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箱を捨てるな! 互いの価値観を理解

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 ものの価値観は夫婦、親子、兄弟姉妹でも違います。にもかかわらず、親しい関係だから相手のことがわかっているつもり、もしくはよかれと思って行動することがあります。
 テレビ局のカメラマンHさんは趣味でカメラを集めています。もちろん集めるだけでなく街に出て写真も撮ります。しかしこれは仕事ではありません。妻もそのことはよくわかっています。

 ある日、出張から帰ったHさんがリビングの棚を見ると、何かおかしい。じっと考えてわかりました。カメラの箱が並んでいたはずなのに、カメラが並んでいる。なぜだ? 泥棒ならカメラを持って行くだろう。

 棚の前に立ち尽くしている夫のうしろから妻が弾んだ声で声をかけました。
「ねえ、スッキリしたでしょう」
振り向いて夫が低い声で訊きます。
「箱はどうした?」
「捨てたわよ」
「冗談だろ」

 ここからの夫婦喧嘩を想像してみてください。連れ添って十年を迎える妻はなぜ夫が怒っているのかわかりません。せっかく箱を処分してカメラをきれいに並べてあげたのに、感謝されこそすれ、こぶしを握り締めて立ち尽くしている夫に戸惑っています。

 ここで夫の考えを紹介しましょう。(1)カメラを箱に入れているのは安全に保管するため。裸のカメラを並べておいて地震でも起きたらどうなるかわからないしほこりもかかる。
(2)転売する場合、箱のあるなしでは価格に大きな差がでる。下手をすると箱のないカメラは売れない可能性がある。だからこそ箱は大切にしなければならない。

 夫婦喧嘩の結果として、いくら妻を責めても捨てた箱は戻らない。夫は妻に今度こんなことをしたら離婚すると宣言しました。

 カメラの箱ぐらいで離婚なんて、と思うのはほとんど女性でしょう。男性はわかるよと共感する人が多いかもしれません。ここに男女の考え方の違いが出ます。

 Hさんと同じような例で、プラモデルが趣味の男性は同じものを二つ買って一つは組み立て、もう一つは封を開けずにしまっておくそうです。このようなコレクションをしている人は少なくありません。大切なのは、家族でもお互いの価値観には違いがあることを理解し、尊重すること。つまりHさんの妻のように勝手に処分しないことです。

転ばぬ先の「老前整理」』2016年 東京新聞より

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