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自閉症スペクトラムからみた車の免許習得までの困難と対策|⑧

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この記事は僕が寄稿し、メンヘラjpより公開された『自閉症スペクトラムの僕が運転免許を習得した話』という記事を改めて編集したものです。詳しくは『メンヘラ.jpに投稿した記事をアーカイブする』を参考にしてください
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普通自動車の運転免許を習得しました。けっこう大変だったのですが、なんとかなって「なんとかなるもんだなぁ」とか思っています。勢いって大事ですね。

運転免許証というもの、現代人には必須の資格と言っていいほどに万能なものです。けれどもその万能さを理解していたとしても、運転免許を習得する過程を想像すると「不安だ」と思う自閉症スペクトラム(僕が自閉症スペクトラムですのでそうした書き方をしています)も多いと思います。

今回、自閉症スペクトラム持ちの僕が運転免許を取りに行って思ったこと感じたこと気をつけたらいいだろうことなどざっと書いていこうと思います。

運転の適正

まずはじめに書いておきたいことなのですが、車の運転には「向いている人」と「向いていない人」が存在します。

そして僕は「自閉症スペクトラムは運転に向いていない(これは偏見です)」と思っています。

理由は大きく3つ

1.動作性が甘い場合とっさの判断に対応できない
言語より動作が甘い人間は、とっさの時に「わかっていても反応できない」という出来事が一般より起こリやすいと思います。頭でわかっていても身体が追いつかず躱せれないというのは、色んな場面において致命的なことになりかねません。まぁ、逆に動作性がある人は問題ない話かもしれませんが。

2.常に周囲に気を使わなければならないのが難しい
車は動いています。この速い動きに合わせて周りを確認しながら適切な対応を常にしなくてはなりません。つまりこれは「絶え間なく起こる」「動いている対象」に対して「まんべんなく注意しながら」「適切な判断」を「場合によっては並列して」行わなければならないということです。説明がなくても、文章だけで難しさが伝わっていると思います。

3.ぼんやりとしてはいけない
ふとぼんやりしてしまう人は注意した方がいいです。車は高速で動いていますから、ぼんやりとした空白の間に大事故を起こしてしまうなんてこともあるかもしれません。文章にしてみたら「そんなのわかってる」と思うかもしれませんがしかし、運転しているとわかるのですが、流れてくる光景があまりに魅力的ですから、目を奪われてつい色々考えたりしてしまう事も稀によくありそうだと思いました。

他にも向いてない特徴はたくさんあり、僕らに関係してそうなものは「落ち込みやすい人(落ち込むと運転能力が落ちるらしい)」「薬を飲んでいる人(運転中眠くなったら困る)」「周りに合わせれない人(車の流れに沿った運転を心がけなければならない)」「ルールに厳しい人(路上では交通マナーを守らない人が多くイライラしてしまうため)」など、もうなんというか「無理なのでは?」と、車の運転知識を習得するたびに痛感してましたね……。

ここまで「向いてない特徴」をつらつら書いてきましたが、これは大なり小なり誰もが(健常者だろうが)要素を持っていると思います。実際に運転で事故るのはそうった「特徴」の他に「その日のメンタル」「目の疲れ」「睡眠不足」などの要素も含み、さらには「その日の天候」もありますから、「向いてる」「向いてない」の話は一概に言えません。

知識を持ち、注意をして、慎重に運転すればいいと思います。天候が悪い日は運転控えればいいし、調子悪いときだって控えればいいです。

「自閉症スペクトラムは運転に向いてない」など書いてますが、むしろ向いている自閉症スペクトラム(「運転パターンが完成している」「寡黙だが運転技能が抜群」「車がめっちゃ好き」など)もけっこういると個人的に思います。そこらへんは人それぞれです。

入校から初日まで

さて前置きが長くなりましたが、「運転免許を取りに行こう」と思ったらまず自動車学校に行ってください。

あまり難しいことを考えなくても自動車学校に行って「入校したいのですが」的なことを言えば、たぶん受付の人が詳しく説明してくれます。それでも不安な人は自動車学校に行く前に、学校の連絡先に電話して確認(いつ向かえばいいのかなど)してから向かうのがいいかもしれません。

