何度でも同じことを言う

労働から解放されたい。
一人親方の取り仕切る仕事の進め方や、
毎秒受話器を片手に仕事をしている人間。
前者の場合、欠勤したらその穴は埋められない。
後者は無神経で図太くないと話しかけられない。
全体的に精神的なゆとりがない。
自分はというと、仕事は存在するが進める上で、雲の上の存在に確認を求めなければならないことや、城主も一緒に進めたい仕事もあるので城主に合わせていたら時間が掛かりすぎてしまう。城主に確認を取ろうにも、確認している最中に呼び出されてどこかへ消えてしまう。
だからせっかく作ったチラシも、動画も、結局どうなるのか分からずじまい。
動画取扱説明書は、分割した方が良いのか、そのまま活用されるのか、真相は城主の中にしかない。

いつかこんなことがあった。
家族の付き添いで、有給を取る。
親方が平日に有給を取るのはとても珍しい。
10年ほど働いてきて、こんなことはなかった(らしい)。
親方ナイズされた席に座っても、なにをできるわけでもなく、電話対応だけして凌いだ。
見積もりの取り方、配送の方法、メールの書き方。
基本の対応を知らないのに、インターネットリテラシーのない客への対応方法は我々には無理だ。

いつかこんなことがあった。
関所に聞きたいことがあった。
でものその関所は配送の要を担っているのでいつでも電話が離せない。
毎回終業後しばらくして話しかけるようにしている。
しかし、捕まらない日はどのタイミングでも捕まらない。
終業後に営業と談笑していて、話しかけられなかった。

いつかこんなことがあった。
城主は急いでいた。
今日は研修会なのに、部長に頼まれた資料も、課長1に頼まれた資料も、課長2に頼まれた明細も、取引先に提出しなければならないファイルも準備できていない日があった。
「どうしてこんなことに」
城主は慌てるというより、呆然としていた。
寝坊に気づいた瞬間、フリーズしたようだった。
私にはその理由がわかる。
この情報は聞いてなかった、こんな話が営業から上がっているといった情報を部署の中の話にとどめず、会社全体で動いていけるように彼女が潤滑剤のような立ち回りをしていたからだ。さまざまな部署の人と関わり合いを持とうと働きかけた結果、タスク過多になってしまった。
結局研修会を欠席して彼女は課長1の隣で怒涛の資料制作を進めることになった。
zoom初心者の黒髪を残して。

私は城主のようにはなれない。
図太く空気を読まずに、鮮やかに承認をかっさらう彼女の姿は、あまりにも眩しい。彼女も手探りでお伺いを立てている局面があるようだが、それでも突き進んでいくのは、まるで「道程」のようだ。自分の前には道はない。自分の後ろに道ができる、のような。
城主は商材のことにも詳しく、だからこそ営業からの信頼も厚い。黒髪は商材のことも好きではないし、詳しくなりたいとは思ったことがない。黒髪にあるのは、痛いのはいや、恥をかくのも嫌、困るのも嫌、省エネで過ごしたい、それだけ。知識欲でも勢いは城主に負けている。
入社半年だからで説明はつけられない。ただやる気がないだけの置き物。

いまのストレスは、城主や関所に話を通したくても捕まえられない、結論が出ないままどこかへ行ってしまう。それに関連して、自分の裁量で仕事ができない、存在しても自分の裁量でどうにもならないことが多すぎる。
城主がタスク過多で大変そうにしているのに、自分はやることが(でき)ないギャップも辛さを助長している。
唯一のメリットは責任が存在しないことである。嘆きつつも、責任のないときは楽なので、それは謳歌しておこうと思う。

仕事が好きなわけでもないけれど、困りたくない。困らせたくない。恥をかくのは嫌だから、それなりに頑張る。
ネゴシエーション力がないことが判明した、というところでおしまい。
黒髪は省エネ人間として、やらなくてもいいことはやらない、やらなければならないことは手短に、責任をのらりくらりをかわしながら生きていく方法を模索することにする。

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