見出し画像

[ことばとこころの言語学・18]わたしたちが冷静に判断をするために心がけること

ハロー効果を逆手に取ってだまされない

大学生が就職活動の面接でしばしば自己PRをすることがあるそうです。私も学生の面接の練習を参観したことがあるのですが、そのときに、留学経験やボランティアなどの話をする学生が多くいました。それは学生なりに「よく評価してもらいたい」ということで留学やボランティアをハロー効果として使っているんだということがわかりました。しかし、ほとんどの学生が「留学」や「ボランティア」という言葉をつかうため、その言葉の持つ価値が面接会場ではだんだんと低くなっていきました。学生は「よく評価されたい」ためになんとか自分の特徴を言葉で表そうとするのですが、なかなかうまくできないようでした。

このハロー効果を逆手に取ることも私たちには必要です。初対面の人に「ハーバード大学出身です」と言われたときに「だからあなたは何ができるのだろう?虎の威を借りているルだけじゃないの?」と心で突っ込めるようになれればいいのです。そうして、その人を自分の価値基準で判断すればよいどです。

また、通販番組で有名人が出てきて「私はこれで健康を保っています」というのを見た瞬間、「あ、ハロー効果ね」と思えるようになれば一人前。制作者側の心理をきちんと読み取ることができ、自分にとってそれが本当に必要なのか冷静に判断できるようになります。

このような仕組みを知っておけば、ことばでだまされたりすることは少なくなるかもしれません。そして、ことばをうまく使えば相手の心を動かすことができる場合もありますし、知らないうちに自分の心が動かされてしまっている場合もあります。

ことばの「トリック」をきちんと理解していることで、私たちは自分の思ったとおりに相手に行動してもらったり、相手の発話の本当の意図を知ることができるのです。

わたし・・・さんの友達なんだけれど

ときどき、「わたし[ここにみんなが知っている偉い人や有名人が入ります]さんの友達」とか「このまえ[ここにみんなが知っている偉い人や有名人が入ります]と一緒に飲んだんだ」なんて言う人に出会います。そのときの私の頭の中では「へぇ〜、それが何なの?」と思いながらニコニコしてその場をやり過ごします。ときには 「すごいですね」なんて思ってもいないような返事をすると、相手が途端と饒舌になり「実は、あの人・・・なんだって」なんていうこちらが頼みもしない話をしてきます。

また、自分の意見を言いたいときに「[ここにみんなが知っている偉い人や有名人が入ります]さんが言っていたのですが」という前置きをしてから話す人もいます。そうすると、聞く側は「そうか、そんなに偉い人も言っているのなら」と思ってりして判断を鈍らせてしまいます。

こうした、自分以外の偉い人や権威を盾にして、自分の言いたいことを言う人と出会うと、「ああ、ハロー効果ね」と思うようにしましょう。そうすれば冷静に判断することができるようになります。

[練習問題]
1. 私たちの日常での会話でプロスペクト理論やハロー効果を応用すればコミュニケーションが円滑になる例を考えてみましょう。

2. 広告などのキャッチコピーには様々な工夫がなされています。どのような工夫がなされているのか、たくさんの例を挙げて分類してみましょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?