説明を受けて「よし入校します!」となったら、次に入校前の打ち合わせを行います。この打ち合わせは自動車学校に行かなけばなりません。ここで視力検査や色彩検査などを行ったり、どんなプランで受講するのかも話しますからね。おそらくですが、ここでどんな人が入学するのかの面接も兼ねてるのだと思います。

入校コースプランの話ですが、個人的には(就職など特別な理由がない限り)ATを勧めます。「男は黙ってMT」なんて話も聞きますが、運転免許とれるかどうか自信がない人がMTを選ぶのは、ゲームの初見でハードモードを選択するようなものだと思いますよ(もちろんハードモード好きならそれでいいですし、車好きな人はMTでいいと思います)。

追加で書きたいのは、MTよりATのほうが多少料金が安くていくらかお金浮いているはずですから、その浮いたお金で追加オプションを選んでみたらどうだろうという提案です。

追加オプションとは技能検定(運転実技のテスト)で落ちても(本来は追加料金がいる)テスト料の免除を受けれたり、追加講習が◇回まで無料でできるよ的なものです。

正直、僕はこれら一回も使わなかったです。だからそれなりに自信がある方は必要ない費用になるかもしれません。それでも個人的に補助プランおすすめする理由は「心に余裕を持てるから」のほかありません。

運転中は不安で不安で仕方ないと思いますが「これ失敗しても次なんとかなればいいか」と思える心の余裕はとても大きいと思います。僕もそれで助けられたし、個人的におすすめですね。

余談ですが、大学が休みの頃は通う人が多くなる傾向があります。夏休み冬休み春休みなどは大学生などが取りに来るので、運転実習の予約が取りにくかったり、待合室に人が多かったりとか不便なことになるので時間がある方は少し時期をずらすよう免許習得計画を立てるといいかもしれません。

講義を受ける

授業は「講義」と「実習」の二種類あります。

まず講義ですが、こちらは学校の授業を想像するそのままでいいと思います。基本的な「信号で右左折する時は30メートル手前から合図をする」とか「歩道を横切る時は一時停止をしなければならない」とかそういった知識を指導員が教科書(教本)を使って読み進めている感じです。

正直、こちらは特別難しいことをするわけではないです。多少ややこしい話があったりしますが、それは「それは違反か違反でないか」を聞かれる程度なので、すこし考えたらわかるかなと思います。わからない箇所は教本を読み返せばいいです。

注意するところは「居眠りしない」と「携帯電話を鳴らさないようにする」とかでしょうか。これはどの授業でも同じです。

加えて書くなら、自動車学校は学校なので「学校っぽい感じ」があるとこで、そこらへん学校にトラウマとかある人は注意した方がいいかもしれませんね。僕も行ってて「懐かしいこの感じ」と思うことがありました(先生に指名されて答えたら間違えたときの空気とか)。

筆記テストとやらしい問題

座学で一番の問題は「テスト」になるでしょう。

テストは「仮免許前」と「本免許習得前」の計2回行われます。両方共免許センターで行うらしいですが、仮免許前のみ学校で受けれる場合もあります(僕がそうでした)。このテストはそれぞれ90点以上取らなくては合格できません。すべて◯×問題ですが、ややこしい問題もあり、簡単なようで難しいんですよね。

印象に残っている問題があります。

三車線ある道路の場合、速度が一番速い車は右側を走る
という問題で、僕は「車線右側になるにつれ速い車が走る。一番右はたしか追い越し用道路だから……制限時間を守ったとすれば……追い越し時が一番速度が速い。答えは◯だ」と答えて間違えました。

正解は× 理由は「右側は追い越し専用道路で一番早い車は真ん中を走るから」になります。

もう一つ

免許を持っているが忘れたまま車を運転した。これは無免許運転になる
という問題で、僕は「無免許運転だろ。◯」と答えて間違えています。

正解は×、理由は「問題の状態だと違反」になるからです。ちなみに免許を持っているのに持たずに運転すると違反、免許停止の状態で運転すると無免許運転になります。

……まぁそんな感じの問題がでてきます。問題をちゃんと読んでいたとしても間違えることがあるかと思うので、そこら辺は気をつけろとしか言えません。勉強苦手で心配している方がいらっしゃるかもしれませんが、最近はネットで模擬試験を受けることができます。それを嫌なほど解いていれば「問題に慣れる」事ができると思いますから、それでなんとかしてください。仮に模擬試験でわからないところがあっても、教本を読めばいいし、指導員に聞けば詳しく教えてくれると思います。

