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私的年間ベストアルバム20選 2021

アフターコロナといっていいのかよくわからない状況が続いてますが、はやいもので今年も年ベスをまとめる時期になりました
今年は3月に転職したこともあり、近年の中では音楽鑑賞にあてられた時間は比較的少なかったですが、幸いなことに素敵なアルバムをたくさん見つけることができました
コロナ禍の生活も板についてきたかなと思いながらもどこかでしんどさを抱え続けている、そんな自分の心情を反映したようなセレクトになった気がします

○今年の20枚
今年出たアルバム(EP含む)で特に好きだったものを20枚選びました。
完全に個人の嗜好によるセレクトでジャンルもバラバラですが、共感してもらえたり、新しいお気に入りを見つけるきっかけになったら幸いですし、なにかしらリアクションいただけたら嬉しいです。
便宜上数字をふっていますが、順位ではなくアーティスト名昇順でならべています。それぞれSpotifyかBandcampのリンクと感想を添えてます。

1. arauchi yu > Sisei

ceroのコンポーザーの初ソロ作
エディット感のあるチェンバーポップで、個人的にはceroよりもこっちのほうが断然好み
最近のBlake Mills的なアンビエンスとか、フックはありつつもどこかつかみどころのない感じもあり、ここ1~2年の特定の界隈の潮流に与する音だなと感じた(それでいてオリジナリティもある)
制作の背景とかは↓のインタビューが参考になった
https://mikiki.tokyo.jp/articles/-/29476

2. betcover!! > 時間

ダウナーな雰囲気の中にピンクフロイド的なスケール感やMC5的なアグレッシブさをチラつかせるジャパニーズオルタナロック
オルタナ〜ポストロックのあいだなギターワークはエンジンダウンみたいなエモみもある
ドライブ感あるパートとダウナーなテンションのパートとの躁鬱的なギャップが印象的というか、統一されたムードはありながらもアルバム全体でのダイナミクスが豊かでドラマチックがすごい(語彙の限界)

3. Bicep > Isles

フロポやbonoboなどと比肩する、踊れる電子音楽の最先端のうちの一つなのではと思う
一音一音の説得力が凄いというか、無駄なものを削ぎ落としていった結果として細部に神が宿りまくってるような印象を受ける
↓の記事がよかった
https://mikiki.tokyo.jp/articles/-/27342?page=2
Deluxe版のみ収録の曲もよかったのでぜひDeluxe版で

4. Charlotte Greve > Sediments We Move

合唱隊のコーラスを中心に、ロック、ノイズ、フリージャズ、メタル、アンビエントなどの要素からなるキメラ的な音楽
7部構成でアルバム1枚でひとつの音楽になっている
菅野よう子っぽいと指摘してる人が多いのは納得なのだけど、音楽性は一致しないものの危機とか海洋地形学の物語のあたりのYESと近いイデアに根ざしているような気がする

5. DARKSIDE > Spiral

前作の名盤Psychicから8年ぶりの新譜
基本的な部分は踏襲しつつも、主に金物とかパーカッションの部分から醸されるオリエンタルな雰囲気は新しい要素か
高すぎたかもしれない期待に応える充実の内容だった(何様)
彼らのシグニチャーである匂い立つ怪しげなグルーヴは健在

6. Diego Schissi Quinteto > Te

ピアノ、バンドネオン、コントラバス、ギター、ヴァイオリンの五重奏で打楽器を採用せず音階楽器のスタッカートでリズムを打ち出すのがタンゴのスタイルらしい
トラディショナルな感じというより、前衛的でスリリングな雰囲気
みんなで聴こうプログレッシブタンゴ

7. DJ任意の名称とMC存在しない > THE OUT E.P.

ダウナーでヴェイパーなトラックにポエトリーリーディング的で活力ゼロなフローのラップ
Bandcanpで無料でダウンロードできる
なんかよくわからないけど魔法を感じる
#2はコロナ禍のサマージャム’21といった趣き
以下Bandcampのinfo

2021年の日本。去年から色々あってローだけど、そういう気分も大事だと思う。 
でもやっぱりアッパーなのも楽しいし、人間には両方が必要なんだよね。 
テンション下がることばっかりだけど、日々の楽しいことを大事にして生きて行きたい。 
色々終わったら蟹食べに行こうね。 
それはそうと雀魂で操作をミスって鳴いたときや、みんはやで答えが分かってるのに押すボタンミスった時の辛さがヤバい。 
byMC存在しない 

8. Floatie > Voyage Out

サウンドテクスチャはオーソドックスなガレージバンドなんだけど、変拍子を多用したリズムとソリッドな演奏がとてもよい
面白いことやってるのにスノッブな感じがまったくしない肩の力抜けた雰囲気も◎

9. Grouper > Shade

モノクロームでミニマルなアンビエントフォーク
目を瞑ると弦の振動や左手のポジション移動が目に浮かぶような、生々しい録音のアコースティックギターと儚げなメロディーのボーカルが印象的
白眉は最後のKelso (Blue sky)
孤独を連想させるような雰囲気に、Bon IverのFor Emma, Forever Agoと通ずるものを感じた

