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黒ネコのクロッキー⑦少食の女神2

(腸のエナジー)なるほど。確かに、最近姿の見えない同僚がいる。
 あいつは掃除をしたがっていたのだ。この方の体の中は真っ黒な汚れの塊があちらこちらに置いたままになっていて、早くそれを片付けたい、暇が出来ればなあと常々言っていたのだ。
 (少食の女神)ええ。そのようにご立派なエナジーの方々がほんの少しでもいらしたおかげで、この人間はまだ死んではいないのです。
 幸いしばらくの間眠ってくれるでしょう。
 私があなた方をお呼びしたのはこういうわけなのです。まずはご自分の持ち場に戻り、どうぞ他のエナジーの方々に今の話をして差し上げてください。そして、手の空いている方は、ご自分の考えでかまいません、ご自分の考えで新しい仕事を探して頂きたいのです。お掃除でも、傷んでいるところの修復でもよいのです。荷物を運ぶ方も必要です。
 どなたかと協力しても、おひとりでも、出来る方は何でもご自分の考えにしたがっておこなってください。
 さあ、それでもまだエナジーが余るようでしたら、特別にお願いしたい仕事がございます。
 この方の体からわずかでも離れることになりますから、よく考えてご判断くださいましね。勇気を持って、私を信じて、この仕事をしてくださるエナジーはいらっしゃいますか。

           ✳︎

 (クロッキー)おじいさん、あの金色の髪の方は誰ですか?ずいぶん早口だなあ。何を話しているのかわかりません。
 (博士)あれは少食の女神だよ。人間が、エナジーの無駄遣いをするのが我慢ならないのだ。
 (クロッキー)エナジーの無駄遣い?
 (博士)そうだ。こちらの世にいるものは、もう食べ物を必要としない。だが、向こうの世界のものは体を動かすためのエナジーが余計にかかるのだ。
 いや、余計にかかると思い込んでいる。そして、たいていの人間はものを食べ過ぎてしまう。
 女神も言っていたように食べ過ぎることはエナジーの無駄遣いだ。無駄に使っているといざという時に困るのだよ。自分を助けることが出来なくなる。
 (クロッキー)ええ、とてもよくわかります。だけど人間は、どこに行っても食べることに必死ですよ。昔というところはたいていそうです。
 (博士)私にも覚えがある。食べ物を奪い、殺し合いをするのだから本当に恐ろしいことだ。
 (クロッキー)少食の女神は人間を助けてくれるのですか?エナジーを大切に使えるように導いてくれるのでしょう?そうでしょう?
 (博士)いいや、少食の女神はそれぞれのエナジーに問うことしか出来ない。どうするかはエナジーたちが決めることなのだ。人間を導くのは女神ではない。
 (クロッキー)それでは誰なのですか?心とか魂と呼ばれるものですか?
 (博士)お前は、本当は何でもわかっているのだよ。私よりもずっと多くのことを経験しているのに。

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