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私的年間ベストアルバム20選 2020

○はじめに
ここ数年Twitter上では年ベス的なことをしてたのですが、今年は備忘録としてブログっぽいものにまとめるべく、はじめてnoteで記事を書いてみました。

今年出たアルバム(EP含む)で特に好きだったものを20枚選びました。
完全に個人の嗜好によるセレクトでジャンルもバラバラですが、共感してもらえたり、新しいお気に入りを見つけるきっかけになったら幸いですし、なにかしらリアクションいただけたら嬉しいです。

○今年の20枚
便宜上数字をふっていますが、順位ではなくアーティスト名昇順でならべています。一覧のあとにそれぞれSpotifyかbandcampのリンクと短評(というか感想)を記載してます。

1.altopalo > farawayfromeveryoneyouknow

冷ややかでチルな質感のアヴァンなソウル/R&B
全体的には遅効性でダウナーな感じなんだけど、どこかキャッチーなところもあって、その不思議なバランスが肌に馴染むと病みつきに
根の優しい天邪鬼な人が作った音楽なのではないかと勝手に妄想
なんだかんだで今年一番聴いたのはこのアルバムかもしれない
部屋を暗くして一人で聴きたい

2.Chassol > Ludi

カットアップされた生活音や人の声にリズムと音階を重ねたものがジャズで糊付けされている感じ
音から音楽になる瞬間に何度も「スゲ〜」と感嘆する
音楽的に才能豊かな人が普通に生活してる時、頭の中ではこんな風に音楽が鳴ってるのだろうか
転調を伴って展開する感じはプログレっぽさもある
あとベースの音が非常に好き
↓は音楽的な経歴、制作プロセス、今作のテーマについて簡潔に読める面白い記事だった
https://qetic.jp/interview/chassol-190927-feature/332851/

3.DJ Python > Mas Amable

ディープレゲトンという聴き慣れないカテゴライズに惹かれて聴いてみたら非常によかった
初めて聴いた時、冒頭の雨音だけが鳴っているところにドッドッドッていうあまり聴き馴染みのないリズムのキックが入ってきたタイミングで、心の中で「ほう…」て声がでました
全体的に冷ややかでヒプノティックな感じでシームレスに繋がっていて、やや波はあるものの突き抜ける前の盛り上がりがジワジワ続いて最後はスッと終わって「もう終わり?」となる流れで中毒性高い

4.Dylan Henner > The Innovation of the Human

人の声と虫の音とシマー感あるリバーブ処理と大小様々な揺らぎが印象的なニューエイジ/アンビエント
↓はNEWTONEのサイトでめちゃ共感した叙述

ミニマル・ミュージックやニューエイジの流れを組みながら、クラシック、教会音楽の要素が根底にあるようなサウンド。静けさと福音的な神聖さを今日的テクノロジーを通過してアウトプット。

↓はbandcampのキャプションの一部

人間とテクノロジーの関係を人間性の尺度として考え、コンピューターに「人間はどのように聞こえると思いますか?」と尋ね、それを使ってこの合成ボーカルのアルバムを作成しました。

5.EDEN > no future

EDMやダブステップを通過したようなインディーポップ
トラックのサウンドテクスチャ、メロディー、歌声、どれをとっても非常によくて、全体的にエモい雰囲気
ところどころ「君の名は。」のセリフがサンプリングされていて、新宿で働いている自分としては通勤中に聴きながら余計にエモさを感じていました
語尾の歌い方には三浦大知っぽさ、節回しには小袋成明っぽさを感じていて、日本人の耳に馴染みやすいやつなのではないかと思ってます

6.Flanafi > Flanafi

全体的にはチルなアヴァンソウル風なのはaltopaloと近い雰囲気を感じるけど、こっちのほうが土臭い感じがする
抑制効きつつもファンクなノリの中でのマスロックっぽいギターのフレージングが独特で個人的にツボでした
今年12月に出た2ndもよくて甲乙つけがたくて聴き比べると楽しい
2ndはこちらに比べてソウル要素控えめかつアンビエンスが増してて、よりaltopaloに近づいた印象

7.K-Lone > Cape Cira

エキゾ感とエレクトロニクスの融合した第四世界的なダウンテンポ
全体的に生でパーカッシブな音が多くてトライバルな雰囲気ながらもキャッチーにまとめられている印象
主旋律のリフレインの裏に、謎の金モノ、ハンドクラップ、シェイカー、鳥の鳴き声、波、雨などいろんな音がしていて楽しい。目をつぶってヘッドホンで聴きたい
最近Jon Hasselのリイシューが話題になってたけど、オリジナルのFourth World的音楽にはハマれなかった人でもCape Ciraは聴いてみて欲しいです

