私自身の経験や失敗から学んだ、作曲家さんと作詞家さんが共同制作をする際、お互いに気を付けるとより良くなること

VComposerを名乗って活動をしている、kurowakuです。
これまで自分一人で完結しない形での作品制作を行い、ボーカルさんや作詞家さん(またその両方を兼任する方)と関わらせて頂いてきました。

創作としては作編曲がメインで、作詞に関してはそれを専門とする方には力は及ばない程度という自己認識です。(現在公開されている作品は、私が作詞も担当しているものが多いですが)

現在は私主体のアルバム制作をリリースに向け進めており、楽曲毎にボーカルさんと作詞家さんのお力をお借りしているところです。

楽曲制作で共同制作を行い動画作品として公開すると仮定した場合、ざっくりと「作曲家さん/編曲家さん」「作詞家さん」「ボーカルさん」「イラストレーターさん/デザイナーさん」「動画制作者さん」と関わる可能性がある訳ですが、今回は「作曲家と作詞家」に絞り、こういう事に気を付けたらより良いやり取りが出来たよ、という私自身の経験や失敗から学んだ事を、私自身まだまだ勉強中の身ではありますが、つらつらと書き綴ってみようかと思います。

私個人の視点や考え方ですし、特にお仕事として創作されている方からすれば当たり前だよ、という内容に終始するかも知れませんが、より良いやり取りや共同制作のご参考になれば幸いです。

前提として

共同制作をする場合、作曲と作詞を同時進行で進めるケースは少ないかと思います。多くの場合はどちらかが先に出来上がっていて、それに対して曲や歌詞を付ける形でしょう。

ですが勘違いをしてはいけないのは、制作順序に関わらずどちらにも優先順位は存在しないということ。正確には、優先順位を付けるよりも対等に擦り合わせを行えた方が、結果としてより高いクオリティを目指せるということです。

先に作品として形にしている側が、一切その形を崩して欲しくないと考える事は心情的によく理解出来ますが、他者の力を借り他の作品と合わせて一つの作品にする上で強い拘りを持ち過ぎる事は、結果として損をする可能性が高いと私は感じています。

ですが、変更を行うことで著しく作品としてのクオリティを下げてしまう(と主観的に感じる)部分も実際ありますので、私は「絶対に譲れない、変更できない部分」を数か所(出来れば1か所)まで絞り込むようにしており、お勧めです。

(作詞と関係無い例ですが、編曲まで済んでいる楽曲のキーをボーカルさんに合わせて変更することは、打ち込みオンリーではなく音声データとして収録しているパートがある場合は特に、著しく音色を損なう為絶対に避けたい部分です)

自分の創作に拘りを持つことはとても大事な事ですが、共同制作においてはある程度譲り合い擦り合わせていくことを重視するのがベストだと思います。

作曲側

・(曲先の場合)出せるものは全て共有する

楽曲の世界観や表現したい事などは勿論ですが、それらが明確に定まっておらず作詞家さんの手に委ねたい場合においても、音源のみではなく「メロディの楽譜」や「MIDIデータ」など作詞を行う際に役立つものは積極的に共有した方が良いと思います。

最近気付いたことですが、MIDIデータについてはボーカロイド等の歌声合成音源を用いて譜割を伝えて下さる作詞家さんもいらっしゃるので、MIDIにテンポと拍子情報を含めるか、テキストでお伝えしておいた方が良いです。

(作詞先の場合)曲の構成や尺が決まっている場合、先に伝える

歌詞に合わせて曲の構成や尺も合わせます!という場合は良いのですが、大まかに曲の構成や尺が決まっている(希望がある)場合は、先に伝えておかないと後から歌詞を大幅変更しなくてはならなくなります。

歌詞も含めて作曲が完了した際、仮歌を含めた音源を共有する

作曲、作詞どちらが先の場合においても、必要だと思います。必要であれば制作途中でも都度音源の共有をすると安心です。ボーカロイド等の歌声合成音源を用いたもので問題ないかと思います。

曲先の場合は作詞家さんの意図した譜割りになっているかの確認、詞先の場合は作詞家さんのイメージする発音、譜割りから大きくズレ過ぎていないかの確認の意味があります。

また、作詞家さんの意図やイメージ通りだったとしても、実際に音源にして聴いてみたらイメージと違った、という事もあります。

勝手な歌詞変更を行わない

当たり前の事ですが、軽微な変更であっても意図した表現である可能性もあるので、都度確認を取るようにすると安心です。

例:「てにをは」等の助詞の変更・追加・削除、「してる⇔している」等

(曲先の場合)曲側の変更を躊躇わない

変更点が多く殆ど別の曲になってしまう場合は話が変わってきますが、基本的に曲側の変更を求められる場面では、作曲家としての腕を試されていると考えた方がうまくいくと思います。

歌詞に引っ張られての曲の変更・修正により、楽曲のクオリティが上がっていくことも多々あるように感じます。

(例えば、同じAメロでも2回目は歌詞に引っ張られて部分的にメロディが大きく変わる等、聴き手にとっていい意味での裏切り、驚きを演出できたりする)

