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学士と修士と博士。「とりあえず行っとけ!」の修士と背水の陣の博士

こんにちは、黒都茶々と申します。

現在は定職(not研究職)についておりますが、かつて大学院の博士課程というものに在籍しておりました。

前回は私の大学での道のり(研究室や研究)をざっくり紹介しましたが、「そもそも大学院ってなによ?」という方に向けて、学士と修士と博士について、個人的感情も交えて(むしろそれメインで)紹介したいと思います。※私が行っていたのは薬学や医学系の大学院ではないです。また、社会人コースや論文博士向けの課程でもありません。

公式な定義

このような論調でお話をする際、まず初めに辞書的な定義について記載しておく必要があるかと思いますが、今回は割愛。必要とあらば文部科学省のウェブサイトやWikipediaをご覧ください。
一言で乱暴に言ってしまえば、大学はお勉強したい人が行って、卒業するときに「学士の学位」がもらえる。大学院はさらにお勉強したい人が行って、卒業するときに「博士の学位」「修士の学位」がもらえる、という感じですかね。

定義とは関係ありませんが、どれくらいの人が進学しているのかな、ということがちょっと気になったので、調べてみました。ちなみにこれは、政府の統計e-statから取ってきています。

令和元年度の大学学生数:260万9148人(1年次は64万891人)
令和元年度の修士課程学生数:16万2261人(1年次は4万5297人)
令和元年度の博士課程学生数:7万4711人(1年次は1万8140人)

学部・学科ごちゃごちゃの情報なのでなんとも言えませんが、ざくっと言ってしまえば、64人が大学に行って、その中で4人が修士に、その中で2人くらいが博士に行くという感じですね。この数を見ると、修士に行くときにかなり人数が厳選され、修士→博士は大体50%くらいという感覚。ふむ、そうか。。。

個人的な大学・大学院観

上の統計は全学部の話だからだと思いますが、私が大学・大学院で体感したものとはかなり違うなという印象です。

私の印象では、
 
修士課程:進学するのがデフォルト。学部だけで卒業する人は、よほど就職したい人か、これ以上在籍するのは無理、ってくらいラボに合わなかった人だけ。

博士課程:修士の中で、研究が好き!向いている!先生にもテーマにも恵まれた!という少数の人が進学。あるいは、先生やテーマが外れでも、将来研究者になる予定の人だけが進学する。一般企業や公務員に就職希望の人は絶対に進まない。ごく稀に、どこからも内定をもらえなかったというネガティブな理由で進学する人もいるが、先生たちからはあまり歓迎されていない。

私が在籍していたのは、旧帝大の一つ、理系(生物系)の学部でしたが、概ね他の国公立の大学でも同じような状況なのではないでしょうか。

それぞれの課程に対する印象を上記の通りお伝えしたところで、もう少し実態を具体的にとらえるために、実際の研究テーマおよびラボでの役割を書いておきたいと思います。

学部4年生
研究は、結果がほぼ分かっている、あるいは、手法が確立されていて、あとは手を動かすだけ、という状態で開始。先輩がやっている実験のN数を増やすだけ、という場合もままある。お膳立ては済んでいるので、結果は出るし大体楽しい。実際に研究を行うというよりは、「ラボに慣れる」「論文の読み方を訓練する」「発表の仕方を学ぶ」「結果のまとめ方を身に着ける」のが目的。たまに、この段階で躓く人もいる。

修士1、2年生
4年生のときにやっていた実験テーマを継続する場合が多い。学部で出た結果から導かれる仮説を検証する実験を行う。試行錯誤するので望んだ結果が出ない場合も。下手すると、たくさんの上手くいかない方法を調べました、みたいな発表で修士を終える人もいるが、データ(結果)がないことを理由に卒業できないということは絶対にない。学生側としても、どうせ就職できるので、無理やり結果をひねり出す必要はない。適当に頑張って適当に結果を出す。人生最後のモラトリウム、とも言われる。学会で初めて発表するのも大体修士のころ。ポスターが多いが、口頭をやってのける人もいる。

博士1~3年生(あるいは~6年生)
自分の研究テーマを持って、責任持って実験をする。新しい実験系を立ち上げたりもするし、別のラボに手技を学びに行ったりもする。科学雑誌に論文が掲載されない限り卒業できないので、自分のためにも結果が必要。学会発表のために海外まで行くことも。また、学部4年生や修士の学生の面倒も見るし、ラボの備品管理やセミナーの運営なども行う。基本的な修了年数は3年間だが、テーマと環境とタイミングに恵まれた超優秀な人なら2年で卒業できる。その一方で、4年や5年は全く珍しくない。本人の優秀さ以外に、テーマの運や先生の方針などにも依存するのが辛いところ。

平均的な実態について書いてみましたが、ばらつきはかなり大きいと思います。あくまで、私が見た、私の学科のお話、ということで。

以上のような実態ですので、修士への進学はかなりお手軽なものとなっており、博士への進学はかなりハードルの高いものとなっております。

進学を決めるときに考えるべきメリットとデメリット

● 4年生が修士に進むか悩むときに頭に入れておくこと

修士に進むメリット→ほぼ確実に修士の学位がもらえる、実験を続けることができる(結果は必須ではない)、まだ就職しなくてもいい、修士の方が専門的な仕事に就けて給料も高め
修士に進むデメリット→2年間学生期間が継続する=学費がかかる

このような背景があるので、よほどラボの先生と反りが合わないなどの問題がなければ進学します。ラボの先生と反りが合わなくても、ラボを変えるという手段を取ることができます。
(余談:私立理系出身の学部生が国立修士を受けて、最終学歴を国立修士にする場合は多いです。修士の入試の方が圧倒的に簡単なので、私は学歴ロンダリングと呼んでいますが。真面目に研究する人もいるにはいるが、大して研究する気もない奴が多い、と感じます。私見ですが)

● 修士が博士に進むか悩むときに頭に入れておくこと

博士に進むメリット→うまくいけば博士の学位がもらえる、自分で自分の実験をできる、論文に自分の名前が載る
博士に進むデメリット→うまくいかなければ博士の学位はもらえない、卒業しても就職先が限られる(ポスドクがほとんど。一般企業は就職しにくい、公務員は給料が修士卒とほぼ同じ)、3年間学生が継続する=学費がかかる、どれだけスムーズにいっても卒業できるのは28歳、(option: 先生と衝突してメンタルやられる)

そんなこんなで、博士に進まない人が多いわけなのです。

以上、「学士と修士と博士。「とりあえず行っとけ!」の修士と背水の陣の博士」をお届けしました。あくまで表面上をさらりと撫でただけですが、それぞれの課程のイメージは少しでも具体的になりましたか?

次回は、「私なりに考えた、博士課程の闇 ~私が覗いた深淵と、先輩の嵌った沼~」をお届けします。博士課程の辛さについてお伝えいたします。

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