『ペンダーウィックの四姉妹』シリーズの5巻『The Penderwicks At Last』について、だらだら語ってみた

注意!!
 ジーン・バーズオールの『ペンダーウィックの四姉妹』シリーズの5巻『The Penderwicks At Last』について語ります。ばりばりネタバレするので、「4巻まで読んだ」&「5巻の内容が気になるからネタバレOK」というレアな方向けです。
 気持ちのおもむくままに書いたので、長いです。

 5巻『The Penderwicks At Last』の個人的なお薦めポイントは

・四姉妹&取り巻く人たちの近況報告(4巻からなんと9年後が舞台)
・舞台は懐かしのアランデル
・バティの恋(素敵な元カレ。そしてジェフリーとの同志以上恋愛未満な感じが◎)

 5巻の主人公は、ペンダーウィック家の末っ子リディアです。4巻では赤ちゃんだった爆弾たんぽぽ娘も、はや11歳。リディアと行動を共にするのは、アランデルの管理人キャグニーの娘アリス(今回初登場)なので、元祖四姉妹が好きな人にはやや物足りないかも。

四姉妹&ジェフリーの近況は
ロザリンド  独立して近所のアパート暮らし。トニーとの結婚式を控える
スカイ    天体物理学の博士号を取る為、カリフォルニアの大学で勉強中。
ジェーン   ウェイトレスのアルバイトをしながら小説を書き続けている。
バティ    大学生。
ベン     高校生。ラファエルと映画を撮ることに熱中
リディア   中学生。踊ることが何より好き
ジェフリー  プロの演奏家として現在はドイツ在中

 ロザリンドの結婚式をアランデルであげることになり、先発隊のリディアとバティが大掃除をしているとティフトン夫人が突然現れて「私の家で何しているの!キー!」となるのでした。ジェフリーに生前贈与したくせに、四姉妹を蛇蝎のごとく嫌っているティフトン夫人は、スカイとジェーンが金目当てでジェフリーとの結婚を企んでいると決めつけているのです。。
 結婚式に参列するため、アランデルには続々と家族や友人が集まってきます。ペンダーウィック家、ガイガー家の他には、ジェフリー、バティの元カレであるウェスリーと愛犬ヒッチ。
 スカイと恋人も結婚することになり、ロザリンドたちとダブルウェディングをあげることになります。“結婚は時代遅れの社会構造”と言っていたスカイが結婚し、式をあげることまで同意する相手にも大いに興味ありますが、海洋生物額を学ぶチェコ出身の青年という以外の情報がないのが残念なところ。ジェーンは“一生結婚しないかもしれない。少なくとも作家として成功するまでは”と言っていて、19歳のバティには、まだまだ結婚は遠い話で、しかも恋人と別れたばかり。

 そのバティの元カレ、ウェスリーは静かで神秘的な雰囲気を持つ偉大な芸術家(←リディア談)で、もはや学ぶものはないと大学を辞め、西部に旅立とうとしています。バティと共に行くことを望んだけれど、バティは恋の為に他のものを捨てることはできないと別れを告げました。ロザリンドへの結婚祝いを渡すためにアランデルに立ち寄ったウェスリーとバティは会うことを拒むけれど、彼が旅立つ直前に駆けつけます。お互いに相手を大切に思っていて、でも運命を共にする相手ではないと悟った二人。立ち去るときにウェスリーは言いました。
"君は幸せになるんだ"
"私はもう幸せよ"
"わかってる"
 アランデルの情景と相まって、爽やかで切ない映画のようなワンシーンでした。

 一方、ジェフリーとバティは?
 バティが5歳の時にジェフリーがピアノを教えてから、二人は音楽で結びついています。でも、ジェフリーが好きになったのはスカイだし、その恋が上手くいかなかった後も、沢山の女の子とつきあってきた中で、バティのことはあくまでも、可愛い妹、大切な同志と思っていたのでしょう。バティの方も恋愛感情はゼロ。
 バティはジェフリーをメンターと思っているけれど、ここ一年はジェフリーがそのことを否定し始めバティは自分と同等であると宣言しています。バティが反論しようとすると、ジェフリーは話題を音楽と笑いに誘導してしまうあたり、大事に思っているけれど、まだまだバティを子ども扱いしている感じ。
 普段はなかなか会えない二人は、再会すると音楽の世界に没頭します。アランデルでも再会した日は夜中まで二人きりで過ごしているけれど、誰も(未婚の男女が二人きりで……)という心配はしないんだろうなあ、と。
そんな二人の関係に、ちょっぴり変化が起こります。
 
 ジェフリーがアランデルに到着した日、ジェーンはロザリンドのウェディングドレスを作成中、ちょうど仮縫いの為にバティがドレスを着ていました。ジェフリーは最初、彼女をロザリンドと間違えて、バティだと知らされて驚きます。その後、目があった二人は少しの間、混乱しながら互いに見つめあい……バティがゆっくり“水仙やスミレが咲き乱れる春一番のような”笑顔を浮かべて両手を広げると、ジェフリーが部屋に入っていく。この時、ジェフリーは、恋愛対象としてバティを意識したのだと思います。

 その後、諸々あり、スカイがジェフリー以外の男性と結婚すると知ったティフトン夫人は大喜びで、スカイとロザリンドに結婚の贈り物をします。 “気に入らなかったら雑巾にでもしてちょうだい”とリディアに託されたプレゼントは、なんとヴェール。結婚式ではスカイもロザリンドもヴェールを使わないので、ジェフリーとリディア、バティが協議して、他の姉妹が結婚する時までしまっておくことにします。しまい込む前にバティとリディアはヴェールをかぶってみます。きれいなヴェールだから、ちょっとだけつけてみたい。バティはリディアと同じレベルの無邪気さだけど、ジェフリーは多分ちょっとドキドキ。もちろん紳士なジェフリーは“二人のヴェール姿はとても素敵だったよ”と言うのでした。

 アランデルでの結婚式が無事に終わった時、リディアはジェーンに聞きます。
"ジェフリーとは結婚しないとティフトン夫人に約束したのを覚えてる?"
その時ジェーンは、姉妹の誰もジェフリーと結婚しないと誓えというティフトン夫人の要求には従わなかったのです。それは……バティのことが頭にあったから。
 バティがジェフリーをどう思っているか、そもそも意識しているかどうかもわからないし、彼女が言い出さない限り自分たちから聞くことはない。というのが姉たちの総意です。スカイとロザリンドはジェーンより確信を持っていて、スカイに至っては"バティはジェフリーの運命"と言うのでした。
ペンダーウィックの四姉妹は5巻で完結ですが、ジェーンが作家として成功していて、ジェフリーとバティが結婚している10年後くらいの物語を読みたいです。