シロガールテンイムホウ第四話
くれえいじせんせいの連載が読めるのはnoteだけ!最近せんせいは待ってくれている良い子のためにしめきりにむかってがんばっているぞ。びじんできょにゅうのへんしゅうしゃがへやに来て、しめきりをさいそくしているんだ(かなり病んできました)
第四話「『赤とんぼ』は死の子守歌」(後編)
鬼瓦元吉は自室で身震いを抑えることができなかった。
「逃げ切れると思って?」
学校の屛から飛び降り、元吉らの目の前に立ちふさがった新たな敵は『揖保乃糸子』と名乗った。
「あなたが苦戦した子午線子、私には全然物足りなかったわ」
揖保乃糸子は不敵な笑みを浮かべながらゆっくりと近付いてくる。一体、この自信はどこから湧き出ているのか。
「貴方の奥義、カの櫓石落とし、打ち込んでみなさいよ」
揖保乃糸子は両手を広げて完全に行く手を遮った。
「おーい、こんな所にいたのかー。ほれー、先生の写真だぞー」
「チィッ。邪魔が入ったか、運が良かったな」
その言葉を残し、揖保乃糸子は走り去ってしまった。そしてキョトンとした歴史の小幡先生の空気をまるで読めていない顔。
「あの時は小幡先生に救われたな。しかし龍野城、一体どんな秘策があるというのだろう」
鬼瓦元吉は龍野城に関する資料と古文書を机の上に放り投げた。その横から覗くピンク色の普通紙。
「おおっと、いけない」
元吉は慌ててその紙を隠す。それは愛しの彼女、白鷺姫子の乳首をプリントアウトしたものであった。スマホの画面で愛でるだけでは飽き足らず、とうとう『現物』として所有したい欲求に屈してしまったのである。しかしそれはだれも批判することなどできないであろう。若き日の抑えきれぬ性の衝動は誰もが持っているものだ。
「しかしこれは姫子さんの良さがまったく活かせていない…」
鬼瓦元吉は再びソッと普通紙に印刷された白鷺姫子の乳首に見入る。生憎、家には普通紙しかプリントする用紙がなく、出してはみたものの、その仕上がりは実物とは程遠いものであった。元吉はスマホで『プリント用紙』を検索する。
「こんなコピー用紙じゃ全然駄目だ」
元吉の手が止まる。
「スーパーファイン用紙? こ、これだ」
見れば普通紙の五倍の値段だ。それだけのコストを掛ける価値は果たしてあるのか? 『ある』元吉はゴクリと唾を飲み込む。そうして注文ボタンを押そうとしたとき、その下の欄に目を移した。
「し、写真用紙光沢プロ『極め』? こっ、これしかない」
値段は普通紙の七倍にも跳ね上がっていた。しかし迷う理由などあろうか? あるはずがない。意中の女性の美しい裸身、最高の品質で出力せねばなるまい。元吉がギリギリである今月の小遣いの残高と闘いながら、注文ボタンを押そうとした時、いきなり部屋のドアが開いた。
「おい、元吉、金玉の裏の痒みを止める薬なんて持ってないか?」
まったく働かない父、鬼瓦さとしであった。
「うわあぁぁ、なんだよ、父ちゃん。入るときはノックくらいしてくれよ」
元吉は慌てて普通紙に印刷された白鷺姫子の乳首プリントを、本の下に隠した。
「なんだ? 読書中か?」
「なんでもいいじゃないか。それよりなんて? 金玉の裏の痒みを止めるって? そんなピンポイントな部位の痒み止めなんてあるはずないじゃないか!」
「起きてからずっと掻いてんだ」
「そんな時にはこれ、タマウラヌール! って? んなもんあるはずないじゃん」
「参ったなぁ」
鬼瓦さとしは水色縦縞のパジャマの中に手を入れて、しきりに股間を掻いている。元吉は姫子のいやらしい画像がバレそうで気が気では無い。早く出て行って欲しかった。
「そ、そ、それこそ父ちゃん、父ちゃん自慢の『神水』を金玉に塗ったらいいんじゃないの? 一発で治るんじゃないの?」
元吉はさとしを追い出そうと、皮肉を込めて言い換えした。
「あっ、オマエ今、大人に向かって切り返した。上手いこと言えた、みたいに得意がってるだろ。生意気な。それでもオマエは神に仕える身かっ。神聖なものを金玉に塗る、なんぞ、そんなこと言う子に父ちゃん育てた覚えはねぇぞ」
なんでも治す御利益のある水、といったのはさとしであったが、全く試そうともしないのは、さとし自身が効能を信じていないことを露呈してしまっていた。
「ちょっと外してくれんか」
「ばさま」
祖母の鬼瓦トメが部屋に割って入ってきた。さとしはトメが苦手なのか、顔を見ると、舌を出しながら早々に退散してしまった。
「水晶玉に二つの光が見える。段々と近付いてきちょる」
「龍野城が白鷺さんを追いかけてる、ってことなの? ばさま」
