ディスクロニアEp1~3の感想

キャラクター性重視、関係性オタク寄りの人間の感想です。
批判的な内容を数多く含みます。ご注意ください。
多大なネタバレを含みます。未プレイの方の閲覧はご遠慮ください。

Ep3の重大なネタバレを含みます。未プレイの方の閲覧は重ね重ねご遠慮ください。

MyDearest様よりディスクロニアEp.3が配信され、ついに完結。
その感想を語りたく書きました。

重ね重ね、批判的な内容を多く含みます。ご注意ください。




■魅力的な面

○Ep1感想で書いたところ

○Ep2で手を振り返してくれるシステリアがかわいい

VR AVGでやりたかったことはこれだよこれ!!!!ってぐらいには助かるとても魅力的な要素でした。
自分の挙動に対して反応を示してくれる「キャラクターとのコミュニケーション」はLast Labyrinthオノゴロ物語が先んじて行っていましたが、それに近い体験を得ることができました。
やっぱりこういうのがあるとVR体験としての没入感を得られますね。

○Ep3のEDが良い

某キャラの心情を考えてると少し感情揺さぶられたぐらいにはクるEDになっていて良かったですね。
終わり際にCROSS MY HEARTが一瞬出るところも。

○(目次隠し用)

■惜しい面

◇コミュニケーション不足によって成り立つ展開

会話しない・会話を打ち切る・語り切らない・何らかの要素によって打ち切られる……といったことで発生した情報・伝達不足により物語を進ませる展開が多々あります。
もっと話す機会があれば、もう少し語れば……という場面が多すぎで、コミュニケーションが全体的にグダグダでした。
古臭い展開です。15年ぐらい前ならまぁよくあった感じ。
引き延ばしと思うような程ではありませんが、この要素を廃せばもっとテンポよくスムースに話進んだよねと思ってしまうぐらいには無駄な周り道をしています。
アルトデウスのように各々のキャラの感情や動機と絡むならそういった周り道は大いに有りなのですがそうでもない。

◇会話のテンポが悪い

Ep1の記事でも書きましたが、Ep2以降は特にきつい。
会話会話の間が有り過ぎる。仕方ない部分なんだろうなとは思いつつも、Ep1よりもきつくかなりしんどい。
スキップか何かしらが欲しい。無いのは仕方ないとはわかってるとはいえ。

Ep3においてはパズルのヒントの会話が多く挟まれるが、その会話も、これ最後の一言二言削っても問題無いんじゃない……?という無駄な会話が多々有り、そこでもテンポが悪くなっている。

◇Ep3のアクションパートのテンポが悪い、パート自体が余計

過去体験でのアクションパートの操作で失敗したら逐一テンポの悪い会話を挟んで最初まで戻されるのは本当にきつい。
せめて二回目以降は出来る限り会話を削って欲しかった。少々は削られてはいるけども全然足りない。

そもそもアクションパートがこんなに必要だったか疑問に残ります。
私がディスクロニアのアクションに欲しかったのは、アイリとのステルスパートみたいなのや、OPであった物を投げて意識を逸らすようなインタラクティブさです。即死トラップの合間を潜り抜けるイライラ棒的アクションではありません

◇ボイスの使い回しが多い

コストその他を考えると仕方ない部分である。がAVGと考えれば当然残念と思うところでもある。
そのイントネーションをこの場面で使わんでくれって思う場面が多々多々多々ある。
低予算の完全フルボイスゲームならまぁそうだよねとも思うが、ボイスが乗らないテキストのみの発言も少なく存在する厳密にはフルボイスではないゲームでコレというのが中途半端。ボイス使わなければ違和感無い箇所で無理に汎用ボイスを使っているため不自然さを生んでしまっている。

◇主人公ハルのキャラが薄い、人間性が薄い

Ep1で抱いていたキャラの薄さは最後まで解消されませんでした。
Ep3の最後の展開も、ハルのキャラが弱かったために感情移入が全然できませんでした。これがクロエやノアぐらいに強いキャラだったなら滅茶苦茶に泣いてたと思います。残念ながらただただ淡々に流れを見るだけになってしまいました。マイアやソニアを慮ることで漸く少し感情を揺さぶられるという程度です。
ハルが本当に中心のストーリーなのに最も感情移入できないキャラというのが本当に致命的。このストーリーじゃなけりゃまぁ良いんだけど。

このストーリーだと相当量の日常パ―トでもあるか、相当な衝突が誰かとあったりとか、自己同一性で大きく苦しむとか等々の何かが無いとキャラが濃くならないんですよね。後者二つは捻じ込める場面がいくらでもあっただけにその全てが無かったのは謎

