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通和散を本当に作った人がいてな

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通和散とは

通和散(つうわさん)は、江戸時代に市販されていた日本のぬめり薬である。閨房で使う秘薬の一種。今で言うラブローションである。主に男色の時の肛門性交で使われたが、未通女の初交や水揚げの時など男女間の性交でも用いることがあった。当時の有名な秘薬で、川柳や春本でもよく取り上げられている。練り木白塗香ふのり紙高野糊などの別称がある。

Wikipedia

作った?作れるの?

【自由研究】 江戸時代のラブローション制作レポ
詳しくはこちらを…。全ては先達のおかげ。
もちろん現存していないので、昔のレシピを参考に自作するしか今我々にブツを知る手段はない。
こちらの先生も「作る人はいないと思うけど」などと前置きをされている。
作る人、いた。

今回のレポは、弐号機である

弐号機?初号機があるの?
あります。そちらもTwitterで軽くレポした。今回弐号機の治験をしたことにより、より解像度が上がり(作っちゃった)作製者の 狂い 本気度を垣間見てしまったので、こっちも弐号機のレポを本気で書こうと思った次第。
初号機のレポはコチラ。
今回との違いを感じるためにご一読いただけるとより良いかと。

https://twitter.com/hrkmn/status/1655930980073611266

これが貰った通和散だ

パケ完コピ

いやいやいやいや…
パケまで作るなや。作っただけで既にアレなのに輪をかけるな。適当な小分け袋に入れて渡せばいいやん。
などという言葉は、彼女には通じない。何せ自分の気の済むまでトコトン追い求める追求型なので。
包には水引がかけられ「極楽浄土」という文字、中の包には墨で描かれた白椿があしらわれていたそう。
完コピ。

和紙風の紙を開封(ご祝儀袋みたいな包み方だった)。中には5枚の チータラ 短冊と、それより大ぶりの同様の紙。
渡された時に言われた。
「短冊は5回塗り、大きいのは区別のため切ってないけど8回塗りしてる」
5回塗り?8回塗り?
そう、まだ彼女の試行錯誤は続いているのだ。
まず今回はかなり薄い和紙を使用している。薄めの書道の半紙くらい。一緒に買いに行った私が証言する。その薄い和紙に溶液を塗って乾かし、塗って乾かしという作業を5回行っているのが5回塗り。8回塗りは更に3回塗り重ねているという。
どんだけ時間掛けてるの?聞くだけで気が遠くなる。
8回なのは「そこで和紙が耐えられる限界を感じたから」らしい。

チータラじゃないよ

チータラにしか見えないこれがワクワクドキドキの中身。少し茶色いのはふのりのせい。ふのりは粘性のある海藻でテングサの仲間。かつては洗髪に使われたり洗濯のりにも使われていたという、とても日常に溶け込んだ海藻だったらしい。
そのぬめりを利用し、葛や卵白を加えた原液を和紙に塗り重ねて作られたのが通和散。トロロアオイとか他のものが原料になってる例も(むしろこっちが通和散だが生産者が激減している貴重なものをお遊びには使えない)。

通和散の別名である「いちぶのり」の語源は、幅が一分だったからという説と、一分銀の大きさだったからという説もある。いやだから現存してないんだって!今回貰ったのは一分というには幅が3倍くらいあった。
手に持ってみると「パリパリ」。初号機の時は厚めの和紙に溶液を染み込ませたため、凶器のように硬かったが、今回は揺らせば曲がるくらいの柔軟性がある。それもこれも作製者の 狂気 丁寧なお仕事の賜物。
包み紙の端に乾いた溶液の粉が確認できたのも今回からで、執拗な塗り重ねによる溶液の含有量に期待が膨らむ。

海産物の気配に引き寄せられるねこ

ぱりぱり感はぜひ聞いて欲しい

※音が鳴ります


実食…いや…いざ「体験」!

