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最初の20時間 — あらゆることをサクッと学ぶ方法 | ジョシュ・カウフマン

みなさん、こんにちは。

1年前、私の人生は劇的に変化しました。妻ケルシーと私は、娘リーラを授かったのです。

親になるというのはとても素晴らしい体験です。世界が一変します。物事の優先度がひっくり返ります。それはあまりにも急で、対応しきれないこともあります。

また親としてたくさんのことを新たに学ぶ必要があります。例えば、子供にどう服を着せるかとか。これは私にとっては目新しいことでした。

私は結構イケてると思ったんですが、赤ん坊の娘にさえ、イケてないのがわかっているようです。

山ほどの学ぶ事と混乱がいっきょに押し寄せます。混乱に輪をかけたのは、妻も私も家で仕事をしていたことでした。

それぞれ自分のビジネスを持っていて、妻はヨガの先生のためのオンラインコースを作っていて、私は作家です。

私が家で働き、妻が家で働き、家には乳児がいて、私たちは必要なことをすべてしようと悪戦苦闘していましたが、忙しさに圧倒されていました。

この素晴らしい体験に突入して何週間かすると、ひどい睡眠不足に陥りました。8週目くらいのことです。そして世界中のあらゆる時代、あらゆる場所の親が抱いたであろう考えを抱くようになりました。

「自分はもう二度と再び、自由な時間なんて持てない!」

本当にそうだと言う人もいます。本当にそうであるわけではないんですが、当時は本当にそう感じられました。私にとってはすごく不安を感じることでした。

というのも、私が何より好きなのは、新しいことを学ぶことだからです。何かに興味を抱き、飛び込んでいじりまわし、試行錯誤しながら学んで、最後にはかなり上手くできるようになる。自由時間なくしては、もうそんなことできないと思ったんです。

私は勉強好きな人間で、いつも何かを学んでいたい、成長したいと思っています。それで私は図書館や本屋に行って、素早く物事を学ぶ方法に関する研究をいろいろ調べました。

たくさんの本を読み、ウェブサイトを見て、答えを探したんです。

「新しいスキルを身に付けるにはどれほどかかるか?」

私が見つけた答えがわかりますか?

10,000時間です!

聞いたことあるでしょう。何か新しいことを学び、それに上手くなるには、10,000時間かかると言うのです。それをたくさんの本やウェブサイトで繰り返し目にしました。それを見たときの私の心理がどんなだったかと言うと、

「ノー!! そんな時間はない!」

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10,000時間なんて無理です。もう新しいことなんて絶対学びはしないでしょう。死ぬまで一生でも本当でしょうか1番時間がどれくらいの長さかと言うとフルタイムの仕事を5年分に相当するんです相当長い時間です誰しも新しいことを学んだ事はありますがそんなに時間を費やした覚えはありませんよね。

どういうことなんでしょう? 何か変なことが起きているようです。研究結果と我々の経験が噛み合っていません。その後わかったのは、10,000時間というのは、専門家レベルの能力の研究から出てきたものだということです。

10,000時間の法則を最初に唱えたのはK・アンダース・エリクソンという、フロリダ州立大の教授です。そして彼が研究していたのは、プロスポーツ選手や世界的な演奏家やチェスのグランドマスターでした。ものすごく競争の激しい世界で、ものすごく優れた人たちが対象だったんです。

そういった分野で頂点にたどり着くまでの時間を調べていたんです。それで分かったのは、計画的に練習をし、必要な要素の練習を積み重ね、時間と労力をかけるほど、それが何であれ、上達していくということです。そしてそれぞれの分野で頂点にいる人たちというのは、10,000時間くらい練習を積んでいたということです。

さっき伝言ゲームの話がありましたが、起きたのはこういうことです。マルコム・グラッドウェルという作家が、2007年に『天才!成功する人々の法則』という本を書きましたが、その本の核になっていたのが、10,000時間の法則でした。

適切な方法でたくさん練習を積めば、技を極めてその分野の頂点に立てる。

もともとのメッセージ

エリクソン博士が実際に言っていたのは、ある種限られた範囲の競争の激しい分野では、頂点に立つのに10,000時間かかるということでした。

その後『天才』が出版され、ベストセラーリストの1位を3か月間独占し、10,000時間の法則がいたるところで語られるようになり、そして社会全体で伝言ゲームが始まったのです。

