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佐渡S

子供の頃は嫌いな食べ物だったけど、大人になったら食べれるようになった、という経験は1つや2つあると思う。

僕にとってコーヒーや椎茸がそれだった。
子供の僕にはコーヒーは苦かったし、椎茸は単純に味がまずかった。
だが大人になって改めて食べてみると、椎茸は当時ほど口に合わないというわけではないし、コーヒーに関しては毎日飲むぐらい好きになった。
大人になるにつれて舌の感覚も変わっていくのだろうか。

これと似たようなことがエピソードや思い出でも起こると思う。

例えば子供の頃の思い出話で、そのエピソードの当時抱いていた感想があるとする。
嬉しかった、とか、悔しかった、とか。
でもそのエピソードを大人になって改めて振り返ってみると、抱く感想が全く違う、ということが起こる気がしている。

小、中学校の友達で、加藤くんという子がいる。
加藤くんは小4ぐらいのときに転校してきて、当時の僕の小学校では珍しい母子家庭だった。
転校生で母子家庭、しかも加藤くんは一人っ子だったということもあり(当時の僕らの小学校では一人っ子も珍しかった)、子供だった僕でも普通の家庭とは違うということを察していた。 
そんな加藤くんとは家も近くて親同士が仲良かったということもあり、僕たちもすぐ仲良くなれた。仲良くなってからはほぼ毎日遊んでいた。2人で遊んだり複数で遊んだり、小学校を卒業して中学生になっても、とにかくずっと一緒にいた。人生を振り返っても、あんなに一緒の時間を過ごしたのは家族と相方の好井ぐらいじゃないか、そう思うぐらい僕たちは仲の良い友達になった。

僕たちが遊ぶ場所はだいたい加藤くんの家だった。
決まって何かをやるということはなく、ゲームをしたりテレビを見たり録画していたHEY!HEY!HEY! やめちゃイケを見たり、遊ぶというよりはとにかくダラダラしていた。
内容はないし、これといっておもしろいエピソードが生まれることはなかったけれど、僕はその時間がすごく楽しかった。

小6か中1のときだった思う。
僕たちはいつものように加藤くんの家でテレビを見ていた。
ああでもないこうでもないと世間話をしているうちに、「初めてのエッチは誰としたい?」という話題になった。
年齢的にも思春期で、当然お互い童貞だったということで性への興味が湧き出している時期だった。
僕は2択で悩んだ。
1人は当時大好きだった浜崎あゆみさん。僕が人生で好きになった芸能人第一号で、新曲が出れば必ずTSUTAYAに買いに行っていたし、カレンダーも買っていたし、雑誌の切り抜きを集めたりもしていた。それぐらいファンだった。
そしてもう1人がクラスの好きな女の子だった。
どっちを言おうかとても悩んだ。 
単純に浜崎あゆみさんと好きな女の子を女性として比べるということで迷ったし、もう一つは、ここでその女の子の名前を言ってしまうと、好きな女の子が加藤くんにバレてしまう、という羞恥心も迷う理由だった。
僕が浜崎あゆみさんのファンだということを加藤くんは知っていたけれど、僕がその子のことを好きだなんて加藤くんは知らない。
そんな羞恥心を超えてまで正直にを言うべきことなのだろうか。
「どうしよう、、」
悩みに悩んだ挙げ句、「俺は浜崎あゆみやなあ。」と好きな子がバレたくないという安全牌を選んでしまった。
そんな僕の葛藤を知る由もない加藤くんは「お前好きやもんなあ」と楽しそうだった。
「お前は?」と僕は聞いた。
「うーん、、俺はおかんやなあ。」
「、、、」
何を言っているのか理解できなかった。
そのときの加藤くんの態度は「俺は何も不思議なことは言っていない。」ととても凛としていた。顔を見ても真っすぐ僕を見ていたし、到底嘘を言っているようには見えなかった。
僕は好きな芸能人とクラスの好きな女の子で悩んでいた。おかんなんて、存在も言葉も想像すらしていなかった。
「おかん?」
「うん。」
聞き返しても何も否定しなかった。
僕はどうにか理解しようと頑張った。
「おかんって俺のおかんのこと?」
「違う。俺のおかん。」
僕のおかんではなく、はっきり自分のおかんだと言った。
もうこれ以上質問しても何も変わらないと思い、「そうなんやあ。」と諦めた。
そのあとお互いしばらくの沈黙があって、違う話題に切り替わっていった。
僕は内心「気持ち悪っ!」と思った。当時マザコンという言葉が流行り、12〜13歳だった僕も「こいつマザコンやん!」と覚えたての言葉を使って罵った。
そんなことは当然加藤くんには言えなかったが、心の中は、人に対して直接言えないようなひどい言葉で一杯になった。

つづく

明日の勝負レース

新潟11R 佐渡S (芝1800メートル)

僕の本命は7枠14番エクセランフィーユ

前走の春興Sは6着と惨敗しましたが、勝ち馬と0.1差とそれほど負けていません。
この馬はペースが流れると追走に苦労するみたいで、負けているレースはすべてペースがそれなりに流れています。
今回はコーナーが大きく直線の長い外回りコースですし、先行馬もそれほどいないのでハイペースにはならないはず。
「ゆったり追走して直線勝負」というこの馬にとって理想的な展開になるのを期待します!

買い目は14番に単勝1000円、複勝4000円で勝負!







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