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究極の質問:学部生に戻ったとして、もう一度博士課程に進学するか?

こんにちは、黒都茶々と申します。
現在は定職(not研究職)についておりますが、かつて大学院の博士課程というものに在籍しておりました。
前回から間があいてすみません。前回は、大学の先生事情を学生目線から紹介しましたが、今回は紹介というより、大学院に対する個人的な思いを書き残していこう思います。

タイトルにもある通り、学部生に戻ったとして、あるいは修士課程の学生に戻ったとして、もう一度博士課程に進学するか? という質問に、今の私ならなんと答えるかな、と考えてみました。

私の答えの前に、友人の答えをひとつ。彼女は院生時代の友人です。私と同期で、同じように博士課程に進みました。彼女は、昔に戻ったとして、異なる進路を選ぶことができた場合に博士課程に進むか、という質問に対して「絶対進学しない」と言い切りました。その話をしたのは、彼女が卒業するときだったでしょうか、ちょっとした立ち話での話題だったので、どれくらいの真剣度で口から出た言葉なのか私にはわかりませんが、あまりの即答具合にびっくりした記憶があります。彼女は、私たちがラボの愚痴を言い合っている中でもほとんど自分のラボの愚痴は言わない人でしたし、きちんと3年で学位を取って、なにがしかの立派な賞も取って、研究のスキルを活かせる職業に内定をもらい、円満に卒業したように見えたのですが、なにかあったんでしょうか。詳しいことは聞けませんでした。開けてはいけない箱なんじゃないかと思って。

では、同じ質問に対する、私の今の答えは?

私も、「博士課程には進学しない」です。

私は、博士課程に進学して、いろいろなものを得ました。博士という肩書はもちろん、家族以外で長い時間を一緒に過ごすことになったラボのメンバーや、ラボの愚痴を言いまくった友達とは今でも時々会っています。それになにより、あの辛い博士課程の時代を乗り切って成果を出したというのは私の自信にもなっています。
その一方で、良くないこともありましたし、したくない経験もしました。マイナスの経験としては、学歴とお金と研究結果を巡る汚いやり取り、うまくいかない人間関係、悪役はいなくても人は不幸になるんだと学んだのもここでした。健康も害したし、性格悪くなったし(それは元から?)、お金もなくなっていくし...。

全部、今の私を構成する大切な要素です。

博士課程に進学したことで、上に挙げたような得難い経験はあったのですが、代わりに受けた精神的ダメージや、費やした時間は、やっぱり無駄だったと思うんです。博士課程で身につけたプレゼンスキルや語学スキルだって、同じレベルのものを習得するためにもっと楽しい方法があったはずだし、困った上司の対応法とかは、こんな方法じゃなくても身についたのではないかと思う。

時々、自分の院生時代の苦しみを美化して、「あんなに大変だったけどそれを糧にここまで来られた」と誇らしげに語る人々がいるけれど、私は、後輩たちには、こんなアホみたいな苦しみを味わってほしくはない。し、自分ももう二度と味わいたくはない。

でも、そうは言いつつも、記憶を無くしてもう一回タイムスリップしたら、私は間違いなく博士まで行くと思います。今となっては、博士課程に進んだところで、あのときに描いていたキラキラしたものは手に入らないとわかってはいるけれど、あの進路選択の時には、博士課程というものが私にはとても魅力的なキラキラしたものに見えていたのだ。
仮に、その時の私に、今の私みたいに苦労した人が苦労話を行って聞かせたところで、まるで気にせず進学するでしょうね。変に自信満々なのがあの世代ですから。私は、自分の能力にはさして自信はなかったけど、努力はできるから、それで才能なんて簡単に埋められる(研究というのはそういう世界なのだ)と思っていたのです。

そんなわけで、今もし博士課程行こうと思う人がいるなら、行けばいいと思うんですよ。変わりつつあるとはいえ基本的に風通し悪く変革を好まない業界ですので、きっと私と同じようなフラストレーションを抱える人は出てくるんでしょう。しかしまぁ、しょうがない。できるだけうまく立ち回ってください。

本当にただの老婆心なんですが、研究上手くいかなくっても、学位取れなくても、死ぬことはありませんから。世界は広いですよと言っておきます。

研究室にいるとね、研究の内容とか業績とかで世界が閉じてしまうのだけど、たまには気分転換して、外の空気をたくさん吸い込んで、おいしいもの食べて、思いっきり寝てくださいね。

辛かったり、なんか息苦しいなと思ったら、思い切って、3日くらいラボ休むってのもいいと思うよ。過度に落ち込まずに、元気にいきましょう。自分を多少客観視できるようになると強いと思います。そういう視点は、意識すれば簡単に手に入るので。

「いま、この人疲れてるんだなぁ。コンビニおやつと入浴剤買ってあげて、おうちでゆっくり寝かせとけば元気になるだろ」と、自分を操縦する方法をマスターしてください。

以上、「究極の質問:学部生に戻ったとして、もう一度博士課程に進学するか?」をお届けしました。過去の自分に話しかけるつもりで書こうと思ったんですが、考えれば考えるほど、私は自分を説得(博士課程に進まないように)することは不可能だなと思いました。

次回は、何について書くか未定ですが、できるだけ早く更新したいなと思っています。

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