実習を受ける

実習を受ける場所として「学校内」と「路上」の2パターンあります。

学校内では本当に基本的なことから学びます。乗車と下車から、ハンドルの握り方、右左折する方法、合図を出す流れ、など指導員と一緒にやっていきます。できなかったところは繰り返してやってゆき、仮にできないまま実習が終わるとしたら、その時は補修という形で練習を行うらしいです。苦手なところをやる時間(自習時間)が実技テスト前にあるので、そこで重点的に練習をしたりもします。

よく聞く話で指導員がめっちゃ怖いみたいな話があります。

僕がやってきた場所では「めっちゃこわい」みたいな場面に遭遇することはなく、というか現在そういった問題が起こらないよう色々取り組みもしている雰囲気すらありました。担当者みたい指導員なのがいて「この人はなんか嫌だ」と思った教官を報告したら、その人を割り振らないようにできるとか言ってました。

実習は一対一で指導を受けるということもあり、指導員との相性は結構重要なところだと思います。僕は「この人は嫌だ変えてくれ」とは言いませんでしたけど、「この人とは相性良くないな」と思う人は何人かいました(「相性いいな」と思う人もいました)。

僕が言わなかっただけで、もしこれ読んでいる人が「もうやだ」ってなったら遠慮なく、指導員を変えるようなことを言っていいと思います。そういうシステムがあるのなら使っていきましょう。

実習で大変だったとこ

表向きには「簡単でしょう」風に書いていますが、もう本当に実習は大変でした。

ここから愚痴っぽくなるのですが、手順通りにこなさなきゃならない動作があって(信号機前の合図など)、それがまだ完全に覚えてない時、そういった状態で運転をするのですから、なにやっても手一杯で余裕ないんですよ。そこにミスをして、隣で指導員が簡単な指摘するんですが、もうパニック寸前なんですよね。戸惑ったらすぐフリーズしちゃうし、「聞こえてるよね?」って言われてもパニック中は「言ってることはわかるが動作が追い付いてない」状態にですから(たぶん自閉症スペクトラムさんには伝わってるはず)涙目になりながらやってました。

路上も大変でしたよ。処理に時間をかけているところ急かされるときなんかつらかったです。

こう「信号機前の合図して…横断歩道に歩行者はいない…曲がる方の道に寄って…子どもの飛び出し注意して…左折は小回り…」と確かめながら行動を処理してくと、僕自身がトロいのか手前30メートル(信号機右左折の合図が30メートル前から)ではギリ間に合わないなんてこともあり、気がついたら交差点直前で焦ることもありました……。的確に素早くが難しいんですよね……。

逆に早め早めに合図しようと警戒しすぎて50メートル前から合図をして「合図が早い」と言われて焦り、合図を消したら「なんで消したの(今思うと後ろの車を動揺させるためにやめた方がいいですね)」と言われ、慌ててつけて確認行動に移った頃には10メートル前ってこともありました……。

もっとあるのですが、いろいろ書くのもあれですし! この先は君の目で確かめてください!

そういえば「車内は指導員と二人っきりで沈黙気まずくないの」と心配する方がいらっしゃるかもしれませんが、個人的に言えば「運転する時は運転に集中してるから話している余裕はない」と答えたいです。信号機で停まったときは沈黙を感じますが、そういう時はミスした箇所反省してますし、沈黙を気にするならそのミスを話題として指導員に聞けばいいです。

実習の対策

ここで「こうしたらもっと気楽に実習を受けれただろうな」と思うことをいくつか挙げてみようと思います。参考にしていただければ幸いです。

対策1 事前に運転教本を読むこと

僕はてっきり「実習」とあるのだから「体で覚えろ!」的なノリで教えているのだと思ってましたし、実際そんな感じで教えられて(だいたいの実習では教本を開かない)、僕も体で覚えるよう必死に実習を受けていました。指導員によって微妙に違う運転感覚の捉え方に「なにが正解なんだ」と困惑したことも多かったです。