レビュー漁ってるときに見つけたRAによる第四世界に関するすばらしい記事
https://jp.residentadvisor.net/features/3023

ディスってるような内容なのに8.0つけてるのがツンデレで可愛いPitchFork
https://pitchfork.com/reviews/albums/k-lone-cape-cira/

8.LOG > LOG ET3RNAL

今年出たソロもよかったUllaのユニットの1st
ダブテクノ風味のアンビエントというところはソロ作と似た雰囲気だけど、若干テクノ寄りなソロに比べてこちらの方がダブ感強めかつアンビエント寄りな印象
洗練されたサウンドテクスチャが心地よい
アンビエントの感想書くのむずい

9.Mac Miller > Circles

歌とラップの中間のようなフローとスロウ目でレイドバック感あるトラックが相まって独特な雰囲気を醸している
全体を満たしているアンビエンスからか、遺作であるという認知からか、これを聴いていると雲の上の情景というかあの世感が喚起されてしまう
追加曲も好きなのでDeluxe版を推します

10.the Microphones > Microphones in 2020

同じテーマが延々と繰り返されるところに対して少しずつ加わる変化に引き込まれる44分44秒で、1曲としてはだいぶ長尺だけど、アルバム聴きの人にとっては丁度いい長さかも
まず導入から鳴ってるアコギのオーバーダブがとても気持ちよくてこれだけで永遠に聴ける
フォーク、オルタナ、インディーな音で構成されてるけど、メインテーマのリフレインなどからはアンビエント性も感じるし、中盤のドラマチックな展開も非常によい

11.Moses Boyd > Dark Matter

サウスロンドン界隈はJTNCでもよくフォーカスされてて好きなの沢山みつけられたんですが、その中でも1,2を争う衝撃を受けたのがこれ
ジャズ、アフロビート、クラブ的な音の混合はストリート感ある夜の雰囲気に仕上がってて、薄暗いライブハウスでお酒飲みながら爆音で聴きたい
Joe Armon-Jones, Nubya Garcia, Obongjayarなど客演も豪華
↓のeleking記事が簡潔にまとまっていてよかった
http://www.ele-king.net/review/album/007497/

12.Natalie Greffel > Para Todos

ジャジーMPBという括りらしい
前述のモーゼズボイドとはうってかわって天気のいい夏の昼間といった印象の音
ソリッドなバンドアンサンブルと、カラッとした感じでクドくないのに存在感抜群なボーカルが非常によい
自分はこってりしたMPBはあまり得意ではないんですがこれは大好きだったので、ふだんブラジル音楽聴かない人でもJTNC系好きな人には刺さるのではないでしょうか

参考記事↓
https://musica-terra.com/2020/04/28/natalie-greffel-para-todos/

13.Pet Shimmers > Face Down in Meta

Oliver Wilde率いるバンドの1stフル
ローファイ感を共通項にヴェイパーウェイヴとインディを悪魔合体させたような音楽性やボーカルにかかった独特なエフェクトは過去のソロ作の延長線上にあるものの、今作の特色の疾走感と女性Voによって過去作にはない謎の爽やかさがある
奇妙さとキャッチーさが絶妙なバランスで同居しててクセになるやつ
今年10月に出た2ndも同じ雰囲気でよいのだけど、こちらのほうが1曲1曲の完成度が高く感じました

14.Rob Mazurek • Exploding Star Orchestra > Dimensional Stardust

前衛ジャズ、室内楽、ポストロックの折衷のような音楽性だけどおもちゃ箱感あるというか、前衛とキャッチーの塩梅がツボ
Rob Mazurekはシカゴポストロック界隈の重要人物のようで、今年出たジェフパーカーの新譜にも参加していたらしい

↓参考記事
http://www.ele-king.net/news/007878/

15.Shabaka and the Ancestors > We Are Sent Here By History

サウスロンドン系でモーゼズボイドと同じくらい衝撃を受けたやつがこれ
スピリチュアルでスペーシーな雰囲気とアフロなノリのゴリっとしたグルーヴが両立してるのが新鮮に感じた
2018年の記事なので当然このアルバムがについては言及されていないけど、シャバカ・ハッチングスやサウスロンドン界隈については↓の柳樂さんの記事が非常に勉強になりました(モーゼズボイドもでてくる)
https://note.com/elis_ragina/n/n617cc66b7c85

16.Sign Libra > Sea to Sea

奇抜さはないものの一音一音のテクスチャが好きすぎるニューエイジポップ
個人的にツボなのは3曲目の1:50〜2:00のところで、テクノ的な「焦らしからのカタルシス」がよくていつもちょっとニヤけながら聴いている
↓はNEWTONEのサイトで共感した叙述

