「嫌い」→「好き」は、楽しい。

 嫌いだったけど、ある瞬間から急に仲良くなった人はいないだろうか?私はいる。そして、そういう人のことは、それまでの嫌いが振り子となって好きに振れるため、めちゃくちゃ好きになる。

 この現象は物語の中でも、しばしば起こる。よく練られたストーリーの中では、演出としてキャラクターを悪く見せ、あるいは悲運の過去を持った人物を悪者にして深みを持たせることがあるからだ。悪いキャラクターはしばしば、私たちが憧れているけど成れない、成れなかった属性を持っていることが多い。例えば、過度に美人やイケメンであったり、勉強ができたり、身体能力が高かったり。彼らはいい者キャラで出てきても鼻につくのに、悪キャラとして出てきたらもう格好の憎悪の的である。「なんでこんな奴が」「罰が当たれ」「ていうか脚本家糞じゃないか?」などと、怒りの任すままに作品に没頭させられてしまう。
 こんなキャラが、実はいい奴だったらどうだろうか?憎さ余って可愛さ百倍である。大好きだ!

 ストレンジャーシングスは、そんなキャラに萌えるドラマである(本当か!?)。あらすじ簡単に紹介すると、こんな感じ。ある日、アメリカの小さな町で一人の少年が失踪する。そして、その少年を救出すべく親友の仲良し少年3人が奮闘。超能力あり、怪物ありの現代SFボーイミーツガール。主となる少年3人はどの子のもキャラが立っていて、でも素直に感情移入ができるキャラクター、話もまとまっており、サクッと楽しめるドラマである。ちなみに、本文章の前半、「悪者がいい奴だったら好きになっちゃうよね」という部分がネタバレではないかという疑惑をお持ちかもしれないが、安心してほしい。この話は、ストレンジャーシングスの本筋とはあまり関係がない。サブキャラのお話なのだ。

 ストレンジャーシングスは、キャラクターの初登場時にうざい感じが出ていることが多い。なかでもナンシーがうざいのである。ナンシーは、主人公の姉で、容姿端麗な上に学校一の秀才でもある。そんなナンシーは、弟の親友で、自分もよく顔を合わせていた少年が行方不明になり、町ぐるみの捜索をしているというのに、気にする素振りがなく、ともすれば気になる相手スティーブの家へ行く口実にするくずっぷりなのである。また相手のスティーブも親が経営者のボンボンイケメンイケメン不良でいけ好かない。こんな二人がいちゃいちゃしているシーンがシーズン1の前半では頻発するため、非常に胸糞がわるい。もはや、怪物とかどうでもいいからこいつらが不幸になれという一心である。

 しかし、この二人を現在公開されているシーズン2の終わりにかけて、徐々に好きになっていってしまうのだ。二人ともいい奴なのである。特にシーズン2の最終話は、この二人のためにあったのではないかと感じるくらい萌えてしまう。スティーブはボンボンイケメンイケメン不良だが友達になれる気がする。むしろもう、親友である。大好きだ!

 本当は、この変化の過程を紹介していきたかったが、ネタバレになってしまうのでここでは控える。

 嫌いだった人を好きになる過程には、大きな感情の揺らぎが必要だ。そして、感情の揺らぎは楽しい。ストレンジャーシングスは、この揺らぎが味わえる作品だ。また、来月からはシーズン3が始まる。またあの面子に合えると思うと、とても楽しみだ。

 ちなみに逆パターン「好き」→「嫌い」が楽しいコンテンツとしては、バチェラーが熱い。

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