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お金のいらない島(国)

だいぶ前に「30世帯の小さな国」というアイデアを思いつきました。今回は、そのアイデアを実現に向けて再考したものになります。町おこしの事例としては、おそらく日本初の取り組みになるでしょう。さらにその前には、長島龍人さんの「お金のいらない国」という小説(4部作)を読んで、その平和な暮らしに憧れました。

今まで見聞きしてきた地域活性化や地方移住のケースは、まず仕事をどうするかという話になります。今までと同じような給料がもらえる仕事があるか、もしくは起業するかどうか……。その次に、住居があるかどうか……。なかには何年間か住めば家がタダでもらえるとか、毎月数万円が1〜2年間支給されるという話もあります。僕は逆に、仕事がなくても、お金がなくても暮らしていける地域をつくっていきたい(提案したい)と思っています。

【ご注意ください】
現時点では、まったくの妄想です。まずは自分自身が耕作放棄地で野菜やお米をつくり、たくさん収穫できたらおすそ分けするところから始めます。また、空き家の修復も少しずつ始めて、困っている人の家の修理もお手伝いしようと思っています。

また、このページを勝手に転載して「人生に疲れたら、この島に移住してのんびり暮らしませんか?」というように紹介しているサイトがありますが、そういう主旨ではありません。この妄想プランは全国どこでも可能なので、ぜひそれぞれの地域で始めてください。

10年くらい前から、塩見直紀さんが提唱する「半農半X」というスタイルで暮らし始める人が増えています。これは、自分の食べ物を自給して生きるベースを確保し、それぞれが得意なこと(X)で現金収入を得るというものです。税金や教育・養育などに最低限のお金がかかるのはしかたないとしても、毎月の給料が30万円ないと暮らしていけないとか、家賃を10万円払っているというような状況は、やはり間違っているような気がします。とくに都会で暮らしていると、家賃を払うために働いているような面があります。

東京アーバンパーマカルチャーを主宰し、共生革命家という肩書きで活動しているソーヤー海くんがよく「自然界はギフトで成り立っている」と言います。太陽はさんさんと日差しを注いでいるけど、請求書が届くわけではありません。

もうひとり、自分自身をシェアする活動をしている坂爪圭吾くんも、そのことをわかりやすく書いています。

「等価交換」から「贈与交換」へ。ー 自分が余っているものを(それを必要としている人に)無償で差し出す。受け取った人はその経験に感動して、世の中に優しさを循環させていく。 - いばや通信
http://ibaya.hatenablog.com/entry/2014/10/21/091846

よくよく考えて見れば、自然界そのものが「贈与」で成り立っていることに気づく。太陽は何の見返りも求めずに光を注ぎ続けるし、海水浴をするのに海は入場料を徴収しないし、空気を吸うための許可を得る必要はなく、川の水を飲むのに一定の月額使用料金を払う必要もない。自然の摂理は(等価交換ではない)贈与交換の原理で成り立っていて、すべてが循環するように上手いこと出来ている。

等価交換は関係の清算であり、贈与交換は関係の継続である。例えるなら、私が仮にホテルに金を払って宿泊した場合、それは等価交換であるからホテルの従業員と人間的な交友を築くことは滅多にない。これが清算だ。逆に、周囲の人から無償で宿を提供してもらった場合、私は何も見返りを払ってはいないから「一方的な贈与を受けた」だけであり、人間関係が清算されることがない。何か恩返しを出来る機会があればそれをしたいと思うようになるし、あるいは、その人ではない別の誰かに(その人に優しくしてもらったように)優しさを循環させていきたいと思うようになる。これが関係の継続になる。

今年に入って、徳島県の南東に出羽島という小さな島があることを知りました。学生たちが主体になって「出羽島プロジェクト」という空き家活用ワークショップが始まり、2回目の3月のワークショップに参加して、島へ初訪問してきました。

明治から昭和初期にかけて建った伝統的な建物が多く、島には車が入らないため、ものすごく静かな空間が広がっていました。ひとめぼれした僕は、今までにあたためていた企画を、この島で実現したいと思うようになりました。現在、島の人口は50世帯70名で、高齢化率が80%。港の周囲にある家の3分の2が空き家になっています。

