見出し画像

黄水晶の虫

いま私の目の前に
楕円形の虫がふわふわと浮かんでいる。

どろりとした蜜は
まるで半透明な黄水晶を溶かした粘性溶液。
キラキラとした箇所は水入り水晶のように煌めき
中心部の心臓は琥珀のようなエネルギーがあった。

楕円形を成すが空中で形を変えながら
弾力を持ち、人の頭上付近に住むことが多い。

それは初めて見たが、どうやら虫の一種らしい。
虫と言ってもこの世の虫とは違う。
私はただ「漂い彷徨うもの」を虫と呼んでいるだけに過ぎない。

ゆえにやつらが何であるかは知らない。
そこにあるもの。

先生に聞いてみるとその「黄水晶虫」は人間を食べているらしい。
頭上を海月のように揺蕩いながら。

捕食されている側は実感がないようだが、気分は悪いらしい。

捕食者は光り輝きながら何を食べているのだろう。
むろん物理的なものではない。

しかし時折、カチカチという時計のような音を響かせている。
チクチク、カタカタ、カチカチ…

この部屋には時計はない。
正しく言えば、時計はあるが電池が入っていない。

神々しさを孕んだ黄金の光は、まるで後光のように輝くのだ。
もしかするとこれは、後光なのかもしれない。

先生によるとこの虫は、悪いものを食べるらしい。
思考や毒素や嘘など見えないものを食べ続ける。

食べ続けた先に、隠されたものは暴かれる。
嘘も思考も大衆に晒されるのだ。

この虫は私に悪さをしないようだが
この虫がいるところには近づかぬべきだ。
悪い嘘も思考も、不健康な毒素を持つ人も苦手である。

サポートして頂けたら、魔術研究の支援に使わせて頂きます。皆様により良い情報とデータを開示することで生き生きとした魔女活・魔術ライフになるよう願っています。