作詞側

(作詞先の場合)詞の内容(構成)がそのまま曲の内容(構成)になる事を意識する

AメロBメロサビ等、詞の構成がそのまま曲になります。無いものは足せませんし、ある物を削ることも出来ません。

例えば個性的な世界観を持つ楽曲にしたい場合は、定番の「ABサビABサビCサビ」みたいな構成ではなく、イレギュラーな構成の方が、作曲者側も対応がしやすいと思います。

また定番の構成であっても、どの部分がどのパートにあたるのかはしっかり明示した方が良いです。(メロディに対して特殊な譜割が多い場合、どこがどのパートに対応してるか分からなくなる事もあります)

例:【Aメロ】【bridge】

また、歌詞全体の文字数もイメージする曲調に合わせて調整する必要があります。

例えばゆったりとしたバラード調の曲をイメージしている場合、全体の文字数が多すぎると、作曲者側は丁度良い尺に収める為にテンポを調整したりメロディのリズムを詰めたり間奏を削ったりするかと思いますが、そこでイメージのすれ違いが起きることもあります。

(作詞先の場合)同じパートは原則発音数を合わせる

私が作詞をした「アイオライト」を例に挙げます(2Aは個人的なお気に入りパートです。いいでしょ)

[1A]
覚めた夢に魅入られて            335
今生きる日々の境界は薄れる        23354
吐いた鼓動 息のリズム            3333
ここに在ること 意識だけ感じた    3454

[2A]
風に揺れる戸惑いに                335
胸の奥響く 「どうして」と呟く    32354
問いの答え見付けられず            336
いのちあるだけ 果てもなく紡いで    3454

1番と2番のAメロです。数字は単語毎の区切り・音数メモで、区切り毎の音数は違いますが行毎の合計値は同じなっています。

基本的に発音数が合っていないと同一のメロディにする事が出来ない為、同じパートとして扱う事が難しくなります。

補足ですが、上の例ですと「境界⇒"きょお"かい⇒"きょ"かい どうして⇒"どお"して⇒"ど"して」と2つの発音を1音に纏めたりも出来、これにより同じパートであってもメロディを変えないまま発音数のみを変える事は可能です。

(曲先の場合)メロディのリズムに注目する

メロディと言うと音程に意識を囚われがちですが、リズムも非常に重要な要素です。個人的な重要度で言うと、音程5リズム5、つまり同程度の認識だったりします。

部分的に言葉数を入れる為にリズムを詰める(音符を分割する)事はアリですし、作曲者側が歩み寄る事も大事な事だと思います。

が、あまりにもそれをする箇所が多かったり、メロディのリズムそのものを変更してしまう(音数的に3連符になったり、リズムのキメからずれていたり)ような事があると、その曲の歌詞である意味自体が揺らいでしまうので、程々に抑えた方が良いかと思います。

「音数は合わないけど、どうしてもここはこの言葉を使いたい」という場合は作曲者さんに相談してみると、(音程まで含めた)メロディ変更で対応しましょう!となる事もあるので、悩んだら相談がお勧めです。

また、音数に対して発音数を詰める方は多いのですが、その逆をする方はあまりいらっしゃらない印象です。

一つの発音に対し複数の音符を用いて伸ばすような表現は、一見歌詞のボリュームが減る為作詞家さんからするとデメリットが大きいように感じられるかも知れませんが、歌詞そのものの印象を大きく変える、メロディをそのままに緩急を付けたりより印象付ける効果もありますので(多用すると逆効果ですが)、取り入れてみると面白いかも知れません。

譜割を伝える為の手段を考える

どうしても文字だけの情報では、複数の発音を1音に纏めたり、1つの発音を複数の音符に跨らせたり、という部分を伝える事は難しいです。その為、作曲者側もどう歌詞をメロディに当てはめていくかを考える必要がありますし、その結果が作詞家さんのイメージするものと異なってしまう場合もあります。

過去分かり易く伝えて頂いた例ですと、「ボーカロイド等の歌声合成音源を用いる」「楽譜に書き込む」というものがあり、前者は作詞を専門とする方にはハードルが高いかと思いますので、後者について少し掘り下げてみようと思います。

画像1

「どうしていつも嘘ばっかり」という歌詞があったとして、それを楽譜に書き込んでみたのが上の画像です。

出だしの「ど(う)」は、発音としては「ど」だけでですが、「う」を省略している意味で括弧で囲い、1つの音符に2音入るので下線を引いています。(「ば(っ)も同様)

画像2

こちらは、3つの音符に対して「あ」の1音を伸ばす表現です。

上2つは例であり、書き込み方法に決まりはないので、一番手間にならない表現方法で大丈夫かと思います。

いち作曲者としては、こういった手段で伝えて下さるだけで歌詞そのものの把握もスムーズにできますし、イメージや認識のズレが起きる可能性も大幅に下がるので感謝しかありませんので、ご負担でなければ是非やって頂きたいです。

さいごに

私自身まだまだ試行錯誤をしている段階であり、先に述べたようにまだまだ勉強中の身ですので、書き綴った内容についてより良い方法、考え方、スタンスがあるかも知れません。相手がいるものなので、その相手によっても正解は変わってくるものでもあります。

この記事で何か一つでも気付きがあったり、再認識するような部分がありましたら幸いです。

今後とも精進してまいります。

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