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ページをめくるような旅を

こんばんは。スロウ編集部 たつたかんなです。今日は、7月に行ってきた「産地のおいしさに出合う旅」の思い出をまとめたいなと思いまして、この記事を書いています。写真多めにお届けしますね。※当ツアーは、マスク着用・除菌等の対策をとりながら実施したものです。

旅の目的地は、小さなまち。
上川管内にある、幌加内町と当麻町。どちらも決して大きな町でも、いわゆる観光地でもありません。参加者の皆さんも、「名前は知っている、通り過ぎたことはあるけれど、行ったことはない」という人がほとんど。いつもの通過点を、目的地にする。早速ですがそこに一つ、みんなで旅することの意味があるんじゃないかなと思っています。

さて今回、この季節に上川へ向かう旅を企画したのは、どうしても皆さんと一緒に、蕎麦の花畑を見たかったからです。

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「幌加内は蕎麦のまち」だということも蕎麦の花の存在も、もちろん知ってはいましたが、昨年の7月に幌加内を訪れてびっくりしたんです。ほんとうに町中が、蕎麦の花でまっしろで。近づいてみたら、あまりにも可愛らしい花で。また同じ季節、この景色が見られるのを心待ちにしていました。

幌加内は、真冬に3mもの雪が積もることもある豪雪地帯。町中が蕎麦の花で真っ白になる初夏と、深い深い雪に覆われる冬。地元には、「幌加内には二度雪が降る」という言葉があるのだとか。

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そんな私たちを快く受け入れてくださったのが、地元で生まれ育ち、そば農家として暮らしながら、1995年に廃線を迎えた深名線の駅・沼牛駅の保存に携わってきた坂本さんです(写真左)。私たちと坂本さんの出会いは、スロウ60号(この号の表紙にもなりました!)。この日は、「ちょっと暑いけどね、表紙と同じ作業服を着てきました」と迎えてくれました。

駅舎で過ごした子どもの頃の思い出と、守り繫いできた20年ほどの日々。ツアー当日は、坂本さんの思いに耳を傾けた後、駅舎で手打ちそばをいただきました。「皆さんに幌加内のそばの味を知ってもらいたくて、4種食べ比べでご用意しました!おかわりもたくさんありますからね」。その言葉を素直に受け止めて、みんなでお腹いっぱい蕎麦をいただきました。

沼牛駅でのこと、まだまだ書き足りませんが、このままだと何文字書いても終わらないので、次の目的地、朱鞠内湖(幌加内町)へ向かいましょう。

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そうなんです、船に乗りました。元々は湖畔をお散歩しようと考えていたのですが、宿の方が「せっかくなら湖上に出てみてください」とすすめてくださいました。企画当初は行程になかった部分ですが、この時間がなんだか印象的で、心に残っています。

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船の上で珈琲を淹れていただいたのですが(これがとびきりおいしかった!)、雲が少しずつ晴れて、夕日がきらきら湖面に映って、ゆっくり時間が流れて。そんな時、ふと気づいたら皆さんが、関西から移住してきたというガイドさんと会話を楽しんでいたんです。

「どうして北海道に来たの?」
「高校生の時に、雑誌をみて憧れて…」
「わかるわかる、北海道の景色ってね、いいよね」

北海道に移り住んだ人、ここで生まれ育った人、初めて出会った人たち。みんなが一艘の船に揺られて珈琲片手に、北海道での暮らしを何気なく話す時間。なんだか、こういう時間って豊かだなぁ…と感じました。皆さんが笑うその横で、私はこっそりじーんとしていたのですが、その気持ちは心の中にしまって置こうと思います。

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静かな夜が明けて、2日目は当麻町へと向かいました。当麻をこよなく愛する案内人・石黒さんと一緒に、まず訪れたのは、野花が咲く農園、のんの畑。川端さんは農薬を使わず、土も起こさず、おいし~いトマトを育てています。「人生で食べたトマトの中で一番おいしい」という声もあり、川端さんもうれしそう。

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あんなことやこんなこと、笑ってお話しましたね。

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続いては、町内で代々続く米農家・長谷川農園へ。圃場や乾燥室を見学した後、精米の様子を見せてくれます。精米したてのお米はお土産としてプレゼント。「精米したてなら、研がずに炊いてもおいしいですよ!」の声に、「えっ、帰ったらやってみよう」と皆さん興味津々でした。

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トマトとお米をもらったら、町内のキャンプ場にてお昼ごはんです。トマトスープと炊き立てのお米で、幸せなランチタイムを過ごします。食後には、湧き水で淹れてもらった珈琲でひと息。「外でごはん食べるの久しぶり!」とのうれしそうな声も響きました。

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ハンモックに揺られて、思い思いに過ごすひとコマも。

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当麻の案内人・石黒さんは何度か取材させてもらっているのですが、いつも本当に楽しそうに、当麻で年中アウトドアを楽しんでいる様子を教えてくれるんです(写真はスロウな旅北海道より)。アクティブなだけじゃなくて、地元の素材を楽しんだり、とことんゆっくりしたり。そんな、時間を楽しむアウトドア。のんの畑さんも、長谷川さんも、お昼まで一緒に過ごしてくれました。

石黒さんに季節のアウトドアを教えてもらった号です。

すっかり長くなってしましたが、ツアーのレポートは以上です。読んでくださった皆さん、ありがとうございます!最後に少し、私が思ったことを書きます。その前に、皆さんからいただいた感想の一部をご紹介します。

・一過性じゃない(その後も顔を覚えてもらえるような)、地元の人との交流ができてうれしい
・なかなか体験できない時間(外でのコーヒーやハンモック)が過ごせた
・特産品や地域の人、一つの町の魅力をじっくり知れて良かった

宿泊型のスロウなツアー、実は今回で2回目なのですが、半分以上の方がリピーターのお客様です。規模としては、個人旅行以上・団体旅行未満というイメージでしょうか。去年も今年も、「また来年!」と手を振って帰路につく皆さんの姿が心に残っています。

みんなで過ごすこと
行きたい場所、道、楽しむ方法、旅にまつわる情報を簡単にたくさん知ることができる時代。一人でも、二人でも、ほんのちょっとの行動力があれば、どこへだって行けますし、そこにはきっと、新しい発見や素敵な時間が待っています。私自身、一人で遠くに出かけることがとても好きです。

そんな今、行程の決まっているツアーに参加するということ。それは、少し大げさかもしれませんが、世界を広げるようなことではないでしょうか。たとえば、ページをめくる時。別の特集に惹かれて手にとった本をパラパラめくっていた時、思いがけないところで「あれ、面白いな」って、手が止まったことはありませんか?目的だったところとは少し別の場所に、興味が広がる。その瞬間、その人の世界が小さく広がっていると思うんです。

一人なら、目的地にならなかったかもしれない場所へ、ページをめくるような旅を。皆さんとお話したり、皆さんが笑う姿をみて、スロウなツアーが、そのきっかけになれたらいいなと考えていました。今回ご参加いただいた皆さん、ご協力いただいた幌加内町、当麻町の皆さん、本当にありがとうございました。

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ツアー中のたつたより(添乗員なのにすみません)。

ツアーの様子を動画にまとめています(なんと7分のやや長編です)。

うれしい投稿をいただきました。Twitterは#上川おいしい旅で、投稿してます!

それでは、またどこかでお会いしましょう。

写真/湯川大輔 文/立田栞那



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