マジカルに奏でる音と相まって、あの世感、不思議な魅力を放っている
「Sea To Sea」の9つの楽曲の海は、月面の平原に名付けられた月の海(Luna Maria)を因んでいる。月面での重力作用や、太陽の光と地球の影、神話的性質などに纏わる。

17.SLIFT > UMMON

フランスの3ピースバンドの2rdフル(たぶん)
ブルーチアー的なファズ全開のヘビーサイケに宇宙っぽい雰囲気がプラスされた感じ
宇宙っぽさはファズギター×空間系およびモジュレーション系のエフェクトとアレンジから来ていて、ベースとドラムもギターに負けず主張していてとてもよい
IQ低めな感じ(褒めてる)とストイックさの絶妙な塩梅はVoivodとかMegadethを連想したり
https://theeliteextremophile.com/2020/03/23/album-review-slift-ummon/

On Ummon, Slift have harnessed the menace of doom metal, the energy of garage rock, the hypnotic repetition of krautrock, and the general strangeness of prog. They put those elements together in an impressive and intense package. This album is demanding, but it is worth your time and energy.

18.Wyatt Smith > Maple

エモとフォークの中間的な感じで、アコギの弾き語りを中心に据えたバンド編成の音
曲もメロディーも歌声もエモいし最高なのに加えて、そこまで手数多くないもののアレンジで聴かせてくる感じ
特に時折入ってくるインディー感あるギターワークからはYuckの1stを思い出しました

19.青葉市子 > "gift" at Sogetsu Hall

青葉市子の10周年記念コンサートの音源
録音がよく、ライブ盤ならではのサウンドテクスチャが非常に魅力的なのでスピーカーよりもイヤフォン/ヘッドフォンで聴きたい
吐息多めの声がリバーブと相まって飽和感ある音になってて脳みそにダイレクトに響いて感覚を覚えるし、ギターの箱鳴り感や運指ノイズなどもASMRチックなよさがある
MCもよくて、「不和リン」と「レースのむこう」の間のMCとか内容が素敵すぎるし声もいいので詩の朗読でも聴いてるような感覚に
白眉は11曲目の「機械仕掛乃宇宙」で、複数楽章構成13分超のガットギター弾き語りオペラ、特に後半がアツい

20.青葉市子 > アダンの風

「沖縄を舞台にした架空の映画のサントラ」をテーマに、アレンジャーを招き入れて制作した新基軸のコンセプトアルバム
これまでとは違い、弾き語り以外の音が盛り込まれるなどアレンジに工夫が施されているのと、全体の雰囲気も過去作のようなファンシーさはなく神妙な感じ
デビューから10年磨いた「声とギターとリバーブによるミニマルなスタイル」は今年出たライブ盤で極まれりということなのかな
先日の原美術館での配信ライブではこのアルバムの曲も弾き語りでやっていたけど、バンド編成でのライブも観てみたいな
(2013年に「青葉市子と妖精たち」名義で出ている 坂本龍一・細野晴臣・小山田圭吾・U-zhaanとのセッションを記録した企画盤 も最高なので期待大)
自主レーベルも立ち上げているし、今後の活動が楽しみ

おまけ 次点30枚

個人的には今年も大豊作だったのでベスト20からは漏れたものでもよいのがたくさんありましたが、書くのが手間だったのでここからは短評なしです 笑
なんとなく趣味が合うなと思った方がいたら、こちらも聴いてみてください。
(こちらも順位はなくアーティスト名昇順)

1.The Avalanches > We Will Always Love You
2.Ben Seretan > Youth Pastoral
3.Brooke Bentham > Everyday Nothing
4.Bullion > We Had d Good Time
5.Christian Loffler > Lys
6.Cut Worms > Nobody Lives Here Anymore
7.Dominic J Marshall > Nomad's Land
8.Gunn - Truscinski Duo > Soundkeeper
9.Harmonous Thelonious > Plong
10.Idris Ackamoor・The Pyramids > Shaman!
11.Kelly Lee Owens > Inner Song
12.KEYAH/BLU > Sorry, I Forgot You Were Coming
13.Khruangbin > Mordechai
14.Laura Marling > Song For Our Daughter
15.Lee Paradise > The Fink
16.login > bitzer
17.Luke Stewart Explosure Quintet > S/T
18.Men I Trust > Forever Live Sessions
19.Moodymann > TAKEN AWAY
20.Ojo de Agua > S/T
21.Olive Oil > ROLLIN' 710
22.Owen > The Avalanche
23.Pure X > S/T
24.Squirrel Flower > I Was Born Swimming
25.Sven Wunder > Eastern Flower
26.Tom Misch, Yussef Dayes > What Kinda Music
27.Ulla > Tumbling Towards a Wall
28.Yung Lean > Starz
29.Yussef Dayes・Charlie Stacey・Rocco Palladino > Welcome to the Hills
30.岡田拓郎 > Morning Sun

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