映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』を観て落ち込んだ話
昨夜劇場で観てから、とにかく感想を言いたくて、いろいろ考えた結果、noteを始めてしまった。
観るのも遅かったし、東京ですら公開館数が少なく、周りに観ている人がほとんどいないのと、薦めてその人が観るまでを待てないのと、観てない人に政治家のドキュメンタリー映画の話を熱量MAXで話すのは魅力を正確に伝えられる自信がなかった。
この作品は仲の良い人から「絶対に観てほしい」とLINEが来たので、観に行った。
絶対ってあんまり使わない人なので気になった。
観て良かった。
本当に良かった。
映画館で泣くって、いつ以来かあまり記憶にない。あと、少し落ち込んだ。
鑑賞後はむさぼるようにいろんなメディアの記事解説や、感想を見た。
公式サイトが細かく記事をまとめてくれていたので読んだ。
政治的な解説を交えた論評に「なるほど、勉強になるな」と思った。
だけど、僕は「引っ張られたくないな。まだそっちに行きたくないな」とも思った。
僕はこの映画は、【小川淳也議員について】の作品というより【小川淳也さんについて】の作品だと思いたい。
小川淳也さんとその家族、両親、地元の皆さんのお話で、単純にそこに感動した。
舞台が政治や選挙ではあるからこそ成り立つ作品なのだけれど。
もちろん現在の政治に対する憤りも強く感じた。
そうなのだけど、もうちょっとそっちで喋らず、小川さんの話をしたいなと思った。
僕はこの作品を、一人の人間を追いかけたドキュメンタリー作品として感動したから。
小川さんが素敵だからこそ、多くの人に観てほしいし、とりわけ若い世代に観てほしい。
普通にドキュメンタリー映画として。小川さんとその家族の生き様を観てほしい。
そんな中でのネット記事の見出しにドーンと首相や都知事の名前、桜がどうかの文字は単純にめちゃくちゃ怖いぞ。
だから、観る人が限られたら残念だなと思った。
そして、僕はスクリーンを観ながら「なんだか自分が恥ずかしいな」とずっと思っていた。
この人ずっと目の前のことに真剣に向き合って、1秒1秒大切に生きているのに。
この人の1秒と自分の1秒が同じと言えるのか。不公平だろ、と。
こいつさっき映画が始まるまで、芸能人の匂わせ縦読みSNSについてずっと調べてたぞ。
もったいない。差し上げろお前の時間。
自分の人間性を横目で軽蔑していた。
宮藤官九郎さんがラジオで小川さんについて「真面目で誠実で最初はこの人つまんない人かなと思った」と言っていて納得した。
僕もなんとなくそう思いながら観てたけど、なんか小川さんはずっとその枠組みに入っていかなかった。
入ってくれたらその認識で観れて楽なのに、ずっと掴めないで少し落ち着かなかった。
この作品の面白さがずっと不思議。
喧々諤々、怒鳴り合いでエネルギッシュなドキュメンタリーぽい画があるかと言えば、今パッと思い出せない。
大島監督と小川さんとの関係性が、17年の仲だということを隠す気もさらさらないのでかなり自然。たまにズバッと意見を言うけど、それは煽ったりとかではない。寄ってるように見えそうでそこまで見えない。でもお互いに信頼はしていると思う。
この作品で煽ってるのはタイトルなだけな気がする。
小川さんのお父さんもお母さんも、息子はあんまり政治家に向いていない(のかもしれない)と言う。
優しすぎるのだと。でもいざ選挙になったらめっちゃ手伝う。チラシ折りまくるし、町内に電話しまくる。
周りが変に盲目的じゃない。
秘書も、家族も、支援者も。
一生懸命応援してるのに、外野だけが感じる支持者への気持ち悪い熱量がない。本人の人柄なのかな。
小川さんがいきなり49歳でプロテニスプレーヤー目指す!とか言い出しても、なんとなく皆ゾロゾロ机並べて「小川淳也ウィンブルドン目指します!」のチラシ折ったり、地元に電話するんじゃないだろうか。
だからこそ慶應教授のパンチライン炸裂のあの応援演説が生まれたんじゃないだろうか。
2人の娘さんも[娘です]のタスキをかけて、お父さんとチラシを配りまくる。でも政治家の嫁は「絶対嫌や」と姉妹で笑う。それを聞いて母親も笑う。
有権者に怒られるお父さんをそばで真っ直ぐにじっと見つめて「申し訳ございません!」と一緒に謝る。
同じ世界線と思えない。
商店街で娘が見てる中おっさんにブチギレられるの見せられますか。
100%友人に見られる超地元で、二十歳前後の娘がお父さんとママチャリ漕いでお父さんの名前叫ぶこと、できますか。
作品とは筋が少しズレるけど、
とても落ち込んだ。
自分の日々の人生の不誠実さに。
僕は人生でこんなに何かに真っ直ぐになったことがない。
恵まれた家庭に生まれ、適当に私立の高校出て、一浪してから地元の私大を出た。
上京してからも、就職してからも。
今思うと、適当になんとなく生きてきた。
大義もないし、生涯で成し遂げたいこともない。
飲み会では、誰かを非難して心を落ち着かせていた。
どうやったらセックスまで行き着けるかに思考の98%ぐらい費やしていた。
そんなここ数年の自分を半分呪いながら観たこの作品。
泣いたけど、その涙は自分の不甲斐なさも含まれてたのか。
家族や少ない友人にLINEで薦めた。
絶対に観てくれ!と。
政治家のドキュメンタリーでとどまらないといいな。