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学会に行くぞ! さて、何をしに? ~国内編~

 こんにちは、黒都茶々と申します。
 私は現在は定職(not研究職)についておりますが、かつて大学院の博士課程というものに在籍しておりました。

 本日は、ラボの大切なイベントである「学会」について、どんなものなのか紹介したいと思います。(本日は国内編。海外編はまた後日)

学会は研究者の参加する交流会

 学会、学会とこの記事でも書いていますし、研究室でも言いますが、正確に言うとこの「学会」というやつは、「学会の年次集会」を指しています。

 本当の意味での学会というのは、研究者たちのグループのことを指します。グループを作るための切り口はいろいろで、例えば、リンゴの遺伝子を研究している研究者だったら、「果樹学会」「植物学会」とかいうリンゴについての学会に所属していたり、あるいは「遺伝学会」とか研究手法である遺伝子に注目する学会に所属していたりするかもしれませんし、はたまた「品種改良学会」とか新しい品種開発に関わる学会に所属していたりする可能性もあります。(※ここに出てきた学会名は、適当に考えただけですので、実在していても関係ないです)

 日本にも世界にもいろいろな学会があります。研究者は複数の学会に所属することが可能ですし、逆にどこにも所属しなくても問題ないです。学会に所属するメリットとしては、年次大会へ安く参加できたり、学会員ということで研究者ネットワークに入れたりします。学会で学会誌を持っていたりするところは、著者のうち少なくとも1名は学会員であることを求めていたりもします。あとは、○○学会員ということを名刺やHPに書いたりして、ちょっとだけ自分の所属というか、興味を外に示すラベルとして使えたりもするのかも。デメリットとしては、年会費が発生することくらいでしょうか。あまり多くの学会に所属しても、自分の研究に関係なかったりするので意味がないかなと思います。

 通常、大学院生や大学の先生が「学会に行く」「今度学会がある」というときに使う「学会」という言葉は、学会が開催する集会のことを指しています。学会にもよりけりですが、国内の学会だと年に1回、国際学会だと2年に1回ほど、集会(大会)が開かれます。この集会に行くよ、ということを指しているわけですね。

 小さな学会だと、大学付属のセミナー室や講堂を利用して行われたりもしますが、大体の学会は大きなイベントホールを借り切って開催されます。同時進行でいろいろなセッションが開かれるので、前もってスケジュールを見ておいて、この時間にこのホールへ行こう、と計画を立てて行動する必要があります。お祭りっぽくて楽しいですよ。

学会発表形式は、大きく分けて2種類:ポスターと口頭

 学会発表は、大きく分けてポスター発表と口頭発表があります。(その他、教育講演、市民講座、企画公演などもありますが、大学院生が話す側になることはまずないので、ここでは割愛。)

 ポスター発表とは、大きい紙に実験結果を印刷して、それを所定の場所に張り出すものです。大学院生がまずやるのは、このポスター発表ですね。紙の大きさはいろいろで、会場が広ければ1人あたりのスペースも広いですし、コンパクトな会場だったら狭めなスペースになります。縦長が多いですが、スペースが十分あるなら私は横長の方が好きですね。紙面は、論文みたいに、サマリー、背景、方法、結果、考察とパートが分かれています。その紙(ポスター)を、端から端まで見たら、その研究について一通り分かるようになっています。

 これも学会によりけりですが、会期中に「ポスター発表の時間」というのが設けられているので、発表者はその時間はポスターの前に立って、興味の赴くままやってくるお客さんから、質問を受けたり、研究に対するディスカッションをしたりします。ポスター番号が偶数の時間と奇数の時間が分かれているので、お隣さん同士の発表時間は被らないようになっています。

 ポスター発表は、実験やっている人と一番近い距離で話すことができるので結構楽しい。発表は、まだまだ実験途中ですよ、という内容が多いので、ここからどう発展させるんですか、なんて話もできる。発表者は大学院生、ポスドク、助教くらいが多いと思います。教授とかが発表しているのは見たことないですね。

 ポスターを掲示する時間は、ポスター発表の時間は最低限貼っておかないといけませんが、貼り出す時間・撤去する時間は割と自由。ということで、お目当てのオーラルセッションがない時間に、ふらっと見て回ることも可能です。

 さて一方、口頭発表(オーラルセッション)はと言いますと、その名の通り、舞台に上がって自分の研究を発表する場になります。持ち時間が決められていて、その時間内で発表をして、質疑応答をします。ポスターに比べると準備が大変だし、論文になりそうなまとまった研究結果がある場合の発表方法になると思います。

 質疑応答に何が飛んでくるかわからないので結構怖い。あと単純に、人前で喋らなくてはいけないのでレベル高いです。修士で口頭発表までする人はそこまで多くないかなと思います。まぁ、私は博士まで行っているけれど、口頭発表やったことないんですけどね。ははは。

学会発表は業績にもなる。

 研究者の最終目標は論文を出すことで、究極的には業績は論文だけなのですが、その前段階としての学会でのポスター発表や口頭発表も業績になります。なので、学振の応募とか、奨学金の応募のために、院生さんは積極的に参加(発表)するとよろしいのではないかなと思います。まぁ、特にポスターなんかは、成果などなく計画だけでも発表できちゃいますからね。

 一応、学会運営にアブストラクトを提出して、「この内容なら発表OKよ」ということで許可を得てから発表することにはなっているのですが、アブスト提出で切られたっていう話を聞いたことありませんので。よっぽど変なこと書かなきゃ大丈夫だと思いますよ。

パクリに注意!

 学会発表は、上にも書いた通り業績にもなるのですが、その内容については正式に発表したことにはなりません。

 これが何を意味するのか。

 良い面としては、まだ詰めが甘い、データ数が揃っていないデータでも発表できるし、考察も自分勝手に話すことができます。多少、過去の知見と矛盾する仮説を披露してもいい。

 悪い面としては、結果をパクられる、という可能性があるということ。研究者①がある遺伝子の研究をしていて、遺伝子Aが欠損するとリンゴの糖度が著しく低下します、ということを突き止めたとする。研究者①が、その内容をどこかの学会で発表した後で、その報告を聞いていた別の研究者②が、同じ実験をやって先に論文を発表したとすると、この発見は論文を出した研究者②のものになります。先に学会発表をしていた、世界で一番目に発見した(学会発表しかしていない)研究者①は、第一人者にはなれないわけです。この研究者①が同じ内容の論文を出そうとしても、すでに発表されている内容の追試みたいな立ち位置になってしまい、いいランクの論文には採用されません。

 そんなわけなので、特に遺伝子見つける系の研究室だと、学会の発表で遺伝子の名前を言わなかったりしますね。オリジナルの名前つけちゃうとか。

 以上、今回は学会について書かせていただきました。一言でいえば、研究者が交流するために行くのが学会なのです。

 さて次回は、海外の学会についてお伝えしようかと思います。私は国際学会は3回行きましたが、どれも国内の学会と違って楽しくも苦しくもありましたねぇ。世界が広がるので、国内でも国際でも、大学院生の皆様はぜひ学会参加すると良いと思います。

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