本土(牟岐町)から船で約15分、片道220円。1日6往復。徳島市までは、電車で2時間(1460円)です。ちなみに、島にはインターネットの光回線が届いています。島から東京まで、夜行バスを使えば往復1.5万円です。

そんなわけで、僕は徳島県の出羽島を拠点に「お金のいらない島(国)」(自給のための農業・漁業をベースに自分が得意なことで支えあえる地域)をつくっていきたい。幸い、出羽島には空き家がたくさんあります。すぐに住める状態ではありませんが、得意な大工技術を活かして、一軒でも多くの空き家を使えるように活動したいと思っています。 

「ギフト経済」や「贈与経済」など、新しい試みのネーミングはいろいろですが、Facebookで「シェア」という言葉が一般的になってきたこともあり、「Share Economy」という言葉を使わせてもらおうと思います(この記事を読んだ方のアイデアです)。

シェアするものは、労力や知識など「減らないもの」か、食べきれずに「腐るもの」です。つまり「自分からあふれているもの」。このあふれているもののベースに「愛」があるのが理想的。そこがギブアンドテイクの交換関係と大きく異なる部分です。

いろんな職業の人を集めて「タダでやらせる」のではなく、「自分はこれができる、したい」という人たちが自然に集まるのを想定しています。あくまでも「自分からあふれているもの」を提供するというものです。

前出の坂爪くんの「自分シェアリング」にも注目しているので、何か芯が通ったような気がします。よかったら、こちらの記事もご覧ください。
自分シェアリングのススメ
https://note.mu/tokotonstudio/n/ncf566ee3b413

以下は、将来、こんな暮らしになったらいいなという、ささやかな妄想です。近所のおすそ分けの延長で、いろんなモノやコトをおすそ分けできるといいですね(昔の暮らしはそうだったはず)。

【島民どうしはすべて無料(ギフト経済を実践)】
 無料であげるギフト経済のポイントは、
 労力や知識など「減らないもの」か、食べきれずに「腐るもの」です。
 小さい地域モデルの話なので、需要と供給のバランスを調整する必要はありますね。

例)
 野菜が余っている
 たくさん魚が釣れた
 料理をつくれる
 調味料がつくれる(味噌、醤油、塩)
 マッサージができる
 介護ができる
 大工仕事ができる
 力仕事ができる
 電気工事
 水道工事
 何かが壊れたときの補修
 井戸掘り
 衣服が縫える
 洗濯が得意
 掃除が得意
 音楽の演奏ができる
 パソコンの使い方指導、メンテナンスができる
 写真が撮れる
 デザインができる
 Webサイトがつくれる
 自然農が教えられる

【暮らしにお金がかからないことで、自分が得意な仕事ができる】
 この仕事は、島外への人に対し、“外貨”を獲得する手段にします
 上記の島民サービスも、島外へは有料で行ないます
 島外へ有料で行なっていることも、島民は無料
例)
 野菜、山菜、野草を売る
 魚を売る
 自産自消の宿、食堂をやる
 ゲストハウスを運営する
 カフェをやる
 空き家をレンタルする(ギャラリー、貸し切り宿等)
 島の幼稚園
 ニワトリ、豚、ヤギなどを飼って卵や肉やミルクを売る

誤解される人もいるようですが、「分けてもらう」のではなく、自分の持っているものを「分け与える」のであって、与えたくない人から奪う(依存する)というわけではありません。「あの島に行けばタダで暮らせるみたい」と思う怠惰な人をどう区分けするのか、その仕組みも考えておかないといけません。

この発想のベースにあるのが、四国遍路の「お接待」です。なんの見返りもなく、自分ができる範囲で人に親切にする。お遍路さんは弘法大師の生まれ変わりだとか、自分の代わりにお参りしてほしいとか、いろいろ言われていますが、つきつめると「人に親切にするのは気持ちがいい」ということだと思います。