キャラの濃い薄いはともかくとしても、ハル自体に人間性が薄いのも問題。
他キャラとの関係性を築いたのは過去のハルで、現在のハルはプレイヤー視点で何一つ積み重ねてきた物がありません。そして現在のハルが記憶が無く行動も感情も尽く場当たり的なせいで、過去のハルとの連続性をまるで見出せない。だから過去のハルの積み重ねてきたモノで周りのキャラが現在のハルと親しくなる・親しくてもプレイヤー視点だと理解ができない。更にはそういった関係性を否定とか葛藤とか何一つ無く受け入れるハルの精神性が完全に鉄で狂気的。自己同一性の怪物か?
ハルの能力は過去の体験であって、過去の記憶を実際に取り戻しているわけではありません。過去のハルはハル視点だとどこまでいっても他人です。記憶喪失系に必要なそういった面を納得させようとする説明……どころか、そこで躓く要素や展開自体が本当に無い。
Ep3まで通して、記憶無い上に例の能力持ちで精神的支柱になる相手すらいないのに自身がハルであることに全然揺らぎません。どころかこの状況で精神的支柱を求めようともしていない、自分に何も無いままに自分を確立している男。バケモン

そんな男によるラストのシーン。アルトデウスで銃口を向け引き金を引く重みに比べて、ディスクロニアで針を回すこの軽さはなんだと。

テンポ重視と言えば聞こえは良いですが、悪く言えばキャラの放棄です。

ハルの立ち位置を自分に置き換えると、エレインや監察官の立場に依存するし、ソニアの情報には執着するし、マイアには固執するか逆に露骨に距離置こうとするし、ノエルやケイスとの会話ではまともな精神状態でいられませんし、アイリとはもう。
地雷原しかない。

◇そもそも一人を除いて全員のキャラが薄い

ストイックさも行動力も無い。熱量が無い

私が好きなキャラクターは東京クロノスで言うなら桃野夕ロウでアルトデウスで言うなら全員なんですけど、彼ら彼女らのような何が何でも目的を達成してみせるというのを説得させてくれる行動力や意志が、ディスクロニアのキャラクターにはまるで感じられない。
ソニアぐらいしか居ない。
強いて言うならマイアもなんですけど、ゲーム内描写だと仕方ないとはいえ基本寝てるせいで見た目の説得力が足りてないんですよね。システリアの時はソニアと比較しちゃうせいで弱くなっちゃうし。

全員描写が足りていません。上記のコミュニケーション不足的な会話も相まって衝突が全然無いので意志の説得力が皆無。

何はともあれハルのキャラが濃ければ間接的にそれに関わるキャラも濃くなるので、やっぱりハルが薄いのが最もな原因だと思います。

◇Ep3におけるアッシュとケイスの扱い

嘘だろと思うぐらいには出番が無い。

◇Ep3におけるリリィの最終盤の展開

例の展開がその前後において必要な要素でも無かっただけにとってつけた感が拭えなさ過ぎる。この展開になるならもう一つぐらい理由付けとか後押し的な何かがあって欲しかった。
ついでに言うと、この展開が合間に挟まってしまったことでソニアに対する印象が薄れてしまっている。ぶっちゃけてしまうと余計

そもそもベータがいきなりそうしてきた理由も無いし。
命令側が消えたならシンプルに停止するのでは?

何よりも、このシーンの入りが暗転で、暗転明けに目の前にベータが居たのが致命的にダメだった。このシーンをやるならシームレスに入るか、最低でもベータは視界外に居なければならなかった。初心に帰ってくれ。
VRならこのシーンは、誰かの発声によってプレイヤーが自分で周囲を見渡して気づくような、焦燥感と緊張感を生み出す視点が絶対に必要だった

東京クロノスの最初のシーンを思い出して欲しかった。Ep1のラストでも良い。今までを経てこれはマジで今まで培ってきた物を見失っている

◇VRならではの演出・動作がシリーズ全体と比較してEp3は弱い

前述のリリィのシーンに限らず、Ep3は特にVRならではの演出が少なかった。やっていたはずなのに、出来る技術と発想はあるはずなのに。今までやれていたはずのMyDearest様ならではの演出が無かったというのは本当に、本当に残念だった。

Ep1の段階ではAVGで、アルトデウスよりもインタラクティブさを感じられたし、印象も良く、Ep2以降への期待もあった。しかしEp3を通して全体を思い返すと、アルトデウスよりも印象が薄かった。
VRという要素を使ったパズルやアクション、操作はある。が、実質的に数が多いだけになっている。
必要動作に対してプレイヤーの心情が繋がっていない。そういった動作への気持ちの引き込みがアルトデウスよりも劣っている。

◇Ep3が案の定の展開

Ep2から想像できる通りの展開でそのままに進む。
Ep2から消去法で考えると展開が読めてしまうんですよね。
情報が足りているキャラと足りていないキャラ。その上で動機付け出来るキャラ。それに必要な展開と今までの展開、目的。それを踏まえてしまうと手
段以外はまぁそうなるなと。

