ついに、100万G貯めたぞ……! これで、有料ガチャを引ける……!」

 俺は5年もの月日をかけて、地道にコツコツと金を稼いだ。
 肉体労働や日雇いなどで、しんどい思いをして貯めた金だ。
 Rの武器を買って冒険者をやったりもしたが、それも長くは続かなかった。
 なんというか、パーティでの行動が性に合わなかったのだ。
 武器も雑魚だったし、肩身が狭かったしな。
 てなわけで、いろんな仕事を転々として、やっとの思いで貯めた100万だ。

 それを一気に、ガチャにつぎ込む。
 俺の【UR確定ガチャ】というこのスキル、それが無能ではないと信じて……!

「うおおおおおおお!? こ、これは……!」

 有料UR確定ガチャを引いて、俺が手に入れたもの、それは……。

《サンライトクリスタル》
 レア度 UR★★★★★★★★★★
 説明 光り輝く、とても希少価値のある宝石

「まじか……! マジでURウルトラレアが出たぞ!」

 URのアイテムなんて、王族か一流冒険者しか持っていないような、超レアアイテムだ。
 この目でURの宝石を目にする日がくるなんて……。

「もしかしてこれ、売ったらとんでもない値段になるんじゃ……?」

 URのレアアイテムは、どれも高値で取引されている。
 なかでも、こんな希少な宝石、きっとすごい値段で売れるに違いないぞ。
 そしてこれを売れば、さらにまた金が手に入る。
 金が手に入れば、さらにまたガチャを引くことができるんじゃないのか……!?

「そうとなれば……!」

 俺はさっそくその足で、宝石商に向かった。

「おお……! これは天然のサンライトクリスタル! しかも無傷で、かなり状態のいいものですな……!」

 サンライトクリスタルを手にした宝石商は、ルーペを片手にそう評した。
 そうか、俺のサンライトクリスタルは、ガチャで出したものだから状態もいいのか。
 普通にダンジョンなんかでサンライトクリスタルを採掘しようとしたら、大きさや状態にもばらつきが出るもんな。
 これはさらに値段のほうも期待できるな。

「それで、いくらくらいになるかな?」
「そうですねぇ……これだけの大きな塊でしたら、ざっと1000万Gではいかがでしょうか」
「いっ……1000万!?」

 あまりにもの大金に、俺は思わず大声を出してしまう。
 1000万ってことは、有料ガチャ10連分になるってことだよな……!?

「よし、売った!」
「まいどあり……!」

 俺は、いきなり所持金が10倍になってしまった。
 5年かけて貯めた100万が、ガチャのおかげでいきなり1000万だぞ!?
 もしかして、いや、もしかしなくても、このガチャスキル、本当はすごい有能じゃないか……!?
 確定でURが手に入るんなら、一度100万課金してしまえば、あとは芋ずる式に儲かるしかないじゃないか……!

「これは……俺にも転機がきたな……!」

 俺はこのスキルを利用して、成り上がってみせる!
 そして俺を無能だと決めつけた父や、俺を門前払いした冒険者たちを見返してやるんだ……!

◆◆◆

「さて、やっぱガチャ回すしかないよな……!」

 1000万G手に入ったからには、これを利用しない手はない。
 さすがに全部をガチャに突っ込んでしまうのは危険だ。
 まずは1回、試しにガチャをまわしてみよう。

「えい!」

 すると――。

《破邪の剣》
レア度 UR★★★★★★★★★★
攻撃力 +500
説明 アンデットに特効のある、聖なる剣

「おおお……!? URの武器だと……!?」

 これさえあれば、俺でもまた冒険者になれるんじゃないのか……!?
 こんなレアな武器、生で初めてみた。
 ずっしり手に重い感覚が伝わる。
 これを持っただけで、俺もなんだか強くなったような気分だ。

 これをさらに売れば、また金が手に入るだろう。
 まあ、初めて手に入れたUR武器だから、これは使ってみるつもりだけど……。
 とにかく、このスキルはとんでもない。
 もしかして、無限に金が増殖するのでは……?

「よし、もう一回だ!」

 俺はもう一回、100万G突っ込んでガチャを回す。

《レッドドラゴン装備》(全身)
レア度 UR★★★★★★★★★★
防御力 +652
説明 レッドドラゴンの素材を使った上級装備

「ふおおおおお! ガチャって気持ちいいいいいいいい!!!!」

 何度回しても、必ずURが出るなんて最高だ。
 レッドドラゴン装備、すっごくかっこいいぜ。
 しかも全身装備が一気に出るなんて。
 これで武器と防具がそろった。
 俺も、再び冒険者になれるぜ……!

