80%の撲

「アリさんが100匹いたらね、真面目に働いているのはその内20匹位で、残りの80匹は巣の中でさぼっているんだって!」‥何時の事だろう。その時その子がしていたその話を初めて聞いた時、僕は確か驚愕していたと思う。僕が道端に時折その姿を望んでいたあの‥、長い長い行列を形作って、せせらぐみたいにに蛇行し、地面を流れる様に蠢いていたあの‥、あの沢山のありさん達は実は少数派で‥、真面目なアリさん達で‥。実はその何倍ものありさん達が巣の中でわらわらして、仕事をサボってねっころがったりしているんだという、‥俄かには信じ難い真実を僕は、‥やっぱり俄かには信じられなかった。
「ちなみこれはね?どんなことにも言えて、8対2の法則っていうらしいんだ」
何時の日の事だっただろうその人曰く‥、例えばその巣の中に住んでいたアリさん達の中から、働いていた、所謂働きアリさん達だけを集め別の巣に移し仮に生活を営ませたとしても、実際に働く段階となると、かつては熱心に働いていたそのアリさん達の、やはり8割りは仕事をさぼってしまい、残り2割が働きアリさんとなり巣の生活を支える事になって、‥さらにそこから働きアリさんたちを厳選したとしても、その働きアリさんたちの内8割がさぼってしまう事に何故かなってしまうらしくて‥、ずっと働き続ける働きアリさんを探し続けるとなると延々と、働きアリが少なくなってしまい行く行くは‥。
ちなみこの法則はどんな事にも、「8対2の法則」は人間に大抵に当てはまる事が多いから、そう呼ばれているらしかった。酷く漠然とした概念ではあるけれど、‥何となく「確かに‥」、と僕は思った。小中高通じて、学校で、心から楽しそうにしていた人達は「かっこいい」か、「かわいいか」か、「面白い」、そんな個性の際立った、クラスメイトの内の2割位の人達で、残り8割は僕の様に、背景みたいな役割を否応なく担う事となる存在‥。部活動に在籍していた時も、大会に出場して活躍できたのは16人中、4人だけで‥、そもそもその大会の中で「がんばった!」と言って貰える位活躍出来るのはベスト16とかベスト8の、大会全体の内2割位の選手。‥そもそもに僕はやっぱり大会に出る事も出来ず、選手になる事すら出来ない残り8割の補欠‥。その後に大学に進学して、建築学科に所属してから受講した建築設計課題の学内講評会‥、コンテストも、入賞基準は上位2割で、僕は大抵、残り8割。入賞する機会があったとしても、その中で僕は大抵残り8割。
‥何だろうこれは?‥呪いなんだろうか?僕は時折、自分の人生に「8対2」の法則を投影した時そう思う。これは、この現象は、僕の中のDNAがみんなの中で、何かで働きアリさんとして選別される事もなく、結構浅い段階で8割りになる様に、体の中の細胞の、残り80%がそう、選択しているからなのだろうか?
そもそも普段に僕の、最初の段階で少なくとも頑張ろうとはている筈の、内の細胞20%は一体、何をしているんだろう?どうして僕はこんなにも、やるせない気持ちにならなくてはならないんだろう?どうして僕は、自分の中ですら‥いやでも、もし‥、僕が何かをしている時、働いている細胞が20%なのだとしたら、‥本当の僕は、後80%分の余力を残していて‥いや、でも、その80%の僕が、全力で今に停滞しようとしているのだから‥。
とにかく80%の僕は、今日も残り20%の僕を、引っ張り続けてる。背下に広がる100%の世界で。

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