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J1 第2節 鹿島 vs 川崎

・前半戦

開幕節、ガンバ戦と同じフォーメーション&メンバー。ガンバは基本的に引いてボールを持たせてくれたので土居荒木をサイドハーフに起用するこのフォーメーションでもよかったと思うのだが、川崎相手に通用するかどうか。
開始2分で関川がゴール前パスミスして失点。試合前に関川が脳震盪症状だったことが明らかにされていたが、岩政コーチが起用を決定したとのこと。結果的に関川はプレイできる状態には程遠かった。
その後も立て続けに決定機を作られ、前半17分にコーナーキックから追加点を奪われる。この段階で当初プランは崩壊しており交代やフォーメーションチェンジなどの抜本的な修正が必要だと思ったが、特に修正は施されなかったように感じる。あえて言えば、中盤を飛ばして鈴木優磨にロングボールを蹴り込むようになったが、効果的ではなかった。
前半が上手くいかなかった要因は、関川の状態を除けば試合前から懸念していた土居荒木のサイドハーフ同時起用にあるのではないかと感じている。守備面ではボールを奪うだけの高強度の守備ができず、攻撃面ではサイドで局面を打開できるだけのスピード、パワーに欠ける。また、鈴木優磨への縦ポンもすぐにボールを回収しに行く走力に欠けていて迫力が出なかった。
前半は0-2で終了。可能性あるスコアで前半を終われたことだけが収穫の寂しい内容になってしまった。

・後半

後半開始と同時に関川、土居out、三竿、中村in。中盤をダイヤモンド型にする攻撃的な布陣。結果的にこれは奏功して前半よりは内容は改善したが、意図して作れた決定機は51分の樋口のみ。チームの完成度という点では完成には程遠く、今は部分がかろうじて機能しているだけ。ただ、これはチームスタイルを確立するという試みの中では必ず通る道であって、そこまで悲観していない。一番恐れていた展開は、後半もまるで修正が効かず一方的な試合展開になることだった。解説者としては一流でも現場は全く違うもので、岩政コーチがまるで策を講じることができないという最悪の事態はとりあえず避けることができて安心した。
試合はこのまま0-2の敗戦。試合後、岩政コーチは敗因を自身のマネジメントミスだと吐露した。これについては別の項で検証したい。

・スタッツ

最終的にチーム全体で120kmオーバーの走行距離が出ている点は評価できる。過密日程という影響もあるだろうが、後半最後の方は川崎の複数選手の足がつっていた。前半に戦術修正を行っていれば、運動量で圧倒的できたかもしれない。毎試合125km程度走ればついてこられるチームはJリーグには少ないのではないか。とにかく全局面で相手を圧倒するスタイルを鹿島には期待している。

前節も樋口は12km以上走っており、プレーの強度も高い。中盤の要の選手になるだろう。鈴木優磨はポストプレーで身体を張ったり、ヘディングでボールをつなぐなどの強度が求められるプレイを献身的にしているため、走行距離以上に負担感はあると思う。中盤より前は45分あたりで6km近くの走行距離が欲しいところ(1分あたりで0.13km)。走行距離が出ないのであれば、攻守で身体のぶつけ合いやスプリントに体力を使っていて欲しい。気になるところでいえば、前半の関川が5kmで、後半同じポジションに入った三竿が6km。関川が本調子ではないとはいえ、関川よりもボールを運べる三竿の方が機能していたように感じた。昨季、犬飼&町田はパスだけでなくドリブルでもボールを運べていたが、関川&ミンテはその場面が少ない。どうしても必要かと言われれば守備の方が重要だとは思うが、中盤が機能していない場面では欲しい能力ではある。


スプリント回数で13回川崎に上回られている。これはチーム戦術の浸透度や選手間の連携という問題も現時点ではあるだろう。気になる点としてはサイドバックのスプリント回数に少し差が出ているところか。安西+広瀬+常本=44に対し、山根+佐々木+登里=56。中盤の機能性が低くて、サイドバックを上手く使えていないようにも感じる。

