Caribbean Groove本公演感想

前回のシャッフルレビューは、個人的にあまり好みでなかったので、正直今回のCaribbean Groove本公演にもそれほど期待をせず当日を迎えた。
しかし蓋を開けてみれば、これがスタミュミュだった! という感動でいっぱいになり、観てよかったなあという心地の中、良いものを観たあとの多大な興奮で火照る心を躍らせながら、わたしは帰宅の途についたのだった。

お話としては前回のカリグルレビューで発表されていたシナリオを舞台の形でみせる公演ということで、レビュー公演では映像で見せるだけだったシーンや、シナリオで確認していただけだったシーンが舞台上で立ち上がったことに『ここが観たかった!』という気持ちを思い出した。

特に観たいと思っていたのは戌峰演じるジョバンニが密偵と発覚し、裏切りと緊迫のシーンからアンリが「家族じゃないの!?」とジョバンニに詰め寄るシーン。
カリグル自体、シナリオを読んだときからジョバンニの役どころがとても良く、『戌峰おいしいなあ』と思っていたので、このシーンも含めジョバンニの感情の動きや生き様を舞台で見ることが出来たのはとても嬉しかった。
そして、このシーンの演出が洞穴で緊迫した4人の様子、アンサンブルによるジョバンニの揺れる心情と、クリスがジョバンニから貰った言葉と思い出のクロス。吉谷さんの演出作品では何度も観るクロスだが、本当にいいシーンでこのクロスを使うなあと唸ってしまった。
チーム柊5人の演技も去年よりも演技シーンが増えたのと共に、それぞれ解釈が深まり、観ている側も没入感が増したが、中でも、戌峰役の丹澤さんがとても上手くなっていたことに思わずため息した。元々スタミュミュ初演のときから上手い方だなあと思ってはいたが、今回のカリグル本公演では一皮も二皮も剥けた印象を覚えた。
序盤、アンリと一緒に居るときの明るさと、密偵としての裏の顔の暗く冷たい演技。緩急がありパッと変わるその様は、『戌峰』という天才の、演技への没頭も表しているように思えた。
そして歌唱力も増していて、特に根無し草の歌は素晴らしいとしか言いようがなかった。シーン的に出来なかったけれど、出来ることなら拍手してこちらの熱を伝えたくなるほどの歌唱とそれによる表現力だった。
スタミュミュは『ミュージカル』ではあるが、どちらかというと『音楽劇』のように感じるし、あまりミュージカルという意識なく観劇していたが、根無し草の歌で、『ああ、ミュージカルだ』とハッとしたようなところがあった。
本業がサックスプレーヤーでミュージシャンなのもわかっているし、そちらの世界でも引く手数多なのだろうけれど、出来ることならこれから様々な舞台や、ミュージカルとしての歌を聴かせてほしいし、ぜひ他の役を演じる彼を見てみたい。
それから、アンサンブルとして参加で、ピエール役の澤邊さんがとても上手くて驚いた。スタミュミュでは何度も観ているアンサンブルさんだが、あんなに演技の上手い人だという認識がなかったので、これからまた演技を見る機会があれば嬉しいなと思う。

「いつも心に! Caribbean Groove!」でエンディング。去年はレビュー公演で殆ど歌とダンスで見せる公演だったカリグルは、今回本公演となり、この1年で演技やダンスや歌唱が成長したキャストたちによる、Caribbean Grooveとして最高の公演だった。

カリグルとしての幕が下り、充足した気持ちで拍手を送っていたら、前回の公演で歌唱された楽曲のレビュー! 濃厚なメインディッシュの後まさかフルーツ山盛りのパフェが出てくると思わず、やや歓声を上げてしまい、慌てて口を覆った。
もう一度聞きたいと思っていたり、去年を思い出す楽しく嬉しい時間。
この2年間、今までの『チーム柊』の集大成となる曲たちは彼らをキラキラと輝かせていた。捕らえたその瞬きは、星が弾ける寸前の光。
そして、今までの5人でのチーム柊は大きく強く瞬き、弾け、それぞれが新たな星となった。
星のイメージはやはりチーム鳳が持つものだとはわかっているけれど、それでもあの強い眩しさは、星の瞬き以外喩えようがない。
きっと『キラキラ』はスタミュシリーズに共通するテーマだと思うので、星のイメージは正解なのだと思いたい。

また新たな輝きを纏うため、スタミュミュ3rdで新たな5人でのスタートを切ることとなるチーム柊。
濃密な初演の時間を過ごし、単独公演を2回公演した彼らが、4人の現存メンバーで新たなメンバーを迎えることにより、今度はどんな絆を繋ぎ光を纏うのかとても楽しみで、そうわくわくさせてくれるほど、力強いCaribbean Groove公演だった。

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