コラム『理想的な"黒子"』
『黒子』とは歌舞伎や文楽で、黒装束に黒頭巾を着用し役者の介添や舞台装置を操作する者のことを指します。「黒子」「くろこ」は共に誤用が慣用化したもので、正しくは「黒衣」読みは「くろご」というらしいです。(Wikipedia参照、読み方は僕も初めて知りましたw)
この意味から転じて、裏方に徹するもののことを指します。
ポーカーのゲームを進める上で『ディーラー』の存在はまさしくこの『黒子』に当たるのではないかと考えています。実際のカジノでも、プレイヤーがポーカーや他のゲームで遊ぶのを、ハウスが雇ったディーラーが対応するというのが基本です。業種としては、サービス業に分類される仕事だと思います。
前にお世話になっている先輩からお話しを聞いた時のことなんですが、カジノやポーカーのディーラーは、イメージとしてはホテルマンと似たような存在なのではないかと仰っておりました。お客様(カジノではプレイヤー、ホテルではゲストって呼び方をすると思います。)をもてなし、その空間で過ごす時間をより快適にできるようにする役割においては、近い存在かと考えます。違いとしては、ディーラーは、一度に複数名のプレイヤーを相手にするわけですから、『公平性』という要素がより強く入る仕事だと考えます。(特にポーカーは他のゲームと違い、プレイヤーvsプレイヤーのゲームなので)一方に肩入れする様子が見られてしまうのは、他のサービス業よりも避けるべきであると考えます。
昨今の日本において、特にアミューズメントカジノの黎明期である約10年前からある店舗だと、本来『黒子』としての立場であるディーラーに敢えてスポットライトを当てて、キャストとして扱うような形態を取っています。近い業種としては、コンセプトカフェやガールズバーのような注目の向け方をしています。この形態は、日本でアミューズメントカジノが広まるきっかけであったと同時に、日本のカジノ文化がガラパゴス的な進化を遂げている象徴の一つなのかと考えます。この考え方はアミューズメントカジノの店舗各々の『コンセプト』に関わる部分なので、外部からそれ自体の是非について述べるものではないと考えます。逆にいうと、そういう形態をとっているとはいえ、実際にお金を賭けていないアミューズメントのくくりではあるとはいえ、あくまでも『ディーラー』という仕事になるのですから、お店のコンセプトは守りつつも、ディーラーとして最低限やるべきことは存在すると考えます。
もちろん、ディーリングなど直接ゲーム進行に関わる部分は、その最低限やるべきことに該当します。経験やその方の努力次第で、スキルには差が出ると思いますが、それでも最低限ゲーム進行が出来れば大丈夫かなと考えています。(お客様の満足度や個人の評価には影響は出ると思いますが)
そうでない部分で『これどうなんだろ?』と思う点が過去に何回かありました。今回は2点について述べたいと思います。
1つは、先程述べた『公平性』という観点です。ゲーム内で直接誰かを優遇するようなことはゲーム自体を壊すことになるので言語道断ですが、ゲーム内外を問わず、ある程度のお客様が『あの人は贔屓されてる。』という感覚を持ってしまうのはポーカーにとって良くないのではないかと考えます。
もちろん、お客様としてもディーラーとしても、知った人と話す方が話しやすいでしょうし、どこまでが『接客』(お客様を立てるなどのこと。セールストークとも言えるもの)の範囲で、どこからが『贔屓』(不公平感を感じるような感情的、心情的な肩入れ)になるのかのラインは曖昧ですので、一概に良し悪しをつけるのは難しいと思います。それでも、『なるべくフラットな対応を心がける』などと、ある程度律するところはできるものだと考えています。前述したような形態だと、コンセプトカフェやガールズバーに近い形ですので、どちらかというと(ある程度公平性を保ちながらも)『個人に対する接客の特別感(贔屓されている感覚)』を出すことが売り上げを左右する要素の1つになるという形態ですので、ディーラーに強く求められる『公平性』とは対極の存在だと考えます。このバランスを取るのは本当に難しいと思います。(故にそれができている方は本当にすごいと思います)
本人もそうですが、管理側の手腕も問われる場面だと思います。
もう1つは、タイトルにもある『黒子』としての立ち位置です。
前述したように、コンセプトカフェやガールズバーに近い業態ですと、『人気商売』の側面を持っているので、自身への注目度を高くする目的で、SNSなどで発信したり、店舗における普段の立ち回りやイベントなど組んだりしていると思います。その影響からか、最近では前述のようなコンセプトではない店舗に勤務しているディーラーであっても、SNSなどを活用し、自分自身に注目を向けていくような手法が、むしろ一般的になっていると思います。他に例えるなら、Youtuberのやり方にも近いような印象を受けます。
もちろん海外のカジノやトーナメントには、『名物』とも呼べるようなディーラーやフロアがいます。普段の仕事ぶりや人柄が多くのプレイヤーや同僚たちに認められて、いつの間にか名前が知れ渡っているというのがよくある形です。その多くは、自ら発信するものではなく、周囲の評価から広まってきて有名になるという形だと考えます。
この2つの例は、似て非なるものだと考えています。最終的には『人気、知名度』という部分に繋がるものですが、一方は自らの発信で自分の価値を押し上げており、もう一方は仕事ぶりや人柄から評価を受けて周囲の発信でその人の価値を押し上げているものです。ディーラーという仕事の性質上『主役はプレイヤー』という観点は避けられないので、後者の方がカジノのスタッフとしては望ましい形なのかなと考えます。
これもまた、相反する2つの要素をどういったバランスで活用していくかという、大変難しい課題だと考えます。
本日のコラムは以上になります。
最後までご覧いただきましてありがとうございました!
それでは、良きポーカーライフを!
著:久遠光
@kuon_poker
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