初号機の時もそうだったが、結構緊張する。
「これが…これがあの通和散…。あの時代の創作物でアレなシーンがあると必ずと言っていいほどの高確率で登場する、あの…」
めっちゃマズかったらどうしよう、そもそもぬるぬるに耐えられるか?…というのが初号機の時の緊張。
今回の緊張は、やだ…明らかに前のより多い(含有量が)ぜったいすごい…という緊張。

場所:自宅バスルーム
時間:お風呂に入るような夜

初号機は3枚で一人前くらいだったけど、「今回はきっと2枚くらいで行けると思う」…という作製者の言葉を信じて、2枚を一度に口に含む。
「ぱりっ」
絵描きさん、字書きさん、口に含んだ時の擬音は「パリ」とか「パリッ」だ「パリリ」とかでもいい。ばりばりはしてない。無音で口に含める人間がいたら連れてこい。2回ともそうだったんだから間違いない。そもそも作製過程や材料を考えればパリパリなのは明白。

今回決めていたことがある。
「咀嚼しない」
初号機の時に咀嚼しすぎて、吐き出した溶液が和紙の繊維を含んで濁っていたからだ。これは前回の作製方法が「(厚めの)和紙に溶液を染み込ませる」という手法だったからで、噛むことで和紙に染み込んだ溶液を絞り出していたから。
今回は咀嚼せず、とにかくぬめり液のみを刮ぎ落とす。きっとその溶液こそが本来の通和散に近い。

え…っ前と違う!

味が。
口内で生成にかかる時間が。
まず味、少し甘い。僅かな酸味。初号機は無味無臭だった。これは…濃いから?多分葛の味が強い。
そして味がするおかげで唾液が…。そのせいかは分からないけどものの30秒ほどで和紙から溶液が剥がれ落ちた感覚。これは「はじめてのつうわさん」的初心者でもできる。初心者でもできる。初な受けでもできる。ココ大事。
初号機は3分くらいもぐもぐしてやっとだったのに(そして気まずい3分 or 楽しい3分 or 恥ずかしい3分 or 意外と好きな3分だったら楽しいなぁ…などと妄想していた)。
正しい作成方法は今回の「塗り重ね」なので、きっと和紙に塗って乾かすことを何度も繰り返し、溶かしやすくすることが精製上のコツだったんだろう。むしゃむしゃしてたら時間も掛かるし格好もつかない。この「舌の上で転がしてもごもごする」動作こそ本物。

このままじゃ唾液過多になる!と慌てて口内のものを全て手のひらに吐き出す。和紙だけをそっと取り除き、生成された液体こそが房事に使用するぬめり薬。
初号機の時も書いたが、「ぬとぉ」とか「とろぉ」っていうほど粘性はない。ここも大事。絵描きだから。擬音大事。字書きさんも大事だと思う。
「てろん」程度。「てろ…」とか「ぬるん」とか、唾液に使うような擬音で十分。口元アップで描く時は、一緒に吐き出される和紙がチラ見えすると最高にすけべ(蛇足)。
糸を引くほどでもなく、本当にほぼ唾液ほどの粘性だと考えていい。
因みに慌てて口の中で撹拌すると溶液が泡立つので記載しておく。効果に差はないが量が足りなくなるので足すことになりそう。

:やっぱり乳白色(初号機参照)
おかしいな…今回は咀嚼してないから紙の繊維も出てないし。元々の色が知りたいな。
→作った本人に聞いてみよう!

「ねーねー和紙に塗る前の液体状の通和散て、何色?」
「白濁色(写真つき)」

白濁色!
何だ…じゃあ前回の白色も紙の繊維だけじゃなかったのか。もともと白いんだ。多分葛の色。
でも牛乳みたいに白いわけじゃない。カルピス原液より薄いくらい。十分白いか。カラーないし文章で描写の際はご参考まで…透明じゃない、白濁液。

塗りつける

白状しよう。
初号機の時、正直私は日和った。
せっかく、せっかく!あの!通和散がここにあってしかも使ってもいいというのに、ちょっと肌に塗って「わートロトロしてないのにぬるぬるする」とか、内股付近の柔いところに塗って「す…滑る…こっちの方が分かる…!」と食レポ程度の感想しか言えなかった。
これでは至ってクソ真面目な作製者にあまりに不誠実。
これは一体何だ?
そう、これは通和散。あの時代のラブローション(再現)。
それなら塗る場所が決まってるだろう。

で…でもまず…とりあえず腕に…。
うん、やっぱり唾液程度の粘性しかないのにぬるぬるする。前回同様内腿にも塗る。こっちの方が分かるのも初号機と同じ。心なしか滑りが滑らか。多分前回のような和紙の繊維が混ざっていないからだろう。

