遺されては困るモノ 2
日記帳
老前整理のセミナーで次のような相談がありました。
70代の男性の方で、50年以上日記をつけていらっしゃいました。書ける間は続けたいので処分したくないが、何十冊もあるこの日記帳をどうすればよいかとのことでした。
まずその日記に家族に読まれて具合の悪いことは書いてないかどうかお尋ねしますと、日々のできごとだけで、人の悪口は書いてないとのこと。
もし妻や息子、その嫁の悪口、もしくは愚痴ばかりが書いてある日記帳を残されたら気持ちがよくありませんね。これは嫌がらせかと思いたくなります。
そうではないということなので、箱に入れて「日記帳」と書き、ご家族に「ここに日記帳が入れてあるから、自分が逝った後、読みたければ読んでもいいし、そうでなければ処分してくれてよい」と伝えておいてくださいと話しました。
この場合のポイントは「伝えておくこと」と「処分してもよい」と許可を出しておくことです。
なぜこのような配慮が必要かといえば、父親に日記を残された娘が、読まなければいけないという思いを抱えて、10年以上処分できないケースがあったからです。
その娘さんは、「夫の転勤のたびに、父の日記帳の詰まった箱を移動させていますが、この先どうすればいいでしょう」と相談されました。
そこでこの娘さんに、もし引っ越しのどさくさでその箱が行方不明になったとしたら、なんとしても探し出そうと思いますか、と尋ねました。
娘さんは少し考えて、「むしろホッとすると思います」と答えられました。
残されるほうの気持ちが、少しおわかりになったでしょうか。
ほかに、趣味で描いた油絵なども場所を取ります。素人の絵をもらってくれる人もいないけれど父が描いたものだから、と子どもが抱え込んで困っているケースもあります。
また膨大な量のアルバムや写真も残されたら困ります。残された家族にそれらを整理したりする時間も知識もないからです。
『定年男のための老前整理』2014年 徳間書店 より
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