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天才ペリカンは豆腐の角に頭をぶつけて100遍死ぬ

第1話 初めての蘇り
西暦2058年、世界の人口は100億人に迫ろうとしていた。

世界人口の約15%にあたる15億人が障害を持って暮らしている。 彼らは世界最大のマイノリティ(少数者)である。 世界保健機関(WHO)によると、この数字は、人口増加、医学の進歩、および高齢化に従って増加する。 平均余命70歳以上の国の国民は、平均で約8年間、すなわち人生の11.5%を障害とともに過ごすことになる。

笠岡三郎も、とある障害に悩まされていた。
彼は長男である。父親の名が二郎、祖父の名が一郎であるので、三世みたいなものである。
既婚、嫁はいる。
大事なのでもう一度言おう。

嫁はいる。

とそんな話をしている場合ではなかった。
彼は逃走中なのだ。

・・・数分前。
仕事から帰宅途中に嫁からLINEで連絡が来た。
「クイーンドラゴンってお店から支払い日過ぎても入金が無いって連絡あったんだけど、ネットで調べたら風俗店だったじゃん。あんた何してんの!?」
「もうすぐ家だから、後で。」
嫁は玄関で山姥の様な顔をして待ち構えていた。
孫助七(出刃包丁のブランド)を持って。
で、三郎は家に入ることなく、
逃げた。
・・・そして、現在。
心臓破りの階段。
あと少しで登り切るところで、お婆さんがスーパーの袋をぶら下げて立ち往生していた。
逃走中の彼は構わずに抜き去ろうとした。
と、お婆さんがバランスを崩しているところに運悪く当たり、スーパーの袋から飛び出して来た豆腐の角に頭をぶつけた。
流石にこれで死ぬわけはない。
足元に豆腐が落ちたのだ。
三郎は心臓破りの階段をものすごい勢いで滑り落ちた。
「あー、誰か助けて!!」
階段下には運良く人気があった。
「ごめん、現在の命を助けることは出来ない。なぜなら、ボクは人型の死神だからね。
君の命は後、数秒。
現在の命を助けることは出来ないけど、ボクの持っている無数の魂を使って蘇させることは出来るよ。
その君の持っている障害だけが無くなってね
!!」
三郎は

セックス依存症

だった。
「だけどね。ボクの持っている魂は障害のある人だった魂だけを君に授けることが出来るから、蘇る時にその障害を受け継いでしまうんだ。
そして、その選別と選択はボクにも出来ない。
それで良いなら...。」
三郎には時間が無い。
「お願いします。」
三郎はその言葉を残して生き絶えた。
人型の死神の名は

N.N(名が無い)

こうして、三郎の一遍目

豆腐の角に頭をぶつけて死ぬ
ことになった。



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