カレー屋ゲンちゃん

 今はですねー。仕事が忙しすぎてドラマはおろか、テレビもあんまし見てませんが、子供の頃は連続ドラマをお袋や弟と一緒になり必死こいて見てましたよ。

「カレー屋ゲンちゃん」とか特に大好きでしたね。

 今でもストーリーを空で言えますね。ゲンちゃんの誕生日にクラスの友達を招待してカレーパーティーを開きます。

 友達は悪ぶってゲンちゃんに言います。

「オメェとこのカレー、ウンコみてぇだな」

これを聞いたゲンちゃんは激怒。

「俺の事をからかうのは構わねぇよ。だが親の事を馬鹿にする奴ぁ許せねぇ。家帰って首洗って待ってろ」

 その場で友達を店から追い出し閉店。鉄パイプで作業員を襲い、バキュームカーを強奪してゲンちゃん逃走します。

 そうして友人宅一軒一軒お礼回り、敷地内にホースを抱え糞尿を撒き散らします。スローモーションで。

 後ろで絶えず静かに流れていた「禁じられた遊び」が印象的でしたよね。

 そうして友人達を袋小路まで追い込みます。

 そこへ現れる担任の美人女教師。己が自ら盾となり人間十字架となって生徒を糞尿から守ります。

 頭から糞尿をかぶろうが、顔にかかろうが微動だにしない迫真の演技は圧巻でした。

 爆発でも血しぶきでも、なんでもCGで表現できてしまう昨今、平成ドラマにはない本物の迫力が昭和ドラマにはありましたよね。

『ルパン三世』の第一話で、峯不二子がくすぐられる、というシーンで不覚にもエレクトしてしまったように、糞尿をかけられる美人教師でエレクトを誘発する、という曲がったポイントで興奮してしまう子供達を生み出してしまった深刻な問題は後述します。

 そこで教師が言う「ミソもクソもカレーも同じ」「白人も黒人も黄色人種も同じ」的な世界平和を説くシーンは、当時小学生だった私でも背筋が震え感動しましたね。

 そこへゲンちゃんのお父さんの危篤の知らせが! 一同病院へ走ります。

 息も絶え絶えオヤジさんは言います。

「これだけはハッキリしとくわ。パーティーの日、おめぇの友達らが、あんまりいけすかなかったんでよ、おめぇ以外に出した料理、あれは特製キーマカレーなんかじゃねぇ、ありゃあみんな父ちゃんの下痢ウンコだ」

 オヤジさん、飲食店を経営する者としてはあるまじき、決してあってはならない衝撃の告白を丸投げしたままその場で絶命。

 そこで怒濤のように訪れる第一話からの憎しみの瓦解。ガキ大将役のデブゴリラが言った

「オマエのところのカレーは、まるでウンコみたいだな」

 とゲンちゃんに意見したのは、悪ふざけでも何でもなく料理への真っ当な批判だった訳で『よく残さず喰ったな』という事案もさておき『事実関係を確認してから事起こせや』というドラマの根底に流れるテーマは、小学生でも確実に受け止められました。

 ゲンちゃん、立て続けのショックで精神がゲシュタルト崩壊を起こし、カミーユ・ビダンばりに、その場で発狂。

 アップでニッコリと笑う、ゲンちゃんの鼻の頭についてたのが店のカレーだったのか、オヤジさんのウンコだったのかは結局最後まで謎でしたよね。

 惜しむらくは「カレー屋ゲンちゃん」本放送からこっち、VHSにもDVDにもソースとして販売されていないことが、本当に致命的で残念ですよね。

 なんでもマスターテープを、糞尿にまみれた女教師の狂信的ファンだったスカトロマニアがスタジオに忍び込み勝手に持ち出して、所在不明になっているみたいです。

 関係者だけしか知らない失態です。どうかここだけの話にしといてくださいね。


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