10. Hiatus Kaiyote > Mood Variant

これまでのシグネチャー(フックの効いたリズムセクションとハイファイで奇想天外だがどこか耳馴染みのよい感じ)はそのまま、アルトゥールヴェロカイによるホーン&ストリングスアレンジや、アマゾンでのフィールドレコーディングによるトライバルな雰囲気など、いろんな要素が生き生きと共存する様子は圧巻と思った
あらゆるものを飲み込んで進化する奇天烈ソウル
柳樂さんのメンバーへのインタビュー、制作の背景や録音の様子が知れて面白かった
https://rollingstonejapan.com/articles/detail/36246/1/1/1
https://rollingstonejapan.com/articles/detail/36136/1/1/1

11. Iglooghost > Lei Line Eon

こういうオーパーツ的な音楽に弱いというか個人的にツボ
以下Bandcampのinfoより引用

「私はこの1年間、丘の上の発祥の地である「レイミュージック」の失われた伝統を研究してきました。この特別なジャンルには、目に見えないゾーンから奇妙なきしむエンティティを呼び出す機能があります。これらの曲は、「レイディスク」と呼ばれる特別なディスクに転写され、現在、現代のコレクターによって執拗に蓄えられ、取引されています。
レイミュージックの演奏がなぜそのような並外れた効果をもたらすのかについての明確な説明はありません。高くそびえる花崗岩の遺物、浮かぶ小石の円、近くのランドマークと他の世界の現象との整合など、ドーセットに固有のさまざまなプロパティに関連している可能性があると考える人もいます。伝統的に演奏されていた楽器は、地上絵のレイラインを刺激した疑いがあり、不注意に世界の間に小さな裂け目を作った道具として操作されていました。

12. Lionmilk > I Hope You Are Well

ソウル・ジャズ・アンビエント・セラピー
メディテーティブな感じでエレピがひたすらに心地よい
https://meditations.jp/products/lionmilk-i-hope-you-are-well-cs

13. Mattheis & Amandra > Lettre Ouverte

ジャケのアートワークにリンクするような清涼感のあるダブテクノでめちゃくちゃ気持ちいい
ダブテクノ特有の湿っぽいビートと爽やかで透明感のある音像のシンセの組み合わせが◎
フランス語で「公開書簡」なるタイトルで、Mattheisがシンセパート、Amandraがリズムパートの形での共作らしい
最後の曲とか二人のパートが絡みあってく感じがとてもよい

14. Parannoul > To See the Next Part of the Dream

韓国産、映画「リリィシュシュのすべて」の一幕のサンプリングから始まるlo-fi宅録激情系シューゲイザー
8.0つけてたピッチフォークのレビューよりこの記事の方が全然面白いし鑑賞の参考になった
音源もインタビューも、インターネットのいいところが詰まってる感じがして最高だなと思いました

15. Petros Klampanis > Rooftop Stories

コロナ禍にスタジオに篭ってベースとBOSSのルーパーだけで録音されたというダブルベース奏者のソロ作
一貫して静謐な雰囲気な雰囲気の中で繰り広げられるベースソロにいつの間にか惹き込まれている感覚が不思議で何回も聴いちゃう
演奏に伴って発せられるノイズ含めてベースから出る音のテクスチャが非常に豊かで、聴き手がそこに集中できるようミニマルな構成になっているのだろうか
↓の記事がよかった
https://musica-terra.com/2021/03/01/petros-klampanis-rooftop-stories/

16. Pino Palladino・Blake Mills > Notes With Attachments

Blake Millsプロデュース、Sam GendelやChris Dave参加
イマな雰囲気をリードする人たちによる、どこかつかみどころがない感じがクセになるジャズ
Ekuteで顕著なアフロなセクションが◎
岡田拓郎さんのこの記事が参考になった

17. tau contrib > encode

今年一番聴いたかもしれないアルバム
気鋭のレーベルsfericから
アートワークとリンクするような洗練されたサウンドテクスチャのアンビエントで、鳴ってる音全部が鳥肌級に気持ちいい
抑制の効いた雰囲気ながらポストクラブ的な歪んだシンセが独特なヒリヒリ感を醸している

18. ミンモア > 帰郷の日

全体的にフォーク~ソフトサイケな音楽性で、静謐さもありつつユルさもあるような不思議かつマジカルな雰囲気
歌謡曲っぽいメロディー、女性ボーカルのハーモニーとフルートがいいアクセントになって、独特な磁場というか坂本慎太郎のソロに近いようなオーガニックなサイケ感が醸成されているようにも感じる

19. 折坂悠太 > 心理

ライブツアー<<<うつつ>>>の時のレパートリーが多く収録されていて、弾き語りではなくバンド路線が強調されているような内容
平成のときにあったワールドミュージック感と歌謡曲ぽさの融合はそのまま、重奏のバンドとしての円熟味が感じられる演奏がすばらしい
心理ツアーの渋谷公演は今年観た数少ないライブかつライブ収めだったけど、生でデカい音で観る折坂悠太+重奏はほんとにすごくて、マスクの下でニヤニヤしてしまった

20. 君島大空 > 袖の汀

去年の縫層のメタルメタルした感じは正直好みじゃなかったけど、今作はガットギターが中心のフォークな雰囲気の中に午後の反射光EPからあった独特のエモさが冴えていてめちゃめちゃ好き
湿っぽいのに突き抜けるような
あと、ギタリストとしてのプレイヤビリティがえげつない
袖の汀、午後の反射光EP、縫層の順番で好き

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