Ep1時点でももうだいぶ怪しかったもののEp2時点で順当に行ったらラスボスはソニアです。あとは明らかに情報量が足りてないエレインがソニアなのか、それともソニテリア完全体となるか素直に新たに登場するのか、リリィかマイアを乗っ取れる位置取りしてるか、一部ベータに浸蝕してるとか辺りに帰着します。
Ep2ラストでマイアの線が殆ど薄れてしまってるのでほぼほぼ全部ソニアというのが透けているのが勿体ない。最低でもEp2ラストの虐殺はEp3に投げてしまった方が良かったように思います。

ミスリードを期待していたんですけどそれも無く。ミスリードするには伏線足りてないのでミスリードだったらそれはそれで残念になりますが。

東京クロノスも展開が見える物語でしたが別にそれ自体は悪いことではありません。王道には王道たる魅力があります。
ただその魅力を支えるものはキャラや物語の魅力です。前述の通りそれが足りていませんでした。
残念ながらアルトデウスや東京クロノスどちらにも届かない展開と物語だと思います。

◇Ep3に審問パートが無い

このゲームの魅力の一つじゃなかったんか……?
無理やりに捻じ込んででもあった方が良かっただろうに。

◇BGM、曲が弱い

今作はBGMの印象が薄い。
良い曲ではあるんです。が、こういう目的の場面にはこの曲を流す、で終わっているため印象が薄い。捜査パートには捜査パート、アクションパートにはアクションパート。状況にどんなに差があっても曲の緊張感一定。
アルトデウスに比べると各段に印象が劣っています。
単体の曲印象で言うと、拡張夢のBGMは良いんですよ。でもここゲーム本筋に関わんないんですよ。
審問パートのBGMも良いんですよ。でもEp2での当パートは自体に大して魅力が無いし、Ep3に至ってはパート自体無いんですよ。なんでや。
私はゲームのサントラはとりあえず買っとこってぐらいには手が早い人間なのですが、良曲だったけど別にサントラ買いたいと思わないなぐらいには印象が無い。
当時のクラファンもBGM目的でサントラ付きのを選んだんですけど、これなら選ばなくても良かったなと思うぐらいには。
7daysは別アルバムですしね。MEMENTは欲しいなってぐらい。

◇Switch版のみにオリジナルストーリー追加、情報公開のタイミング

……なぜこのVR配信開始のタイミングでこの情報を……?
せめてSwitch版が出る直前まで、せめてもう一か月は待って公開するとかできなかったんですか……?
誰にも好意的には受け取られないタイミング、話題性維持という面でも時期外れの情報公開でした。

記事自体、割と最低なこと言われてると思うけどなんでこれそのまま記事にされてんだ、通してしまったんだという話でもある。
東京クロノス……のクラファンの時点では私は追えてなかったですが、アルトデウスのクラファンから参加して、ディスクロニアのクラファンに参加して、経過を眺めていた私としては、イザナミゲームズのこの言動を見たらSwitch版は買えません。

■Ep3まで通して抱いたこと

惜しいと思う場面は多々ありますが、最も惜しむらくはキャラの薄さです。
ハルのキャラの薄さが全てにおいての感情移入を遠ざけています。

Ep1で抱いた魅力的な面は確かに存在しており、VR AVGとしては東京クロノスやアルトデウスよりもオススメできる作品であるのは間違いありません。クロノスシリーズで初めての方にオススメする作品であればディスクロニアを挙げます。
ですが最も魅力的な作品はシリーズ中どれかとなれば絶対にアルトデウスを挙げます。次点でも東京クロノスです。

ディスクロニアはシリーズ中で最もオススメできる作品ではありますが、最も個性の無い、薄い作品だと感じました。

■ディスクロニアという作品は、

VR AVGとして技術的にも表現的にも最高峰であり、それを最大限に生かすシナリオが保証されている、最も優れた作品の一つ。
表現や演出に対する序盤のインパクトや惹き込みが素晴らしい。
VRで得られる体験で確実に感動させてくれる作品であり誰にでも勧められる。

人物に対するインパクトや魅力が弱い。
キャラ性重視、関係性オタクとしては内容が満足いくものではない。
個人的にはストーリーやキャラ性は東京クロノス、アルトデウスの方が優れている。

◆ぶっちゃけ

シナリオの本筋は良かったと思うんですよね。
それを彩るキャラ付けやシナリオ補完が尽く尽く省略されてます。
キャラ付けさえできればいくらでもより濃い展開にできたのは想像できますしね。

つまるところ省略せざるを得なかっただろう容量とか納期の問題なのかなーって。
Quest2の限界を感じました。Quest3頑張ってくれ。