「競争の激しい分野の頂点に立つには10,000時間かかる」という伝言が、「何かで専門家レベルになるには10,000時間かかる」になり、それがさらに「何かを上手になるには10,000時間かかる」になり、それがさらに「何かを学ぼうと思ったら10,000時間かかる」になりました。しかし最後の「何かを学ぼうと思ったら10,000時間かかる」というのは明らかに正しくありません。

研究者が実際に言ってるのは

勉強オタクの私は、ここカルフォルニア州立大にある図書館の認知心理学の棚のところで長い時間を過ごしましたが、スキル習得に関する研究を調べているとよく目にするのがこういうグラフです。

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身体を使う運動スキルについてであれ、頭を使う知的スキルについてであれ、研究者というのは時間測定できる課題を好んで研究します。数値にできるからですね。

それで研究者は被験者に何かちょっとした作業を与えます。物を並び替えるとか何かコツを学ぶ必要があるようなことです。そして被験者がその作業を完了するまでの時間を計ります。

このグラフでわかるのは、作業を与えられたとき被験者は最初すごく時間がかかるということです。初めてやることで下手なためです。それから練習するうちにどんどん上達します。

練習の初期においては上達が非常に早いんです。ほんの少しの練習でぐっと上達することができます。ここで注意しておきたいんですが、何かのスキルを身に付けようというとき、速さというのはそんなに気にかけませんよね? 私たちに関心があるのは、どれだけ上手くなったかということです。

だからグラフの縦軸を作業所要時間からスキル熟達度に変えると、グラフがひっくり返ってかの有名な学習曲線になります。学習曲線が示しているのは、始めたばかりのときはすごく下手で、自分でもそれがわかっているということです。

しかし少しの練習でかなり上手くなります。はじめのうちはとても早く上達します。ある意味で成長が鈍化して、上達するのにずっと時間がかかるようになります。

私が知りたいのは、あの時点です。何かをやり始めてすごく下手な状態から、そこそこ上手くなるまでには、どのくらいかかるのかということです。

できるだけ短い時間で到達したい。どれくらい時間がかかるのか? 私が研究したところでは、20時間です。それだけです全くのズブの素人というところから始めまい。

どんなスキルでも構いません。外国語を学びたい? 絵を描けるをようになりたい? 火のついたチェーンソーでジャグリングできるようになりたい?

計画的で集中的な練習に20時間かけたなら、どれほど上手くなれるものか、きっと自分でも驚くでしょう。20時間というのは、じゅうぶん実行可能な時間です。1日45分で1か月です。

多少サボってもいけます。20時間やるというのはそんなに大変なことじゃありません。ただし、そのための方法があります。20時間いい加減にやってもそんなに大きな上達は期待できません。知的に練習する必要があります。効率的に練習し、20時間を可能な限り有効に投資するんです。

この方法は何にでも適用できます。第一に「スキルを分解する」ということ。正確に何ができるようになりたいか決めたら、そのスキルを細かく分解していくんです。

私たちがスキルとして考えるものの多くは、様々な異なるスキルから構成されています。スキルを細かく分解していくと、どの部分が自分の目指すことに最も効果があるか、見極めやすくなります。その部分を最初に練習するんです。重要なところから練習していけば、最小の時間で上手くなれます、

2番目は「自己修正できるだけ学ぶ」ということ。学ぼうとしていることについての情報源を、3〜5個手に入れます。本やDVDやコースやその他のものかもしれません。

ただし、それを練習を先延ばしする口実にしてはいけません。私自身やりがちなのでわかります。そのトピックの本を20冊集めて、「よし20冊を全部読破したらプログラミングの練習を始めるぞ!」

それは先延ばしに過ぎません。

実際に練習し、練習しながら自己修正していくうえで、必要なだけ学ぶんです。学習というのは間違ったときに、それと気づいてやり方を変えられるようになるためにするんです。

