風狼
風狼(ふうろう)とは、嵐の中から生まれる獣である。
その姿は、灰色の狼に似ている。あまりに俊敏に動くので、その姿を目視することは稀であるが、時に突風の吹き荒れる上空を、群れをなして走る姿を目撃することがある。
風狼たちは非常に残忍であり、群れ単位で動くことが知られている。
風狼たちは、普通の狼と同じく肉食性である。ただし、犠牲者の肉を喰らうというよりは、その身体を風化させ塵のようにさせてしまうという特徴がある。
よく、嵐の夜の後に家畜が忽然と姿を消すことがあるが、これは風狼たちによって風化させられてしまったのだとされている。このような現象を「風狼に喰われた」と表現し、非常に恐れるのである。
風狼と風葬の関係性については、風葬の風習がある地域において、よく語られるところである。
曰く、埋葬時の風葬においては、風狼たちは死者を喰らうことは許されていないが、処刑としての風葬が行われる際、風狼たちには罪人を喰らう権利が与えられる。
故に、処刑のために行われる風葬では、風狼たちが現れて、罪人を風化させ、喰らうのだと言われている。
ただし、この説を否定する地域も存在する。
あくまでも風狼は、嵐の中から生まれ、嵐が消えれば死ぬ存在なのだから、風葬の時に現れるわけがないと考えるのだ。
前者のように風葬の時に風狼が現れると考えるのはプラーナなど、後者のように風狼が現れないと考えるのはプラニッツなどの地域である。
風狼たちは、場合によっては眷属として従えることができると考えられている。
そのような力は風の騎士と呼ばれる者達にのみ与えられているとされている。
放浪騎士の一種である風の騎士たちは、各地で戦いが起これば、風狼たちを呼び寄せて、自分が与したい陣営の味方として戦うと言われている。
風らはプルーツカと呼ばれる風鈴を手に持っており、それを鳴らすことで、風狼たちを呼び寄せることができる。プルーツカの音は嵐の轟音に似ており、故に風狼たちはこの音の中から生み出されるのだ。
言わば、人工的に生まれた風狼たちであり、生みの親である風の騎士になつくのも当然であろう。
ただし、人の手による悲しさか、野生の風狼よりも弱く、儚い。