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ナポリ人と暮らしてみれば

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大阪でナポリ料理レストランを営む僕のパートナーのモニちゃんとその父エンツォはナポリが故郷。ナポリに縁もゆかりもない僕がナポリに長期滞在してナポリ人と暮らしてみた率直な感想を淡々と…
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#セリエA

【はじめに】ナポリ帰省・前日譚

「イタリア人にタイチみたいな髪型の人はいない!」エンツォは僕の髪型を見てそう断言した。僕はハハハと受け流しながら、肩の下まで伸びた髪を頭上で結んで、エンツォが作ってくれた白インゲン豆のパスタをスプーンですくってハフっと頬張った。 エンツォが主語を「イタリア人」にして話すときは脳内で「“ナポリに住む”イタリア人」に変換しなくてはいけない。彼にとっては地元のナポリこそ真のイタリアなのである。 同じく白インゲン豆のパスタを食べた僕のパートナーのモニカ(以下、モニちゃん)はエンツ

さびれた映画館とバルが50~60軒だけのナポリの下町で人々が娯楽にしていること

モニちゃんの親戚たちの多くが住むナポリの下町フオリグロッタには、ほとんど娯楽がない。少なくとも僕はそう感じる。あるのは、さびれた映画館とバルが50〜60軒といったところである。 浜田省吾の『MONEY』の歌詞みたいな表現になってしまったが、本当にそうなのだ。MONEYであればこのあと「ハイスクール出た奴等は次の朝バッグをかかえて出ていく」わけだが、フオリグロッタには若者も多く活気もある。 フオリグロッタをご存じの方であれば、ここまで読んで「おいおい、フオリグロッタ最大の娯