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星になった鷹羽狩行
ゆうべ眠れぬまま夜更けに差し掛かかり、川名大氏の『(名句と秀句のすべて)現代俳句(下)』を手にとっていた。
目次で目にした同郷出生の鷹羽狩行のことがなんとなく気になり頁を開くと、下一句に邂逅したのである。
みちのくの星入り氷柱われに呉れよ
ハッとした。ハッとして、この人は星の詩人か、と思ったのである。
もう二十年余り前であろうか、実家に咲いていた花の名を母に尋ねたとき、「イカリソウだよ。船の錨に形が似ているからだよ。」そう教えられた。なんとも愛らしく、名付けられた花も、名付けた人も詩人なのだろう、と感心したものだった。
すぐに歳時記を開くと、「晩春」に『錨草・碇草』とあり、例句の中で次の一句に邂逅、
碇草生れかはりて星になれ
それが鷹羽狩行の句であった。花を凝視する詩人の姿にドキリとし、爾来、好きな句を問われれば、狩行一句が常に脳裡をよぎることとなった。
さて、俳人狩行はいま如何にあらんや、とサーチすれば、なんと先月末(5/27)に鬼籍に入られていた。歳の満ちること九十有三年、大往生であろう。
俳人の死を知り得たのは、奇遇といえば奇遇、必然といえば、必然であろうか。私淑する詩人の死は、なんだか虫の知らせの如く、いつも胸が騒ぐのである。
程なく四十九日、仏教者であれば落ち着かれる頃であろう、星に生まれ変わる狩行を、危うく見過ごすところであったが、見届けることが叶った。
夜空を仰ぎ、狩行の星を探す今宵である。
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《写真:私の実家に咲いていたイカリソウ。そして、その芽吹く頃の写真》
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