・岩政コーチのマネジメントミスを考える

思いつくことといえば以下の三点だろう。

  1. 関川起用

  2. メンバー選考

  3. 前半の修正策

以下、個別に考察する

1.関川起用
 ファンとしては関川の体調がいいかどうかを見極めるまでもなく、失点につながるミスをして出場できる状態ではないことが判明した。試合後に、岩政コーチは自らの判断で出場させたと発言している。期待の若手CBに前年王者との試合を経験させたかったとのこと。クラブハウスでの練習には観客もおらず、音の反響などもないだろうから無事に見えた可能性もある。脳震盪の影響は見極めが難しいことから、他の競技でも最低5日など相応の期間を経過観察後、段階的に競技に復帰させるのが良いとされている。関川は19日のG大阪戦後、脳震盪の診断を受け休養。24日に練習復帰と報道されている。岩政コーチが出場させるかかなり迷ったと語っているが、状態は悪かったと推測できる。結果的に関川のミスで敗戦することとなったが、敗戦という結果よりも関川の安全が何より大事である。選手にとってはポジションを死守することが大事だろうから、無理をしてでも出場しようとするだろう。それを鹿島のメディカルチームは止めなければならなかったし、岩政コーチもメディカルチームの意見を尊重しなければいけなかった。この点に関しては、岩政コーチだけの責任ではなく、チームの責任としても重く受け止めるべきだ。今回のミスで大きな自信喪失をするかもしれない関川には、身体的だけでなく精神的なケアも必要だと思う。

2.メンバー選考
 開幕節前半最初のプレイでガンバがシュートまでスルスルと行ってしまったシーンを見て、これはよくない兆候だと思ったが、相手の退場もあって特に問題なく試合に勝利した。よくない兆候の原因は、サイドハーフに土居荒木を起用している点。トップ下としては二人とも狭い中でも前を向ける貴重な能力を持っている。ただ、サイドハーフとしては絶対的なスピードとパワーに欠け、攻守ともに不足感を感じる。今節は守備でボールを奪えず、攻撃では体格で潰されボールを受けられず、前半不調の構造的な要因になっていた。特に前線からプレスに行く場面ではトップが前から守備に行っても、サイドハーフが守備に出る場面で強度が足りないためにボールを奪えず、ゴール前まで難なくボールを運ばれるケースが散見された。
 後半開始時に土居、関川を下げて、三竿、中村を投入し、土居の位置には樋口が入った。樋口はサイドハーフとしても素晴らしく、守備でデュエルを制した上で攻撃でも効果的な働きをしていた。サイドハーフに求められるのはまさにあの働きである。最初から三竿を先発させ、土居か荒木の代わりに樋口をサイドに起用するか、和泉を起用していれば、前半45分を無駄にする必要はなかったと思う。前節、快勝だっただけにメンバーを変えづらかったかもしれないが、プランを遂行させるのが指揮官である以上は、メンバー選考というマネジメントにミスがあったと思う。


3.前半の修正策
 当初のプランが失敗したとしても、修正して再度軌道に乗せれば問題ない。しかし、前半15分には破綻していたプランをほぼそのまま45分間継続してしまった。0-2だったとはいえ、前半20分に修正を施せば残り70分間を逆転のために使える。CBとサイドハーフに困難が生じていて、特に関川についてはプレーできるような状況ではなかった。少なくとも、この交代については前半でもできたはず。この決断が遅かったのは若干疑問がある。

岩政マネジメントミスの総括
 修正策を次々打てるのが理想ではあるが、岩政コーチにとっては初のJ1監督経験なので、あまり高い理想を求めても仕方がない。本人の希望としては一足飛びに監督に就任したいだろうが、やはり数人の欧州監督のもとでチーム作りや采配を学んでもらうのが長期的には鹿島のためになると思う。

・次節に向けて

3月2日水曜日のルヴァンカップ、セレッソ戦の後、日曜日に柏レイソル戦というスケジュール。セレッソ戦でここまで出場機会の少ない選手を使って欲しい。特に鈴木優磨、樋口なしのチームがどういう状態なのかが見たい。柏戦は、ここ数年ネルシーニョのカウンター戦術に苦しんでいる印象がある。引いた相手を崩せないという鹿島の弱点をしっかりついてくる相手なのだが、今回も同じ展開になるかもしれない。柏の外国籍選手たちは強力なので注意が必要。関川は脳震盪症状から回復するだろうから期待したい。今節は痛い敗戦となったが、まだ途上のチームなので不安定な戦いぶりになることもあるだろう。私の好きなスポーツの監督が言うには、「落胆するのは向上心の裏返し」とのこと。前向きに行きたい。


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