そして四国の人に親切にされたお遍路さんたちは、接待所に置いてあるノートに「地元に戻ったら、周囲の人に親切にしたい。生涯お接待していきます」と書き記しています。坂爪くんが言っているように、親切にされた気持ちは循環していくのです。

出羽島では、漁師の後継者を募集しています。漁船や道具など、すべて無償で譲ってくれるうえ、漁のすべてを教えてくれるそうです。やる気のある人は、ぜひ島へ足を運んでください。

【島内だけでは解決できないこと】
 小学校〜の教育に関係すること(通学、費用等)
 医療(近代的なこと)
 水道
 ガス
 電話
 インターネット
 ゴミ処理

【解決できそうなこと】
 電気は家庭ごとの自家発電に
 くみ取りトイレはコンポストトイレに

全盛期の島は、山頂まで段々畑が続いていたようです。手前の下側には田んぼもあったそうです。この段々畑が放棄されているわけですが、自然農をしたい人たちにとって宝の山です。耕作放棄地を自然農で利用して、それぞれが食べるものを自給すればいいと思っていました。そのモデルとしても挑戦してみたいと思っています。

これから物件を探しますが、シェアハウスのような形で4〜6名を募り、自然農による田畑の開墾をスタートします。並行して、あと少しで崩れてしまうような廃屋を改修したいと考えています。

ちなみに出羽島には、明治から昭和初期に建てられた伝統的な建物がたくさん残っています。上の写真は明治時代の建築で、「ミセ造り」という構造が特徴です。上下分割の雨戸になっていて、下側を開くと縁台になるのです。左写真の木製の台車は、島で物を運ぶときのクルマです。かつては井戸水をこれで運んでいたようです。

これらの伝統的な建物は、町が主体になって文化財登録を進めています。こちらは国から9割の補助金が出るそうで、その活動とも連携しながら、少しずつ空き家を修復していこうと思っています。

例えば、上の写真のような廃屋を(できれば)タダで譲り受けて、材料費100万円、工賃50万円、諸費用(登記、調査設計費、資材運搬費)50万円、2か月くらいの工期で修復します。これを200万円で販売するか、月2万円の家賃で10年間住めば譲渡する(計240万円)という計画を立てています。

未来は予測できません。仮に契約で縛ったとしても、病気になるとか事故に遭うとか、さまざまな事情で島を出ることになるかもしれません。2万円×10年の家賃契約にして3年で島から出てしまった場合は、次の人は7年分の負担で家がもらえるようにします。いってみれば、これも前の住人からのギフトですね。

↑この話は、実際に島で家探しを始めたところ、実態にそぐわない気がしています。まずは「空き家バンク」を設立して、営利目的の不動産業者が入らないような取り組みが必要です。上記は島で暮らす前から空き家再生で考えていたことで、この部分について批判もいただきます。個人的には材料費を負担してもらえば、自分の人件費はなくてもいいと思っています。

少し前に「尾道空き家再生プロジェクト」を中心に、尾道を訪ねることができました。尾道の空き家をなんとかしたいというたった一人の「普通の主婦」の熱意が、やがて作業を手伝う人が現れ、空き家バンクを立ち上げ、行政と連携してNPO法人として活動しています。以下の記事もぜひご覧ください。

0円で一戸建てを譲り受けたツワモノも! “空き家”再生プロジェクトの最先端・尾道で知った 「自分の居場所はどこにでもある」|週プレNEWS
http://wpb.shueisha.co.jp/2015/05/30/48569/



同じように、以前から注目していた「プラウト経済主義」についても、あらためて学びたいと思っています。

世界各地域では1〜3万人程の市民からなる自治体が中心となり、食料、電力、医療、教育、住居、家電など生活用品はすべて自治体市民で作られ、誰もが無料で享受する。食料は各家庭に提供される四方の農家で、農薬を使わず自然の力に任せる自然農で自給自足を行う。
プラウト経済主義_bot (@P_R_Sarkar_jp) | Twitter
https://twitter.com/p_r_sarkar_jp


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