 全身UR装備で固めるなんて、どんなブルジョア冒険者だ?
 よほどの有名冒険者でも、ここまでレア装備で固めてるやつはいないだろう。
 俺でもAランク冒険者になれる日も近いかもしれない。
 俺は内心、うきうきワクワクしていた。

「よっしゃ、金はまだまだある! もう一回だ!」

 俺は欲望のままにどんどんガチャを回す。

《神獣 フェンリル》
レア度 UR★★★★★★★★★★
種別 神獣
説明 テイム主の頼もしいお供となる忠実なしもべ
   古から存在する神獣種の代表格

「うえええええええええ!? ふぇ、フェンリル……!?」

 俺の目の前にいきなり、もふもふの巨大な体が現れた。
 真っ白い毛がふわふわ風になびいて、きりっとした顔つきが実に神々しい。

「主殿。我を引き当ててくださり感謝する。なにか命令はあるだろうか?」
「キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!」
「我は最強の神獣、主のいくところなら、どこでも着いていって、お守りする」
「うおおおおすごいな。頼もしい。でも、そのでかい図体はどうにかならないのか……?」

 フェンリルは軽く3メートルくらいはあった。
 俺を余裕で載せて走れそうだ。
 ていうかこれ、エサ代結構かかりそうだな……。
 まあ、金はいくらでもあるし、いいか。

「そうだな。小型化もできるぞ」

 そう言うと、フェンリルは小さな、子犬くらいのサイズに縮んでみせた。

「ふぉおおおおお!? くわぁあいいいいいいいい!!!! キュート♡」

 俺はそいつをもふもふ、よしよし、なでなでした。
 かわいくて最強のしもべとか、URガチャ半端ねええええ!!!!

「よし、お前の名前は今日からコハクだ!」
「コハクか。いい名前だ。主、感謝する!」

 コハクは小さくなったせいか、さっきより高くてかわいらしい声で返事した。
 よし、これで俺にはURの武器と防具、それから頼もしい相棒がそろった。
 今の俺なら、きっとすごい冒険者にだってなれるんじゃないか……!!?!?
 今の俺なら、パーティを組まなくてもソロでだって戦えるだろう。

 それに、UR装備なら、引く手あまたに違いない。
 前みたいに気に食わない冒険者に頭を下げて、こびへつらって、パーティに入れてもらったりなんかしなくてもいいんだ。
 もしかしたら、美少女冒険者とお近づきになって、彼女ができたりするかも……!?!?
 そうときまれば、さっそく冒険者登録だ! 前の冒険者登録は期限がもう切れているだろうからな。
 俺は、フェンリルのコハクに乗って、冒険者ギルドを目指した。


 全身UR装備と神獣フェンリルのコハクを手に入れた俺は、その足で冒険者ギルドに向かった。
 前に冒険者登録してあるから、今回は紹介がなくても大丈夫だ。
 俺はカウンターに行って、冒険者登録の手続きを申し込んだ。

「では、こちらの紙にお使いの装備を記入してください」

 受付嬢はそう言って、俺に用紙を手渡した。
 俺はそこに、自分の装備を記入する。

名前 ウルト=ラマン
年齢 19歳
性別 男
武器 破邪の剣(UR)
防具 レッドドラゴン装備(UR)
仲間 フェンリル一体(UR)

「これでよし……っと」

 紙に必要事項を記入して、俺はそれを受付嬢さんに返した。
 俺の用紙を受け取ると、受付嬢さんは目を丸くして二度見して驚いた。

「あ、あの……! これって本当ですか……!? ウルトさんはUR装備をお持ちなんですか……!?」
「え、本当ですけど……」
「す、すっごおおおおおおい! 私、全身UR装備の方なんて初めてみましたよ!」
「えへへ……」
「普通はどんなAランク冒険者でも、武器だけとか、防具だけとかですよ。これなら、ウルトさんはすぐにAランクになれますね! 多少のブランクがあっても、大丈夫です!」

 受付嬢さんは俺を過剰に持ち上げた。なんか連絡先書いた紙とかももらった。
 すごい……UR装備ってだけで、こうまで人の対応が違うのか。
 あとで食事にでも誘おうかな。

「では次に、魔力の測定をしますね。こちらの水晶に手をかざしてください」
「うーん、俺はあまり魔力は高くないからなぁ……」

 気乗りしないまま、俺は水晶に手をかざした。
 すると……。

 ――ドガアアアアアアアアアアン!!!!
 ――バリバリバリィン!!!!

