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タラチネ興産第四工場 単独保全マニュアル

タラチネ興産第四工場 単独保全マニュアル
猪股大五郎 第四工場長(鮫島高校卒 58歳)作成
・工場内中央の柱に設置してある緊急噴霧装置のボタンを絶対に押さない事。
・緊急噴霧装置とは、万が一工場内の端に設置してある亜◯砒◯酸化ソーダが容器から流出した際、その毒性を中和する為のものであり、もし流出無く緊急噴霧させた場合、単体では毒性を持ち、数十秒で死に至ります。
・緊急噴霧装置のボタンを押さないのは当然の事、その周辺で集まったり暴れたり騒いだりしない事。
・2012年度、鮫島高校新卒推薦枠の新人が(※本社人事課註(以下略)その年の鮫島高校からは入社が一名)初日、親睦を深めたい一心で工場内中央で特技であるブレイクダンス(外国の派手な動きの踊り)を同期の前で披露中、ウィンドミルという足を大きく回転させる技の際、足が緊急噴霧装置に接触。六名の若く尊い命が失われた悲劇を二度と繰り返してはなりません(入社式の二週間後、全社員によるレクリエーションを毎年開催しますので、親睦を深める為に焦る必要は全くありません)
・金属切断面洗浄の為の亜◯砒◯酸化ソーダ使用に制限は無いが、洗浄以外の目的で使用する事は禁ずる。(2014年度 鮫島高校新卒推薦枠の新人が、亜◯砒◯酸化ソーダを個人所有の水筒に移し、男梅サワーの素【濃縮版】で割り、就業中に飲み干し、未だ意識不明の重体でタラチネ第三病院の集中治療室にて昏睡状態が続いています。ソーダと明記されてはいますが、これはコンビニや駄菓子屋等で販売されている甘味料の入った飲料では決してありません)
・就業中の飲酒は禁ずる。
・休憩中、社員食堂で週刊漫画雑誌を読む前に、本マニュアルを熟読する事(この項目に関して鮫島高校新卒枠から入社のご父兄から『休憩中のマニュアル熟読の強要はコンプライアンス的にどうなのか?』という御指摘を頂きました。ここに深くお詫び申し上げます。鮫島高校OBである工場長の長年の功績と尽力により同高校の推薦枠が毎年確保されております。後輩に向けた過ぎた親心の表れだと汲んでいただき、完全な休憩に向けて今後業務改善してまいります。この項目は定規で各自二重線で冊子から消去の事)
・緊急噴霧装置のボタンは、工場内の四箇所に設置してある赤色のランプが回転、点灯している廃液流出緊急事態時には真っ先に押すこと(2016年度鮫島高校推薦枠の新人が、絶対に押してはいけない、という工場長の言葉を守り過ぎ、液体が流出後緊急ランプが点灯したにも関わらず、緊急噴霧ボタンを押さなかった為に、八名の若く尊い命が奪われた悲劇を二度と繰り返してはなりません)。
・勤務中の喫煙、及び着火に準ずる行為の厳禁(2019年度鮫島高校推薦枠の新人が、業務中初任給で購入したジッポーライターを同僚に自慢するため、工場内中央で着火させ、隣の化学薬品吹き出し口付近で作業していた同期社員に引火・爆発。内臓が四散し即死した事件はまだ記憶に新しく、二度とこのような悲惨な事故を起こしてはなりません)。
・会社内の情報をSNS等に発信することの厳禁(爆発四散した同僚の写真をインスタで発信した2018年度鮫島高校推薦枠入社の被害者同僚社員は、即時解雇となり、現在裁判にまで発展しております)。
・信号機は赤色が危険を示すように、赤い緊急噴霧装置のボタンは平常時、押すことはおろか、触れることも厳禁(体温感知静電気センサー内蔵のため、触れたら劇薬である中和溶液を全量排出するまで停止しません)。赤いラメが施されたボタンはそれだけ危険の象徴であることを各自理解しましょう。
・以上、本年度制作のこのマニュアルを業務中は常に携帯し、朝礼にて〜安全第一第四工場 高い意識で死亡ゼロ〜のスローガンを毎朝全員で唱和し、二度と悲惨な事故を起こさないよう一丸となって取り組んで参りましょう。
2022年1月7日 第四工場長 猪股大五郎

●2022年度経過報告 10月時点現在
・労災事故(前年比マイナス8)5件 
・死亡事故(前年比マイナス2)1名

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