ビブリオバトル感想文

12月2日学歴の暴力ワンマンライブで行われたビブリオバトルで紹介された三冊を読み終わりましたので少々遅くなりましたが、感想の方を綴らせていただきました。
単調な感想にならないように3名それぞれテイストを変えて書いてみましたが、問題作を作ってしまった気がしています。何卒ご了承ください。
いつもながら誤用等があればご指摘いただければ幸いです

1.あろえあろ / 永遠についての証明 


 本書は三冊の中で一番長編(280p程)の文庫本であり、今回読み終わるまでに2時間半ほどの時間を有したが、とても読みやすい文章構成をされており、読書習慣のない自分でも最後まで意欲的に読破することが出来た。
表紙に掲載されていた数学知識必要度☆1という宣伝文は間違っておらず、作中で用いられる理論や証明についての存否は分からないが、文系分野の人間からすると仮に実在するものでも、SFの世界だと割り切って読むことで気軽に読むことできると思う。

 本編は、圧倒的数学的才能(数覚)を持った瞭司と圧倒的数覚に劣等感を抱く熊沢の2名の主人公が主軸に話が展開されていくが、物語序盤では瞭司の圧倒的に数覚によって周りの人間を巻き込み充実した学生生活を送っていくが、話が進んでいくにつれ皆それぞれの道を歩んでいく中変化を拒む瞭司は徐々に孤立してしまう。
そんな孤独の道を歩むきっかけとなる場面があり、それは僕の好きな場面でもあるので紹介する。
「俺を数学者として死なせてくれ」
これは瞭司が大学に入るきっかけとなった教授である小沼の言葉で、これまでは師弟の関係であった小沼が瞭司の才能に嫉妬し感化され、一数学者として人生を見つめ直し大学を離れることを伝える場面だ。
後の熊沢もそうだが、瞭司の圧倒的数覚を知ってしまったが故に数学者として先に進む決断をして瞭司の元から去ってしまい、その後もすれ違いを起こし悲劇的な最期を迎えてしまう。
 瞭司の視点だけで物事を見ると人間関係に恵まれず、悲しい最期を迎えたように映るが、熊沢の視点から見ると数学者として当然の行いをした上で瞭司を諭すような行いもしており、結果として悲劇を招いたが両者の言い分はしっかりしており、群像的な表現が上手い作品と思わされた。

 本書は、数学という題材を抜きでも才能を持った人間特有の悩みや葛藤を描いた作品としての解像度の高さが素晴らしく凡人でも共感できた。
我々が思い描くステレオタイプの天才というと一人我が道を往く天才を想像するが、実際は瞭司のような悩みを抱えている天才の方が現実的であり、そのリアリティが本書の魅力であり心揺さぶられる要素でもある。
 これは学歴の暴力にも通じる所であり、低学歴な自分にとって圧倒的高学歴の彼女たちは一見するとステレオタイプな天才に見えてしまうが、高学歴特有の悩みや葛藤があるとあろ氏は度々語っている。完全に理解し共感できるとは思っていないが、SNSや物販等を通じて交流するうちにそういった一面は垣間見える瞬間があり、そんな彼女たちに心揺さぶられている為、彼女たちを本書の登場人物に重ねてしまい余計に本書を評価している可能性はある。
 最後に振り返りにはなるが、終始きれいな文章で書かれているので読書習慣のない低学歴でも大変読みやすい一冊であったと思うので、がくぼのオタク全員にお薦めしておく。


2.あずきあず / 捨てないパン屋の挑戦 しあわせのレシピ


「理想と現実の乖離と実現」
学歴の暴力大学 1年 くろうし
 理想や夢を持つことは人生においていい刺激となるだろう、だが多くの大人は夢を諦め、理想とは乖離した生活を送っているものだ。だからこそマスメディアに取り上げられる夢を叶えた者、自分にとって理想の生活を送っているもの、そういった人間に尊敬や時に嫉妬の念を抱くものだ。
 本書で紹介されている田村氏は現在の「捨てないパン屋」を作るまでに相当な回り道をして本書の最後にやっと答えにたどり着いたのだ。最初は自然体験学校で働き、果てはモンゴルまで赴き、ヒツジの解体を通して環境問題についての着想得るなどの経験を経て、パン屋となり理想との乖離を見つけ行動を起こした。氏の抱えている問題は決して簡単なものでないにも関わらず、都度行動を起こし、現在持っているものを手放してでも理想を現実のものにしようと努力を重ねた。これは多くの会社員が悩んでいる「転職」や「独立」といった行為にも通ずるものがあると思う。現在の立場や待遇を手放せず挑戦できない、残念ながら私もその一人だ。
 氏の2度目のフランス修行の際、既に両親からパン屋を受け継ぎ経営者としての立場があったが、妻からの後押しもあり顧客や卸先そして従業員ともわかれを告げ夫婦でフランスへと渡りパン屋の働き方を学び、帰国後、遂に理想としていた捨てないパン屋を実現し、理想的な生活までも現実のものとして手にしている。
 私は年齢の上では若者の部類に入っているが、既に夢を追うことは諦めている。理想の自分や環境を作る為の労力に怖気づいてしまった。
 だが、田村氏の途方もない道のりに比べれば私の道のりなんて大したものではないはずだ。氏のようないつまでも理想を追いかけられる人間でありたいと思った。

3.りりりかり / 天国旅行 遺言


「やっぱりあのとき死んでおけばよかったんですよ」
これは本作に幾度と登場し重要な役割を持つ言葉だ、本書の共通テーマは「心中」であり、一見するとネガティブなイメージを持つこの言葉だが本作を読んだ後には違った感想持つだろう。

 この本を紹介したりりり氏は人間は嫌いな相手には多様な表現での罵り虐げるが好きな相手に対する表現の少なさを憂いていた、そんな中紹介された本作は僅か45pという短い文章で熟年夫婦の半生を振り返る物語だ。
 物語は男がのちの妻となる女性に一目惚れし、そこから自身の最期に至るまで妻への想いを思い出と共に振り返りながら進行していく。
 物語序盤男は彼女と出会い、少しでも近づくためストーカー紛いの行為へと奔りその最中、彼女にまつわるすべてのものに嫉妬した。文字通りすべて、彼女ののどに刺さる小骨にすら嫉妬し小骨の気分を妄想した。紆余曲折を経て交際へ発展した二人、両親からは強く反対され、半ば必然的に駆け落ちへと至る。二人で過ごす初めての夜、彼女は青酸カリを持ち出しいつでも終わらせることが出来ることを示唆したが、肉欲に負け翌朝来た道を戻ってしまう。ここが物語のターニングポイントとなっている。
 ここまで物語の序盤といえる場面であるが、実は後にも好意的感情を言葉として相手に伝える場面はほどんど存在しない、言葉で伝えることが無い分、お互いを信頼し想っている様子を表す描写で補完しており、都度登場する「あのとき死んでおけばよかった」という言葉も彼女の中では駆け落ちした日の美しい恋を心中によって保管したかったというまわりくどい表現の一つだととらえることが出来る。この直接的な表現を避けたまわりくどい表現こそが、りりり氏が本作を紹介した理由ではないかと感じた。
 好きを伝える言葉が少ないならそれ以外の手段も使って伝えれば良い。そんなことを気づかさせてくれる作品だったと思う。 


あとがき

自分なりの解釈で分かった気になって勢いに任せて感想を書きました
意図してない要素だったり、もっと汲み取ってほしい要素あると思いますがこの辺りが低学歴の限界です。不快な思いをさせてしまったらすみません。

最後まで読んでいただきありがとうございました!


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