「ふぁっ……!?」

 なんと、俺が手をかざした瞬間に、水晶から謎のビームが出て、割れてしまった。
 ギルドの壁に穴が開いてるぞ……。

「ど、どういうことなんだ……!?」
「どうやら、ウルトさんの魔力があまりにも大きすぎて、この水晶では測れなかったみたいですね……」
「そんな馬鹿な……」

 俺はおせじにも、大した魔力だなんていえるようなものじゃないのに。
 それは昔に冒険者登録をしたときにもわかっていることだ。
 なら、なぜこんなことに……?
 この5年で俺の魔力に変化があったのか?
 いや、そんな馬鹿な。
 肉体労働だけで魔力が成長したりなんかはしないだろう。
 俺が疑問に思っていると、小さくなって肩にのっかているコハクが口を開いた。

「主、それはおそらく、我のせいでしょうな」
「え? コハクのせい?」
「我をテイムしているので、主は我の魔力を一部取り込んでいる状態になっているのです」
「そうなのか……」
「テイムする魔物が増えればその分、魔力は増えていきます。我の魔力があまりにも大きかったせいでしょうな……」
「さすがURの神獣だな」

 ということで、俺は魔力も装備もやばい状態で登録完了となった。
 ここまでのステータスはなかなかないそうだ。
 俺は晴れて、最初からAランクでの登録を許された。
 いきなりAランクなんて大丈夫だろうか。

「それではウルトさん、これにて冒険者登録は終わりです。今後の活躍に、期待していますね」
「どうも」

 受付嬢さんから、冒険者カードを受け取る。
 さて、さっそくなにかクエストを受けるかなと、振り向いた瞬間。
 俺の周りには、軽い人だかりができていた。
 なにごとだ……?

「おいあんた! UR装備なんだってな。ぜひうちのパーティにきてくれ!」
「いや、うちだ! うちにきてくれ!」

 どうやら俺がUR装備を持っていることをききつけた冒険者パーティが、俺を勧誘にきたようだ。
 それにしても、ほんと引く手あまただな。
 その中には、5年前俺を振った冒険者パーティもいた。
 カスミさん率いるAランクパーティだ。

「ねえあんた、うちに来ない? ていうか、ぜひうちに来てほしいの。あんたのようなUR装備のすごい新入りが入れば、きっと最高のパーティになる!」
「えぇ……」

 カスミさんは、どうやら5年前に俺を振ったことなど忘れているようだ。
 俺のことをN装備しかない身の程知らずだとか言って、ひどい拒み方をしたというのに。
 うーん、手のひらの返しようがすごいな。これがUR装備の力か。

「うーん、今のところは、俺はパーティに入るつもりはないかな。ソロでやってみます」
「そんな! そこをなんとか! お願いだよ!」
「いえ、残念ですが結構です」
「そんな! このままじゃ、うちのパーティはもう落ちぶれるばかりだよ……」
「俺の知ったことじゃありません」

 俺は、カスミさんの頼みを、きっぱりと断ってやった。
 以前断られた人を、振るのはなんだか気持ちがいい。仕返しのつもりじゃないけど、ちょっとすっきりした。
 カスミさんも5年前はかなりの美人だったけど、今や太って見る影もないしな。
 俺のような新人をあそこまで勧誘してくるということは、落ち目のパーティなのだろう。
 5年もあれば、冒険者なんかけがをしたり、衰えたりでパーティの勢力図はかなり変わるからな。
 俺はそのまま、次々と勧誘されたけど、とりあえず断っておいた。

 まあ、いい仲間に恵まれれば、俺もパーティを組むことにやぶさかではない。
 だけど、こんなふうにUR装備の噂をききつけて軽々しく誘ってくるような連中とは、パーティを組む気にはなれなかった。
 今の俺のステータスを考えれば、ソロでも十分やっていけるだろうしな。
 それに、パーティを組むにしても引く手あまたな状況だ。俺は好きにするぜ。

 パーティ勧誘が一区切りついたころ。
 ギルドの中が、再び騒がしくなった。
 なにかあったのだろうか。
 入口のほうだ。

「う、うぅ…………」

 声のしたほうを見ると、そこにはボロボロに負傷した女冒険者の姿があった。

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