3番目は「練習の邪魔になるものを取り除く」こと。気を散らすもの、テレビ、インターネット、これらはすべて本腰を入れて、物事に取り組む妨げになります。少し意志力を使って練習の邪魔になるものを取り除くことで、実際に練習をする公算が高くなります。

4番目は「少なくとも20時間は練習する」こと。多くのスキルには、私が「苛立ちの壁」と呼ぶものがあります。目も当てられないほど下手で、自分でもそれがわかっている。すごくイライラさせられます。

自分が間マヌケだとは感じたくないものです。間抜けだと感じる事は、練習に取り込む妨げになります。やりたいことが何にせよ、とりあえず20時間練習すると決めることで、最初に直面する「苛立ちの壁」を越えることができ、結果が得られるだけでじゅうぶんに長く練習することになります。

この簡単なステップは、何を学ぶのにも使えます。理論について話すのは簡単ですが、実践について話すのはもっと楽しいです。

私が長い間学びたいと思っていたのは、ウクレレです。ジェイク・シマブクロのTED Talkを見た人いますか? 彼がウクレレを弾く姿は、まるでウクレレの神でした。見事なばかりです。「あれすごい! かっこいい! あの楽器を弾けるようになりたいな」と思いました。

それでこの理論を実証するために、ウクレレを20時間練習して、どういう結果になるか見てみることにしました。ウクレレを練習するために最初にしなければならないのは、ウクレレを入手することです。それで手に入れました。

まずコードをつなぎます。ただのウクレレじゃありません。エレキ・ウクレレです。いいでしょう? 何をするにせよ、最初の2時間くらいにするのは、練習に使う道具を揃えるということです。準備をするわけです。

私のウクレレの場合、弦元が張ってなくて、弦の張り方を調べる必要がありました。大事なことですよね。調律の仕方も学ぶ必要がありました。練習し始めるための準備をする方法を学ぶ必要があるんです。

練習を始める準備ができたときにやったことのひとつは、曲の弾き方を知るために、ネット上のデータベースや曲集を見ることでした。それによると、ウクレレでは一度に複数の弦を鳴らすことで、コードが弾けてかっこいい。弾き語りだってできるぜ。そして曲を見始めました。

ウクレレのコード集を持っているんですが、それにはコードが何百もあって怯みました。しかし実際の曲を見ると、同じコードばかりが繰り返し現れます。わかったのは、ウクレレも他の事と同様で、わずかな数の非常に重要なことがあり、それをしょっちゅう使うということです。

たいていの曲はコードを4つか5つしか使わないんです。その4つか5つのコードを知っていれば事足り、何百も覚えなくていいんです。

下調べをしているときに、素敵なポップソング・メドレーを見つけました。アクシス・オブ・オーサムによるものです。知っている人もいるようですね。彼らの言う所では、過去50年のポップ・ソングのかなりの部分は、4つのコードで弾けるということです。

そのコードとは、G、D、Em、Cです。4つのコードで、ポップ・ソングがみんな弾けるんです。「そいつはいい」と思いました。ポップ・ソングをみんな弾いてやろう。

それでその曲を最初に覚えることにしました。それをみなさんに披露しようと思います。いかがですか?

(曲の演奏)

これが私の好きな曲です。

ひとつ秘密を打ち明けましょう。今聞いたので、私のウクレレ練習時間の累計がちょうど20時間になりました。凄いと思いませんか?

ほとんどあらゆることが学べるんです。何を学びたいと思いますか? 何か新しいことを学ぶときに大きな障害になるのは、知力の問題でもなく、たくさんの細々としたコツを学ぶ過程でもなく、感情的なものなんです。私たちの感じる恐れです。

何か新しいことを学び始めたときに、自分が馬鹿みたいに感じられるのは、楽しいものではありません。

大きな障害は知的なものではなく、感情的なものなんです。しかしなんであれ、20時間を割り当てるなら、それは問題でなくなります。

何を学びたいと思いますか? 外国語を学びたい? 料理を学びたい? 絵の描き方を学びたい? あなたを熱くさせるもの、楽しくさせるものは何でしょう? それをやってみましょうよ。たったの20時間です。

がんばって!


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