「そうだ、戦準備じゃ玉吉。姫子はこっちに向かっておる」
トメが先に部屋を出る。元吉は部屋を出る前に、姫子の乳首をプリントアウトした普通紙を、机の引き出しに入れて鍵をかけた。
「鬼瓦くーん」
表に出た時、丁度白鷺姫子が境内の鳥居をくぐって、手を振りながらこちらに向かって走ってきたところであった。
「白鷺さん!」
「なんか胸騒ぎがして、いてもたってもいられなくなったの」
「アウェー感凄いけど関係ない、私勝つから」
「揖保乃糸子!!」
姫子のすぐ後ろには龍野城に魅入られた女、憑依者、揖保乃糸子が後をつけてきていた。
「こんな時にばさまはどこに行ってるんだ」
鬼瓦トメの姿は境内のどこにも見えない。
「私がリニアモーターカーだとすればッ!」
揖保乃糸子は突然叫びだした。
「貴方はのろまな亀」
姫子と元吉はポカンとして聞いている。
「私が東京スカイツリーだとすればッ! 貴方は地面に刺したマッチ棒」
元吉は固唾を飲んで事の成り行きを見守っていた。もしかしたら糸子は、心理戦によって自分が優位であることを姫子に思い込ませる作戦にでているのかもしれない。しかし『それにしても余りに語彙が貧困で、勉強をしていないのではないか?』と思ってしまう元吉であった。
「白鷺姫子、だから貴方は私には勝てないわ。降伏しなさい」
「こ、降伏って?」
あまり闘いを好まない姫子が、少しだけ食い付く。
「私に屈するのよ。キスしてあげる」
糸子の顔が近付く。少し驚いて顔を赤らめる姫子。
「な、な、何を言い出すの? 私たちは女同士でしょ?」
「何を緊張しているの? もしかしてキスは初めて?」
「そ、そんなこと貴方に関係ないわ」
「キスなんてアメリカじゃ会った時の挨拶よ」
糸子の顔がゆっくりと近付いてくる。
「こ、ここはアメリカじゃないです。日本です」
「日本もすっかり欧米化してるじゃないの。貴方はパンを食べないの?」
「け、今朝食べたけど…」
数センチまで唇が近付いた。
「ほら、じゃあ欧米じゃないの」
姫子が言い返す前に、糸子の唇が姫子の口を塞いだ。
「う、美しい…」
元吉は一眼レフを取り出し、無心にシャッターを切った。素晴らしいコレクションがまた一つ増えたようである。
「もう!」
姫子は顔を真っ赤にして糸子を優しく突き放した。
「ファーストキスだったのに」
「フフ、やはり」
「ファーストキスは好きになった人に捧げたかったのに!」
姫子は構えた。右腕に城アーマーが可視化されていく。
「悪く思わないでね、カの櫓ッ!」
「打て、打ってこい」
なんだろう、この糸子の絶対的な自信は。元吉は不吉な思いをぬぐい去ることができなかった。
「石落としィツ!」
パンチの動作と共に、渦巻いた光の波動が一直線に糸子へ向かって伸びていく。避ける気配は全く見えない。
「老中松平定信が訪問した際、庭園から龍野城城下町越しに淡路島や瀬戸内海の島々を望める眺めの素晴らしさから当地を「聚遠の門」と呼んだ。絶景に心奪われ、心落ち着かせ、全てを穏やかにしてしまう龍野城究極奥義ィッ」
糸子の左腕に茶室アーマーが可視化された。
「聚遠亭メイルストロームッ!」
カの櫓石落としの波動は聚遠亭に吸い込まれ、そのまま反対の腕に可視化された隅櫓アーマーから一回り大きくなって吐き出された。
「白鷺さん、避けて」
「ぐうっ!」
姫子はまともに波動を受け、血を吐きながら後方へ吹っ飛ばされてしまった。
「早く楽にしてあげる」
揖保乃糸子から巨大な赤とんぼが姿を現した。
♪ゆうやー○、こ○けぇのー、赤○ーんぼぉー♪
作者は音楽にモザイクを入れざるをえない。なぜなら日本音楽協会の黒服の人が、使用料取り立てで家に来たら怖いからである。
「三木露風の赤とんぼ…」
元吉は手をこまねいて見ているだけで、何もできなかった。赤とんぼはゆっくりと姫子に近付くと、俯せに引っ繰りかえし、抱きかかえながら数メートル上空で滞空した。
「わ、私、浮いてる」
聚遠亭メイルストロームの衝撃で、深く傷ついた姫子は、額から血を流しながら意識も朦朧としている。
とんぼの六本の足は、姫子を抱きかかえたまま、器用に衣類を剥ぎ取っていった。パンティーとブラジャーの姿で宙を漂う姫子。
真ん中の両足は姫子の胴を優しく抱きかかえ、上の手は姫子の両乳首を、昆虫の忙しく機械的な動きでまさぐり始めた。そして下の手は衣類の上から容赦なく姫子の一番大切な部分を撫で始めた。
妙な浮遊感が現実から遠ざけているようであった。赤とんぼのメロディーが幼い頃の郷愁を誘う。