さて。
心の準備はよろしいか。
お前の右手は今推しカプの攻めだ。
で、どうやって塗り付ける?尻に。風呂場だ誰も見てない。いや見てないったって今ここでどんな体位を取れと…風呂場の天井が見てるが。脳内で尻だけが推しカプの受け。
おもむろに座ってたバスチェアから尻を浮かせ、テキトーを装って穴に触れてみた。
「何やってん?」という第三者目線と「えっめっちゃ滑るやん」というマジ感想が綯い交ぜになる。マジ感想の方の解像度を上げる。太腿の内側なんか比べ物にならん、めっちゃ滑る。「お前のココ、熱ぃ…」は嘘じゃなかった。このまま力入れれば確実に指入る。挿れんけど。挿れんよ。そこまではできない。それを許しちゃう受けすげえな。愛だね。
唾液で生成され、始めから人肌の温度になってる溶液は、「気付いたら指が1本入っていた」的シチュも容易にこなす。多分。
で、また擬音の話。指で擦り合わせて「くちゅ」くらいは鳴るかもしれない。「ぐちゅ」は無理だ。唾液程度だと何度も言っておく。ただめちゃくちゃ滑る。万が一床に溶液が落ちててそれ踏んづけたら、確実に滑って転ぶ。

持久力

いやそんなんどうやって計るの。
「唾液などでは乾いてしまう」から通和散を使う訳であって、これは必要な検証である……とりあえず摩擦か!(即物的)何か嫌だけど自分の唾液だし我慢だ。
おもむろに、スマホのタイマーを用意した。
新しく新品の通和散溶液を作成する。慣れたもの。スタートする。
メンズの棒も穴も期待できないので、生成された溶液をひたすら手のひらで擦る。速くしたり遅くしたり緩急を付けるのも忘れない。何なら指で筒作ってもう片手の指2・3本突っ込んだ。もう恥も外聞もない。
ぬるつくので出し入れは楽だがとても気になることにぶち当たる。
唾液臭。
こればかりは、どうにもならないか。今までここまで執拗に擦り付けたことはなかったので全く気が付かなかった。液体部分は唾液。
乾燥させ、葛やらで磯臭さは消せても、使用段階で唾液を使うのだからそりゃ唾液の匂いはするだろう。それにしても気になる。多分使ってる方が気になる。しかし通和散は唾液じゃないとうまく生成されない特性がある。水等では十分な効果は得られない。実際水に浸した後、どうやって溶液を生成するのか謎だ。
擦って3分、滑りがぎこちなくなってきた。えっ3分で効果終わる?唾液よりはマシだろうが。
約4分、多分このまま擦り続けると痛かろうという感じに。
結論
通和散だけだと、追加、必須。(他にもまぁ何か液とか諸々使うとまた違うのだろうが)
解す用途なら3回以上追加してあげて。指動かしながら次の分口に含んでモゴモゴしてる攻めはとっても可愛いと思われる。

使用後の紙片は翌朝どうなる

お布団の上に放置したまま一晩寝たと仮定し、翌朝(約7時間後)副産物である紙片はどうなるか。
重要。とても重要。
お風呂でかました実験の後、お布団に近い環境で放置してみた(綿のハンカチの上、場所は自室の机の上、夏)。普通に疲れたので寝て起きて確認。

半乾きで、まだ湿ってる。紙片の形は、放置した形で固まった。色はふのりのせいか、少々黄ばみ気味。

何故かとても背徳的な気持ちにさせられる。現代で当て嵌めるととっ散らかったゴムの個包装パッケージ的な。使用済みを放り投げたものでもいい。
後片付けも後始末もできないほど致してそのまま眠ってしまった場合、この紙片が「使った回数だけ」塊になってお布団や畳やらに散乱してるわけですね。吐き出した紙片まとめて捨てるためのお盆なり小皿なりを枕元に置いておく、用意周到な攻めがいてもいい。
翌朝、散らばった紙片に行為を思い出して居た堪れなくなっちゃう受けがいてもいい。
それくらいの存在感が、この紙片の塊には、ある。

終わりに

時代設定が未来のジャンルか現代のジャンルにしか縁がなかったので、今回のジャンルで初めて知った通和散。因みに鰻屋と蕎麦屋の2階の使用用途もここで知った。
「今で言うローションらしい」
「包に『極楽浄土』と書いてあるらしい」
「紙片らしい」
「口に含んで生成するらしい」
しか分からなかったのに、ここに来ていきなり学芸員並の知識を得てしまったような。ローションが登場するのは昭和に入ってから。

何事も経験則なところがあり、聖地巡礼も大好き。現存する鰻屋2階に鰻食べに行ったし、あの時代の建物があれば見に行って写真を山ほど撮る。
そんな私にこげな気のおかしい…最高なものを分けてくださってありがとう。付いていく。