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【購読無料】謝罪会見 東電社長の「深くお詫び」が異様に「浅く」映った理由


新潟県の東京電力柏崎刈羽原発で、耳を疑う出来事が露見しました。
「露見」という言葉の意味に妙な納得をしたのは、東京電力小早川社長の謝罪シーンがテレビに映し出された時でした。

【一連の事件】

原子力発電所に何がおきたの?新聞記事を読み進めていくうちに、え?ホント?が私の頭の中で何度も繰り返され、ブルッと震え上がったのは、小早川社長の謝罪シーン。

原発で何かが故障した、というシンプルな事故が起きたという記事ではないことは明らかでした。

何が発覚したのでしょう。先ず一番目。昨年の3月のことです。施設内で、核物質防護のため立ち入り制限をされている区域の「不正侵入を検知する設備」が故障していたにも関わらず、点検や保守をしていなかったことが明らかになりました。



これは、東電の自社規定で、1年ごとに行うと定められていた定期評価や改善活動の記録はあるにもかかわらず、外部からの不正侵入を許してしまう状態が30日以上続いていたことになります。

悪意のある人が紛れ込むことができたら、大変なことになったかもしれない、ということです。仮定の話ではありますが、この状態を放置していたことに変わりはありません。

次に、昨年9月、東電の社員が同僚の認証カードを使い、中央制御室へ不正侵入していたことも発覚しました。本来入れないところへ、入ることができていたということですね。


そしてもう一つ、福島第1原発3号機の地震計が故障していたことを放置し、2月に起きた地震が計測さていなかったことも露見しました。

え?どうして放っておいたの?

思わず口に出た自分の言葉に、私は自分でゾゾッとしたのでした。


【そうなった理由】
点検など、日常の対策にも大きな問題があったことが明らかになったわけです。つまり、原子力規制委員会が指摘したように、これら一連のぼんやりとした失策の背景には、組織的な安全文化の劣化があったのではないかということです。東電全体が小さな故障やミスをあまり気にしていないこのことが、東電の小早川社長の謝罪会見に露骨に表れていました。

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以下に、小早川智明社長の言葉を拾い上げてみました。

■「他電力で起こっていないということは、何かがおかしいと大きく疑問を持って問題にあたりたい。」

■「できる限り時間を割いて、この福島に足を運んで、改めて様々な皆さんと対話をしながら、しっかりと事業を作っていきたい」

■「県民や地元の皆様に大変な不安や不信を与えてしまいおわびします」

そして、
自身を含む役員4人が月額報酬の30%を6カ月間、自主返納すると発表したのです。

え?これで無罪放免?

お詫び行脚は県内6町村となったようですので、歩いて回ったこと自体は評価できるかもしれません。しかし、今回の謝罪のシーンを見て思ったのは、「頭を下げる」というその姿勢そのものに、この事件が起きた根拠がみえた気がしました。

心の内は姿に出る

これらのことの重大性を、東電の社長自身に認識が薄いことは、謝罪の際のお辞儀の深さに出ています。

小早川社長以下数名が、謝罪の会議用テーブルを挟んで並び、お詫びの姿勢をとり頭を下げました。

しかし、お辞儀をしていたいのは、頭を下げ切ってから3秒間だけ。しかも謝罪の姿の基本となる「腰が直角に折れて」いない。背中が丸くなり頭のてっぺんを下に向けようとする程度の、浅いお辞儀しかできていなかったのです。

更に印象を悪くしたのは、小早川社長の前髪でした。「前髪」は、頭の上部前面にあるものです。当然だと思われるかもしれませんが、この前髪の下には前頭葉があります。前頭葉はものごとを考える場所。「前髪で額を隠す」のは、「考えを隠す」と思われてしまいます。住民だけでなく国民の命を預かる大企業の社長がする髪型ではありません。「リーダーは額を出す」のは鉄則です。

また、謝罪の言葉を口にするその声も気になって仕方がありませんでした。口の奥でくぐもっているのに加えて、口をハッキリ動かさない話し方をするので、音がリエゾンしてしまうのです。

謝罪会見は、信頼回復のための、最後の、そして最高のチャンスです。
失敗した時こそ、正直に、真摯に、自分の失敗と向き合い、非を認め、誰かの何かのせいにするのではなく、何をどうしていたらこの失敗を回避することができたのか。そしてもう二度と同じ過ちを犯さないために、自分は何をするのか。どんな罰を受けるのか。これを表すのが「謝罪会見」です。

だからこそ、一言一句、一挙手一投足が重要な意味を持ちます。間違ってもその場で言い訳をしたり、自分の間違いをごまかしてはなりません。もしそんなことがあれば、謝罪の場は炎上の場へと瞬時に変わってしまいます

こう考えると、今回の小早川社長の発言の中で、計器の故障や、チェック体制が崩壊していたことについて、正面から謝罪を表す言葉は見当たりませんでした。計器の気の故障を放置していたこと、不正侵入の可能性を放置していたことが「住民と話し合って」解決する問題ではないことは、明らかです。
東電は福島の事故より以前にも、原発のトラブル隠しやデータ改ざんなどを起こし、問題になってきました。そのたびに「頭を下げる」場面も繰り返されました。でも、その本質的な部分の改革がなされていないから、同じような事件事故が起こるのです。今回のことはその本質が象徴的に表出したといっても過言ではありません。何と言ってもあの中途半端なお辞儀の姿勢と、詫びるという心を感じられない謝罪の言葉。その至る所にまた同じような失策が起こるかもしれないと不安がぬぐえなくなるのです。

東電は今夏にも柏崎刈羽原発7号機の再稼働をめざしていましたが、当面難しくなったことも社会の評価なのだと考えています。

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