あなた何してる人ですか?

妹を心を病んだ人が利用するデイケアに通所させようと、心療内科の主治医に相談したときに言われた言葉だ。

たいていの家族は、ふつうはそういうことを提案しても拒否する人が多くて、家族の方から相談してくることは、ほとんどないそうだ。

「私は、ケアマネで、その前は障害者施設で働いていたので、心を病んでいる利用者を何人も見てきました。妹をもう一度職場に戻してあげたいので、必要な手続きと手助けはします」

「そうなんですね、なんだか素人には見えなかったもので、分かりました。妹さんにデイケアは、選択肢としては、いいと思いますが、本人はどうおもっていますか?とドクターは妹に聞いた。

「私はもう一度保育士として働きたいです」

「それでは、復職の訓練のためにデイケアを利用する気持ちはありますか?精神障害の手帳をとることは、どう思いますか?」

「姉さんが、そういうなら、それでいいです」

「わかりました、どういうところが適しているか探してみましょう」とドクターが言った。

ああ、なんてことを言ってしまったのだろう。

母さんがそそのかすから、先生にいっちゃったじゃないのよ。

ーーよーく考えろよ、おめえの給料じゃ住宅ローンは払えねえぞ、恵子が保育士に復帰すれば、そのままそこに住んでいられるぞ。だいたい仕事しながら介護してたら共倒れだぞーー。

確かに、公務員の給料に比べたら、ケアマネの給料なんか半分以下だものね。母さんの言い分もわからなくはない。

このまま、家に引きこもらせておくのはかわいそうだよね。母さんの提案にのってみるか……。

妹に聞いた。

「あんた、精神障害者手帳申請していいの?」

「いいよ、中途半端な状態より病気だと言われた方が休んでいることに罪悪感がなくなるもん」

「そうだね、二年更新だからよくなったら返せばいいんだよ」

「うん!」妹はいつになく明るく返事をした。

妹と私の復職訓練はこんなふうに始まった。

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