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ハコノナカ

色街、飲み屋街、金の集まる場所には
怪異が溢れてる。
欲と怪異は相性が良いんだろう。

飲み屋街の一隅に風俗の店があった。
いわゆるピンサロだ。
早い時間に客引きしてる、じっさんとは
たまに飲み屋でを顔を合わす仲で
気安く声をかけてくれる。
「おーぅ、お前ぇ女足りないからバイトに来いぃ」
「嫌ぁだぁ(w」
いつも同じやりとり。 
そんなじっさんに聞いた話し。

箱の風俗はその頃だって減っていたが
彼は
「箱のほうがなぁ駆けつけて守ってやれるんだからな」
と言った。

じっさんが昔地方都市でデリヘル(派遣風俗の店)を任されてた頃
嬢が迎え呼びの電話を部屋からかけてきたから(まだ携帯は少ない時代)
車で迎えにいったら

嬢がいなかった。

ホテルの人達は挨拶してホテルの前で待つ嬢を見ていた(まだ防犯カメラはたくさんない時代)

飛んだなら迎えを頼む電話なぞしないだろう。
売れてる嬢だし他の店に流れたなら噂くらいは聴こえるはずだ。
まあでも飛んだんだろうて事で

みんなも消えた嬢なんか忘れた頃
件のホテルで、じっさんは別の女の子を降ろし
半端な待ち時間を好奇心で
ちょっと先の結婚式場の庭でライスシャワーを浴びている新郎新婦を車の中から眺めていた。
周りを囲む人々の中に
あの消えた嬢がいた。

あの日と同じ服のまま
立って新郎新婦を眺めていた。
車を脇に寄せ
慌てて嬢の側に駆け寄ったのだが
嬢はじっさんに笑いかけて
手を振りながら雲が消えるみたいに消えた。

怪訝な顔の周囲
そうだ、礼服の群れの中に
普段着の嬢なんて浮くはずだ
今ジャンパーとジーンズの自分のように。

それから何度か結婚式場の前でその嬢を見た、他の運転手も見たと。
女の子達まで見たと言い始めた
消えた嬢と仲が良かった女の子は結婚式場のホテルのフロント前に立っている嬢を見て
声をかけて手を掴んで行こうとしたら
消えたと言った。

そんなもんだからホテヘルの嬢が怖がって
次々に辞めてしまい、じっさんもオーナーに頭を下げて店をたたみ
ここへ流れて来たという。


じっさんは
「まぁだけどよ」
ハイボールを飲み干して
「生きてて欲しいな。俺に連絡くれたらすぐ迎えにいくから」

好きだったのかと聞いたら
オキニだったが色恋じゃねぇと答えた。

「ピンサロはいいぞ、暗いからチッとんべぇBBAだって大丈夫稼げるんだからな、ってさ」

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