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『基礎英文のテオリア』(Z会)が出版されるまで

『基礎英文のテオリア』(Z会)前夜

青のテオリア、緑のテオリアと刊行させていただき、当初の出版の予定はこれで終わりでした。しかし、私が考えていた英語の基礎・基本についてはちゃんとまとめ切れていないという思いが日に日に強くなりました。そこで、編集担当の方と共著者の石原さんに「青のテオリアを補完する基礎編を書きたい」と伝えることにしました。自分自身で「書きたい」ということを編集者に伝えたのは『ヘミングウェイで学ぶ英文法』をいくつかの出版社に企画として相談したとき以来でした。

これまで英語を教えてきてなんだか煮え切らない気持ちを持ち続けていました。教壇に立った2年目、高校1年生のクラスで文法を教えることになりました。かつて揶揄されたOral Communication “G”です。GはGrammarの頭文字ですが、正式な教科名ではありません。学習指導要領では「英文法」を一つの科目として設置していませんが、私立学校では大学入試のために、積極的に文法を教えていました

そこで、教科書に出てくる順番で、動名詞を教え、不定詞の単元に入れば3つの用法があることを教え、分詞の単元では形容詞的用法、分詞構文を教えていました。一通り教科書を終えたところで、確認をしてみると動名詞と現在分詞の区別が付かなかったり、不定詞と動名詞がわからなくなったりする学習者が出てきました。こちらとしては「すべて教えたのに、どうして?」と学習者が何に困っていたのか、まったくわかっていませんでした。

翌年、担当替えで持ち上がることができず、高校3年生のクラスを担当することになりました。そのなかの一つに「英語演習」という科目があり、当時のセンター試験の文法、アクセント、会話問題で8割以上正解できるようにすることが目標とされていました。彼らは1年生の時に英文法の授業で文法を学んできたはずなのに、頭に入っていないことがあまりにも多くありました。

そこで、どのように自分自身が英語の文法を捉えているか授業をしながら悩んでいると、高校の時に学んだことが土台になっていることが見えてきました。私が高校1年生の時の英語の授業で「品詞」について先生が説明してくれた図がずーっと頭に残っていて、それが私の土台になっているものです。そこから、もう一度、高校3年生に限られた時間の中で文法問題を解きながら英語力を付けていくにはどうすればよいか整理し直しました。


こんな図を書いて教えてもらいました。今でも授業では使っています。

「形容詞的に名詞修飾としてはたらくものは、形容詞の他に、関係詞、不定詞(形容詞用法)、現在分詞・過去分詞(形容詞用法)、前置詞句」「副詞的に修飾語としてはたらくものは、副詞の他に、不定詞(副詞用法)、現在分詞・過去分詞(分詞節)、従属節、前置詞+名詞」というような感じで頭の中を整理することができました。

この整理の仕方をZ会の本で使うことを恩師に報告をしたときに、元々はその高校で私が入学する遙か前に英語科の先生たちが作った独自教材に由来していることを教えていただきました。

いずれにせよ、当時、自分の中で整理ができ生徒たちに伝えることができたのは、リーディングの授業をするためにあれこれ読んでいた駿台文庫から出ていた薬袋先生の『英語構文のオリエンテーション』の影響が大きかったですし、大学に就職してから、書店で目について買った代ゼミの仲本先生の『「壁」を突破する英文法完全速習講義』でこの考えが誤っていなかったことに自信をもちました。

そこで、高3の授業では連休明けから仕切り直しのつもりで、名詞修飾の見取り図を板書し、プリントでも配布し、文法項目別ではなく、形容詞、関係詞、不定詞(形容詞用法)、分詞(形容詞用法)など品詞と機能別に文法問題を整理して演習をしました。これが功を奏したかどうかはわかりませんが、一通り文法を学習してきた生徒たちにとって見れば縦割りの文法を横から見るような感じで学べたのではと思っています。おそらく予備校や塾に通っていた生徒も多いので、週3回の私の授業のおかげだとは思いませんが、授業評価でも比較的満足度が高かったと記憶しています(歴史は都合のよいように記憶の中で改ざんされているかも知れませんが)。


『基礎英文のテオリア』でも当時の板書を再現しました。

青のテオリアは文法シラバスで展開するように組み立てられています。つまり、これは文法を一から学ぶものではなく、一通り文法を学んだ方が、その知識をどのように読解に応用するのかについて示したものになっています。これは「縦割り」のようなイメージです。

この「縦割り」のテキストを補完するものとして「横からの学習」も必要だと常に思っていました。それが今回の赤のテオリアです。「青のテオリアを補完する基礎編を書きたい」という思いを実現させるために、昨年、大阪でテオリアの動画撮影をしたときに私の考えているコンセプトと伝えました。そのときも、名詞修飾の見取り図を紙に書いて、こんなコンセプトだと熱弁しました。

『基礎英文のテオリア』目次(1)
『基礎英文のテオリア』目次(2)


つまり、4つの主要な品詞と修飾構造、動詞の項構造(動詞の後ろに何がくるのか)などをメインにした赤のテオリアのコンセプトです。

構造把握の参考書には、ルールや法則を上手くまとめているものがあります。しかし、ここではそうしたルールや法則を箇条書きでまとめることをしていません学習者が自分の頭の中に「なるほど、そういうことか」とまとめ上げ、腑に落ちた瞬間に、体の中にすーっと入っていくわけです。それを一つ一つ体感してもらえるような本になっています。時にはくどい説明、同じことが何度も出てくる、でも1度出てきたらすべてが頭に入るわけではないので、多くの重複があります

テオリアの解説部分を自分自身で声に出し読んで、それを録音して、聞き直す。そんな学習もできると思っています。使い方はみなさん次第でいくらでも広がっていくはずです。

ここから石原さんと編集者を巻き込んだ駆け抜けるような執筆が始まりました。それはまたどこかで。


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