モチーフについてのメモ


車に乗って走っていると、自分が野生の獣になったような気分になる。
命の危険にさらされたときの緊張感。
脳の使ってない部分がはたらくのを感じる。
いつも見えているものは見えなくなるけど、その代わりに見えてくるものがある。
意味や文脈が消え、光や色の世界になる。


ちょうちょや蛾
ちょうちょがひらひら飛ぶと光が透けたり反射してチラチラ光る。
ちょうちょのまわりだけぼやっと光っているようにも見える。
作家の北杜夫はある蛾について「その色彩はたしかに日の光によって生まれたものではない。月や星の光、いや、それはやはり幽界の水のいろなのであろうか。」と書いている。


飛行機
自宅の近くに航空自衛隊の基地があって、とても低く飛ぶ飛行機を頻繁に見る。
少し遠くに空港もあるから旅客機もよく見る。
こちらは指先に留まるほど小さく、ゆっくり飛んでいる。
家にいると1日中機体が雲を切るごうごうという音が聞こえる。
この音を聞いているときに想像する飛行機は中途半端な大きさでのろのろと重苦しい空を進んでいる。


太陽、ソーラーパネル
ドライブをしているとやたら目につくソーラーパネル。
空き地や屋根の上で太陽の方を向いてじっとしている。
雨の日も、曇りの日も空の色を微妙に映しながら佇んでいる。
その姿は厳粛で敬虔な太陽の信者のよう。
人間よりずっと昔からこの世界にあったような気がしてくる。

コウモリ
夕方になるとバタバタと縦横無尽に空を飛びはじめる。
無軌道に見えるけど私たちとは全く異なる感覚を持っているから、きっと合理的な動きに違いない。
洞窟性という生態を持ち、独自の進化を遂げた彼らは視覚を退化させ、音波を感じとることに成功した。
多数派の色覚とは異なる色覚を持つ私と重ねて考えざるを得ない。
彼らは偏見も差別もない世界で自由に飛び回る。

ヤシ
薄曇りの中で異様に高く育ったヤシが立ち並ぶ故郷の風景。
夜の姿は真っ黒で、海風に吹かれてわさわさと怪しくゆれる。
周りが静かなら葉がこすれる音も聞こえてくる。
人よりも何倍も高い視線から水平線の向こうを眺めながら遠くの故郷を思っているかのよう。
そこに植えた人の思惑なんてなんの関係もなく、ただ空に向かって成長を続ける。

SUNの看板
熱海に実在するホテルの看板。
ホテルの名前ではなくて、サンビーチという場所の名前からとっていると思う。
ここを通ったときに晴れていたことはない。
いつも曇りか夜だった。
「SUN」と堂々と書かれた看板には妙に説得されてしまうパワーがある。
ここがいつも晴れているかのような。
色弱は自分には緑色に見えていてもラベルにオレンジと書いてあればオレンジと思い込んでしまうことがある。
「自分は間違っている」という刷り込みがあるため、こんなことが起こる。
先入観によって思い出や記憶のイメージが形成されることもある。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?