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博士課程を修了した上で、研究職以外の業界で就職するという選択肢

 こんにちは、黒都茶々と申します。
 私は現在は定職(not研究職)についておりますが、かつて大学院の博士課程というものに在籍しておりました。

 今回は、私の現在のお仕事(非研究職、公務員)と、もう少し視野を広げて、博士人材が研究以外の職に就職することについて、私の個人的な考えをを書いておこうかなと思います。

私の現在のお仕事について

 私は現在、公務員として日々働いています。理系の公務員もいろいろありますが、私の仕事は完全な行政職ですので、理系の知識を持ってはいるものの日々の仕事では活用されません。ましてや、実験をしたり研究をしたり調査をしたり、ということは全く行っておりません。

 そんな職場で働いている私ですので、日々の仕事において、博士課程であることで何か変わったことはあるか、と聞かれたら、「いいえ」と胸を張って答えます。「博士だから」という理由で回ってくる仕事はありませんし、博士だから給料高いとか、博士しか就けないポストがあるとか、昇進早いとか、そんなことは全くありません。むしろ、博士まで進学してからの就職なので、学部卒業直後に就職した人と比べると、その年齢における給料は少なくなります。そして、5歳年下の人たちと新規採用1年目の研修を受けたりするので、若干気恥ずかしい(テンションついていけない)ことなどはありました。ま、些細なことですけどね。

 そんな、博士であることが全く配慮されない職場なので、徳することは何もないです。はい。いきなり、今の職場で博士である意味は全くないという結論に達してしまいましたが、残念ながらそうです。

 ただ、逆に言えば、別に損することもないです。変に期待もされないですし、あいつあんなののくせに博士持ちだぜ、みたいなことを言われることもありません。博士だから面倒な仕事やれよ、と言われることもないです。

 これは、きちんと博士号を取得して卒業して、博士であることを誇りに仕事をしたい人にとってはあまりうれしくないことかもしれませんが、私にとってはとてもありがたいことでした。というのも、私は博士後期課程に3年間在籍していたくせに退学し、学位を持っていない2年間があったからです。博士号がない期間も、「もうすぐ取得できる予定なんですけどね」と後ろめたく言い訳する必要が全くなかったのはありがたいことでした。

博士の一般企業への就職

 私の博士課程時代の友人はだいたいアカデミアの世界に残っているので、この話は伝え聞いた情報(セミナーなどで)なのですが、博士号を取って一般企業に就職する道も、昔に比べれば一般的になってきたようです。

 うちの大学には博士課程向けの就職相談室があり、卒業後にそこで開催されたセミナーで講師として登壇させていただいたことがあるのですが、私以外の方々は一般企業に勤めている人も多かったです。(といっても、その就職相談室はアカデミア以外の就職をサポートするところなので、そういう進路の人たちを講師に選んでいたというのもあります。)

 そのセミナーで講師として喋っていた他の人たちの意見を総合すると、博士としての経験は、知識面というよりは仕事の進め方のコントロールやマネジメントの面で生きている、ということみたいです。新しいことを学ぶやりかたとか、ちょっと分野の違う人とのコミュニケーションとか、そういう面で博士課程の経験が生きているとのことでした。

 もちろん、ドンピシャで研究内容が仕事内容に直結しているという人もいましたが、そんなこと考えながらラボ選んだりするのもどうなんだろう、と個人的には思っています。あの会社であの研究開発をしたいから、という理由でラボを選ぶなら、その会社に入って大学院に派遣された方が、金銭的にも楽だと思いますし。これは個人的意見ですけど、大学院生は、やりたいから研究する、という動機付けでラボや研究テーマを選んでも、別にいいと思っているので。

 最近は、企業の側も、「博士だから採用しない」ってことはなくなってきたんじゃないのかな、と、その人たちの話を聞きながら思いましたが、ここでも「博士だから採用する」とまでは行ってなさそうな印象です。

 博士課程を卒業して一般企業に就職した人たちの話では、インターンに行ったとかいう話もよく出てきたので、普通の学部・修士卒業の人たちと同じくらいの就活は必要のようです。(このインターンの話を聞いて、就職のために1か月ラボ休めるとかどれだけホワイトラボやねん。うちの研究科にそんなところはねぇ。工学研究科とか医学研究科って同じ博士学生でも天国と地獄ほど差があるんだな。私は地獄出身か、笑えないぜ。と思いました。)

 一般的に転職が当たり前になりつつあるということが、博士課程在籍者を特別扱いしない背景の一つなのかもしれないなと考えてもいます。博士課程在籍、というのも、前職のひとつとしてカウントするだけ、みたいな感じでしょうか。

要注意な失敗例 ~取得見込みに注意~

 ここまで、ノンアカデミアで仕事を見つける場合も、就職する年齢は上がるけど、それ以外はそれほどマイナスにもプラスにもなりませんぜ、と書いてきましたが、ひとつだけ注意してほしいのは、「博士課程の学生は、学位は取得見込みの状態で就活しなくてはならない」ということです。

 私は、学位取得が必須ではない職だったので、退学という最終学歴で仕事を始めても特に何も言われなかったのですが、同じラボのひとつ上の先輩は状況が違いました。その人は、学位取得が必要とされる職種に「学位取得見込み」の状態で就活し、内定を貰ったのですが、予定していた期間で学位を取得することができず、満期修了(退学)で就職することになってしまったのです。この先輩は、その後も結局論文を完成させることができずに年月が経ち、課程博士が取得できる期間を過ぎてしまい、学位は取れていません。

 退学してから数年後、私が学位を取ったときに、先輩に会って話を聞いたところ、博士号を取得していなくても、仕事を始めることはできたらしいです。ただ、予定よりも給料が安かったこと、周りがほぼ全員博士号取得者であり肩身が狭かったこと、先生との仲が悪く論文作成を進められないのに「学位を取る予定です」と周りに言わないといけないことがストレスだったようで、結局その先輩は転職をしたとのことです。

 この先輩の就活中の思惑としては、就職が決まってしまえば、そこをデッドラインとして先生も自分に学位を与えるよう動いてくれるだろうと期待していたのだと思うのですが、先生はそこんとこ全く甘くなかったわけですね。(傍から見ていた私としては、この先輩も都合のいいこと考えてんな、と思うものの、先生も頑固だな、と思います。どうせ非アカデミアなので、多少ショボいデータでも学位取らせてあげても良かったのでは、と。)

 この先輩のようにならないように、博士号取得見込みで就活する際は、先生と綿密に打ち合わせをして、学位取得を目指してくださいね。

 以上、「博士課程を修了した上で、研究職以外の業界で就職するという選択肢」をお届けしました。博士課程に進学したことは、プラスにとらえることもマイナスにとらえることもあるなと思います。(どう捉えるか、その人の考え方次第!)

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