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GOOD BAD MAN

アメリカには「GOOD BAD MAN」なる物語のジャンルがある。筋は簡単、どこからともなく現れた男が、揉め事を解消してくれ、束の間の安らぎをもたらしてくれる。元はジャガイモ飢饉で祖国を追われアメリカに移住したアイルランド人の間で流行したバラッド(物語歌)だという。過酷で貧困な移民生活を忘れさせてくれるひとときの夢といったところだろう。

男からすれば、流れさすらい別天地に辿り着く願望、女からすれば、困窮から救ってくれて、ひょっとしたら別天地に連れて行ってくれる男が現れるという願望、そんな願望を刺激してくれる「GOOD BAD MAN」ものは人気が広がり、歌から芝居やがて映画へと山ほど作られていく。

そんな「GOOD BAD MAN」のバリエーションの一つに猿芝居があった。南北戦争前後の頃、ミンストレルショーと呼ばれる旅芸人の一座の中に猿を使って芝居をする一行がいた。登場人物は一人を除いて全員猿が演じる。

演目のパターンは決まっている。ある町に一人の男が流れてくる。男と言っても猿なんだが、そこで偶然昔の恋人に出会う。彼女は、と言っても猿なんだが、町で人気のダンサーだ。再会した二人はいいムードになる。だがしかし、町には悪い奴がいて、彼女を我が物にせんと拐ってしまう。流れ者の男は敢然と立ち上がり、悪い奴と対戦する。この悪い奴を演じるのが唯一の人間で、多分猿回しなんだろうと推測できるが、ヒールが物語を回していく、というのはなんとなく納得だ。格闘の末、流れ者が勝利し、大団円となる。そして再び流れ者は町を後にして去っていく。

とまあ他愛ない話なんだが、どっかで似たような話があったと気付いた。「ストリート・オブ・ファイア」と一緒じゃん。

そういえばウィリアム・デフォーは猿顔。

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