僕の場合ですが、それで運転教本の存在は忘れ去られてしまい、仮免許取後ぐらいのときにやっと「運転教本」の存在を思い出しました。運転教本を読んでいる時、「もっと早く読めばよかった」と心底思いましたね。

これ読んでいる人は、一番初めの実習が始まる前に読破するつもりで運転教本を読むことをおすすめします。たとえ簡単な動作でもまるっきり初見プレーで教えられるのとは段違いの安心感があると思います。

対策2 指導員に具体的な質問を投げかけてみる

運転中に指導員とコミュニケーションを取ることは難しいですが、車が止まっているときや実習が始まる前とかに色々聞いてみるといいと思います。
上に「具体的」と書いたのは、指導員がよく「わからないところはある?」など聞いてくる質問に僕は「言ってることはわかります。ですがトロいので対応処理が難しいです」など生真面目に答えていたんですけど、それのせいで指導員側もざっくりとした回答しかもらえなくて、なんとも噛み合わない感じがありました。あの質問、今思えば「対応に困っている箇所はあるか?」という質問だったと思うんです(今更)。

そういえば、たまたま噛み合った時があって、たしか「50メートル前で右左折の合図してしまうんですけど、30メートル前ってどうやって見分けるんですか」と聞いた時に「電柱の間隔が30メートルぐらいだからそれを目安にしたらいいよ」と答えられてはっとしたのを覚えています。

もし仮にあそこで「距離感つかむのが難しいですね」などざっくりとしたことを話していたら、「それは慣れるしかないね」とざっくりとした返答になっていたと思います。

つまり「今◯◯なんですけど、いい方法ありますか?」みたいな、上で言う「30メートル前ってどうやって見分けるんですか」みたいな具体的なことを投げかけば、それなりの回答が返ってくるはずです。そういう質問を効果的に使ったらいいんじゃないかなと思います。

いざ免許センターへ

講義も実習も実技テストも終えたあと、最後のテストが免許センターにて行われます。

免許センターの場所やそれから行う手続きについては、おそらく自動車学校側がいろいろ教えてくれます。ここで書くよりも、自動車学校側で教えられた通りに行ってください。ちなみにですがまだ免許を持ってないので車で免許センターに行っちゃダメです。

免許センターにて詳しく指示されると思いますが、料金等払ってテストを行い、受かったらそのまま合格通知と免許の手数料を払ったりします。落ちたら一旦帰って、後日また免許センターにてテストを受けます。落ちたら落ちたでまた費用を払ったりとか面倒なので一度で受かったほうがいいです。

受かったその後は、免許に貼る写真を撮ったり講習が控えています。ここで行う講習では話を聞いたり、事故防止のビデオを見たりします。そんな感じで講義も終われば、晴れて免許習得となります。

免許センターで行うのはテストと講義と手続き程度ですが、免許センターへ行く日はそれだけで1日潰れると思ったほうがいいです。待ち時間もまぁまぁあったので時間を潰せるものを持っていったほうがいいかもしれません。僕の場合昼ごはん買ってなくて、売店のタイミングを逃し、空腹のまま講義を受けたりしました。

おわりに

免許を習得するには約30万円必要で、それで「お金払ったら免許をとれる」というわけではなく、そこから先も自閉症スペクトラムにとっては大変なことが結構起こります。この訪れる困難にぶつかってやめてしまったら(それは本人が逃げるという重要な選択をしただけですが)お金は無駄になってしまう、そんな可能性も前もって考慮しなくてはなりません。

ただそれでも便利なことは変わりなく。この免許はとても魅力的なものを発しています。始めに「現代人には必須」と書きましたが、必要不可欠! なくてはならない! と強く言いたいわけではありません。持たなくても生活はできます。けれども持った方が絶対いいものの1つではあります。

そんなものが30万もかかって、ちょっと難易度が高いってどういうことだよ。と思ってはしまうんですけどね。まぁ免許習得目指している各位へ、僕はここで健闘を祈っています。


追伸:
写真はフリー素材ぱくたそ(www.pakutaso.com)より、
これから公道デビューのフリー素材 https://www.pakutaso.com/20170859233post-12892.html

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