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大学の研究者にとって、女性であることは有利か不利か

 こんにちは、黒都茶々と申します。
 現在は定職(not研究職)についておりますが、かつて大学院の博士課程というものに在籍しておりました。

 これまでは、ラボの紹介や博士課程の生活などについて紹介してきましたが、今回は「女性」が研究者として生き残っていくことについて書いてみようかと思います。

リケジョ(理系の大学に進学した女性)って多いの?

 工学系の研究科だと、男性の比率の方が圧倒的に高いと思いますが、農学系や理学系の研究科では、意外と女性比率が高いと思います。私の学部では、30%くらいが女子でした。(これが高いというのか低いというのかはわかりませんが…)

 この女性比率は、博士課程、ポスドク、助教くらいまでは維持されているような気がしましたが、その上の大学の先生のポストになると、上に行けば行くほど比率は小さくなっているように思いました。

 教授クラスまで行くと、専攻全体の教授たちは20人くらいいる中で女性教授は1人か2人だったので、5~10%、、、と考えると、まぁ少ないですよね。このような現状を考えると、研究者という仕事は女性に不向きであるようにも思えますが、年代の違いというのもありますので一概に述べることも難しいです。このガラスの天井問題については、切り口もいろいろあって手に負えないので、今回は少し絞って、「大学で研究者としてやっていくのに、女性であることは有利に働くかどうか(今の制度で)」という点について、子供がいる場合といない場合について書いてみようかなと思います。(子供がいなければ、男性と女性の働きぶりは変わらない、という前提のお話です。)

子供がいない場合、あるいは子育てを誰かに任せられる場合

 子供の世話を考えなくていい場合、また、介護などもなく自由に働くことができる場合、そして、職場の所在地を自由に選べる場合、「女性」であることは間違いなく有利に働くと私は思います。なぜなら、女性研究者が少ないことを解消することを目的に、女性を積極的に採用しようという流れがあるからです。

 誰か新しい人を採用しよう、という場面で、男性と女性で、同じくらいの業績の候補者がいた場合、女性を採用しましょう、という方式の大学も多いと思いますし、女性教授のためのポストがある場合もあります。こういうところに応募できるのは女性だけなので、その時点で競争相手は半分減ることになります。

 こういう流れを「下駄をはかせてもらっている」と嫌がる女性や、ねたむ(羨ましがる?)男性もいますが、気にすることなく利用すればいい制度だと私は思っています。要求基準を満たしていないのならば、採用されることなどありませんので、採用されたのならば胸を張って働けばいいのです。

 というわけで、女性であると、椅子取りゲームの椅子がちょっと多いことになるので、有利かなと私は思っています。

子育てや介護をしなくてはならない場合

 これは、置かれた状況により様々かと思います。子育て、介護をするにしても、自分一人で負担するのか、旦那さんも一緒にやってくれるのか、自分の親や兄弟が手伝ってくれるのか、によってもかなり違ってきます。

 上のパラグラフで、「女性が有利」と書きましたが、それは「女性と男性が同じ業績を出していたら」という前提あってのお話なのです。そもそも、同じ業績を出せる程度に働けるのか、という点が、この役割分担によって大きく異なってきます。

 出産、子育ての年齢は20代後半~30代と思いますが、この時期は研究者にとても大切な期間になります。妊娠・出産の期間はもちろん、その後子供を保育園に預けたとしても、一人のときのように自由に働くことはできません。その制約の中で、女性が男性と同じ業績を出せるのか、というと、ちょっと無理かもしれないなぁと私は思うのです。

 もしかしたら、できるかもしれないですし、やっている人もいるかもしれません。大変だと思っていたけれど、やってみたら意外と大丈夫だったとか、職場からのサポートがあったとか、そういう話もあるかもしれないです。ただ、あまり表には出てきていないかなと思います。支援体制が明確になっていない以上、女性研究者にとってはないも同然だと思います。将来のことを考えたときに、思い描く生活の中にそのサポートがないからです。子供を産んで育てたいな、と思ったときに、研究しながら子育てできるビジョンが明確に描けなければ、研究を続けることを諦める人は多いのではないでしょうか。

 そういう背景があり、女性は、子供が欲しいと思ったタイミングで、外的要因で続けられないから、というよりはむしろ自発的に、研究の世界を去っていくのかもしれないな、と私は推測しています。

女性という生き物と、研究の相性

 いまどきこんなこと考えている人がいるのか知りませんが、研究というものに適した性別があるのか、という問いに関しては、私は「ない」と思います。男は理系で女は文系みたいなよくわからんステレオタイプはまだあるみたいですが、男の方が研究に向いてるなんてことはないですよ。

 むしろ、平均的には女性の方がコミュニケーション力が高い(←これだって性差より個人差の方が大きい話だけど)ことを考えると、研究には女性の方が向いているとも言えるかなと思います。研究って、多分研究室に入ったことない人だと、個人で黙々と実験机に向かうイメージがあると思うんですが、実際はなかなかどうしてチームプレイの部分が多いのでございます。

 ラボという20人くらいの小さなコミュニティでルールを守って生きていかないといけないですし、先生の協力なしにはなにも進まないですし、もうちょっと高度になれば、学会でコラボレーターを探したりディスカッションしたり、就職先を探すのだってコミュニケーションが必要です。引っ込み思案な人よりは社交的な人の方が絶対得だし、自分のやりたいことをクリアに相手に伝えるマインド・スキルは絶対に必要です。というわけで、おしゃべりに慣れている女性の方が、有利かもしれないと思う部分もあるのです。

番外編:研究が楽しすぎると婚期逃す気はする

 ちょっと話は逸れますが、研究が恋人(子供)みたいな状態には、ちょっと、なるかもしれないですね。これは「博士課程学生の恋愛事情」として別記事アップしたのでそちらをご覧ください。研究でいろいろ満足してしまうと、恋人作るのが遅れて、結婚も遅れてしまうというのはまぁ、しょうがないよねぇ、と思います。

 時間と手間暇かけた分だけ、大きなリターンになって自分に戻ってくるというのは、やりがいがあるし楽しいからね。時間と労力を割いてもしょうもない結果になる彼氏とかより、断然面白いかもしれませんな。

 以上、女性であることの有利不利について考えてみました。研究者って研究者同士の結婚も多いから、結構単身赴任になることもあって、そうなるとさらに子育て大変になるんだよなぁ。そのあたり、大学側は特別にサポートしたりしてくれているのかしら? もしかしたら何か支援があったり、子育てしている研究者のネットワークとかあるのかもしれませんね。

 研究者の世界に限らず、日本は男女で格差が大きいですからね。根本解決には、社会全体が変わっていく必要があると思っています。男女の格差が大きいと、女性も大変だけど、男性も大変じゃないかしら? 格差がなくなると、みんなもうちょっと生きやすくなるんじゃないかなと私は思っています。

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