5.淡々とした文章を変える方法

よく「文体が淡々としている」というお悩みを聞くので、今回は文体についてです。

結論から言えば「最低限の情報しか無いから」と言うのが理由になります。
これの解決方法を書いていきますね。


【まず最初に】

文章は無駄を削ぎ落としてスマートに、というお話をよく聞きます。
これはweb小説においては間違いではなく、web小説読者は簡潔にまとめられた文章を好む方が多いです。
しかし「最低限の情報しか無い文章」と「無駄の無い文章」は別物なのです。


【比較してみよう】

例文として以下の要素を書き出します。
・男性は死ぬ寸前。
・笑っている。
・「君と出会えて良かった」と言う。
最低限の情報しか無い文章をA、
無駄の無い文章をBとします。


・Aの例
彼は今にも死にそうだった。
「君と出会えて良かった」
笑いながらそう言った。


・Bの例
「……君と、出会えて良かった」
彼は最期に柔らかく微笑んだ。


Aは事実のみを書いてありますね。
対してBは「最期」「三点リーダと読点」「柔らかく」を使っています。
これによって、

・今に至るまでに色々あった
・男性は過去を思い出しながら言った
・言葉を発する男性の性格

を言外に現しています。
Aが「レポート」であるのに対して、Bは「描写」なんですね。

これが「淡々とした文章」の正体です。


【どうしたらいいのか】

違いが分かった所で、次はどう書いたらレポートから描写になるかです。
ここで必要なのは「単語のイメージを考えること」になってきます。

以前の記事にも書きましたが、全ての言葉には意味の他に「印象」があります。
例えば1月から12月までの間を「1年」と言うか「春夏秋冬」と言うか、それだけでも受けるイメージは異なりますよね。
この二つの単語は、意味は同じでも印象が違うのが分かるかと思います。

プロの方がよく言っているのですが「長文を書くより短文の方が難しい」という格言があります。
これは少ない単語の組み合わせで正しくイメージを伝える必要があるからですね。
無駄の無い描写はプロでも難しいのです。


【描写の表現力を身に付ける練習方法】

名作と呼ばれる作品読みましょう。
そして一文一文に対して「何故この言葉選んだのか」を考えてみるのです。

走れメロスの冒頭には「メロスは激怒した」とあります。
何故「激怒」なのか。何故この文を初めに持ってきたのか。何故過去形なのか。何故装飾語を使わなかったのか。
考えれば考えるほど、様々な「何故」が出てきます。
その「何故」に自分なりの答えを見付けていく事で描写の表現力が身についていくのです。


【さいごに】

ここまで書いておいてアレなのですが、表現方法は人によって異なります。
私の場合は○○のように、と比喩表現を好んで使いますが、比喩表現を一切使わずとも小説を書くことは可能です。
結局の所、小説に正解はありません。
淡々とした文章にもメリットとデメリットがあり、必ずしも悪い書き方では無いのです。
それを知った上でどのような文体を選ぶのか。
それが大事なのだと思います。


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