「お、お母さん?」
子供の頃、姫子は得意げに自転車に乗っていた。なんの悪気もなかった。たまたまだった。サドルに股間があたり、妙にフワフワした気持ちになっただけだった。そしてこの気持ちは一体何なのか、と、ただ知りたいという好奇心だけのことであった。
「何をしているのっ、サドルからお尻を離しなさいっ」
あんな怖い顔をした母親の顔は初めて見た。そしてその日から姫子の心にトラウマが宿り、快楽を押さえ込むようになってしまった。自分から遠ざけたのである。母親に嫌われたくないために。
しかし今の姫子は呼吸も上がり、顔も上気し、とんぼの思うがままになっている。両乳首は執拗にこねくり回され、下着の上から陰核は上下左右にまるでオモチャのように転がされていた。
「ずっと触っていて欲しい…」
姫子の禁欲生活のたがが外れかけていた。快楽を遠ざけていた反動である。
「よし、じゃあご褒美をあげる」
その号令とともに、赤とんぼのしっぽが大きく曲がり、男性の陰茎を思わせるような突起物がせりでてきた。姫子の股間に向かってゆっくり進む。
「処女を失えば憑依は消え去るからね、これで私の勝ちよ」
その言葉に鬼瓦元吉は衝撃を受けた。今何て言った? 処女だけが憑依者だって? ということは姫子は処女ということである。その言葉に元吉は喜びを隠しきれなかった。こういう感情は女性から見れば一方的なエゴの押しつけで、男性の身勝手な幻想として毛嫌いされても仕方のない感情ではあろうが、片思いの彼女が処女であるという事実に童貞である元吉にとっては益々想いを募らせる材料でしかなかった。
「姫子ーっ!」
「ばさま?! どこに行ってたのさ」
「116歳にもなると、小便が近いんじゃ。姫子、西の丸化粧櫓じゃーっ」
姫子の瞳に光が蘇る。大阪城から落ち延びた千姫の化粧料で建てられた西の丸化粧櫓。夫秀頼と死に別れ、今度こそは幸せな結婚生活を願ったことだろう。殿に愛されるべく、化粧櫓で化粧をして…。
「女性にキスされてボーッとしたけど、やっぱり私は美白になって、素敵な男性と恋したいっ!」
赤とんぼが苦しみ始めた。
「なにィッ」
「西の丸化粧櫓スクエアーッツ!」
姫子の全身から光の竜巻が巻き起こり、赤とんぼを粉々に吹き飛ばしながら光の竜巻は向きを変えて、揖保乃糸子の腹部に直撃した。
「グボガボゲエッ」
きりもみしながら上空へ吹っ飛ぶ糸子。境内の木に当たり、木と一緒になぎ倒される。
「勝った…」
姫子に駆け寄るトメと元吉。その様子を木の陰から盗み見ている女の影。燃えるような闘志で姫子を睨んでいる。
勝利に酔いしれている三人は、その視線に気付くことがなかった。
第四話 「『赤とんぼ』は死の子守歌」(後編) 完
次回予告
「あなたの乳首は黒豆か? って聞いているのよ」
丹波篠山城に魅入られた女、那智グロ子の魔の手が伸びる。光沢紙にプリントしている場合ではないぞ、助言するのだ元吉。
次回 シロガールテンイムホウ第五話。「黒豆か? 桃豆か?」
に、どうぞご期待ください。
※
全国千人くらいのシロガールテンイムホウファンのみんなから、ツイッター経由でメッセージが届いているぞ。
最初のメッセージはumeくんからだ。
「毎回めっちゃ楽しみにしてますってば!城+女子高生という設定に金平先生の挿絵が加わって、ライトノベル的な雰囲気を醸し出しつつも、読んだら「いつもの感じ」っていうのがたまらなく…好きです。(頬を朱に染めながら)」
ありがとう、umeくん。ベッドの下のエロ本はもう捨てたかな?
続いてのメッセージはIくんからだ。
「あえて付け加えさせて頂くのであれば、最後のお便りコーナーがまるでラジオドラマを聞いている感覚になるのが凄く好きです」
どうもありがとう。そんなノリでやってるよ。窓の向こうでキューを出すスタッフとかが最近見えるんだ。かなり病んできてるんだ(笑)
最後は北国のFくんから
「こないだの我が妻番外編を読んで涙したのは何だったんだ! と思うわけですよ」
すいませんっ、ほんとうにすいませんっ。
今回は元吉くんがムフフ画像をプリントする際に普通紙か、光沢用紙か、悩むシーンがあったよね。あれは作者の心の葛藤なんだ。以前入手したムフフ画像を、最高画質でプリントしたい、でも小遣いがない、時の葛藤を挿入してみたんだ。そういう描写は「作品に血が通えばいいな」って思いながらやってるんだ。
それじゃあ、また読んでくれよな。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?