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大阪では、自民も立民も「野党」

大阪の選挙は、他の地域の選挙区とは少し雰囲気が違います。
大阪生まれの日本維新の会は、府民からの圧倒的な支持の下、今回の解散総選挙で大阪全19選挙区のうち15選挙区に候補者を擁立しました。選挙情勢は解散前より増やす勢いで今回は12選挙区で優勢とも伝えられています。

大阪の選挙は興味深く見てきました。それは選挙だけでなく、大阪都構想についてもです。大阪府民と壮大なコミュニケーションを図った大阪都構想の二度目の住民投票の結審。その投開票の日も、前日から大阪入りしてその独特のムードに浸ってみたりしました。現場に入って少し理解できたことがありました。それは、大阪は商人の街だということです。

「身を切る改革」


選挙になって、阪急百貨店、大阪高島屋前など、大きなロータリーなどがある場所に街宣車が入ると、熱狂的な支持者が必ずいますが、維新の会の場合は、常に数百人か、松井代表が入るとなると千人は優に超えているのではないでしょうか。そして、維新の会の候補者が演説で熱弁を振るうと、必ずどっと拍手が沸き起こるポイントがあります。それは「身を切る改革」という言葉を用いる時です。これは大阪で既得権を得たメッセージで、「有権者に負担を強いる前に、先ずは政治家が自ら身を切る改革をすることだ」、という意味で用いられる言葉です。この言葉に対する信頼感は圧倒的なものを感じます。

その大阪で、黙っているわけにはいかない!ということで、自民党も立憲民主党も、無所属の候補者も、ガチンコ対決する選挙区がいくつかあります。


選挙区民でなくとも注目の「大阪5区」 

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この選挙区で立候補する4人は、籠池(かごいけ)じゅん子(無所属)、大石晃子(れいわ)、宮本岳志(共産)、国重徹(公明)。籠池じゅん子氏の夫は学校法人「森友学園」の籠池泰典前理事長です。籠池夫妻は国から補助金をだまし取ったとしたいわゆる森友学園問題で、詐欺罪などで一審有罪判決を受け、現在控訴中。有罪が決定したわけではないので、公民権停止ではありません。選挙を通して、自公政権批判や、司法制度、塚本幼稚園の解体などについて考えを主張しようというものです。選挙は、このように、自分の主張したいことを公に向かって主張する場という役割もあります。これも憲法で保障された国民の権利ですから、このように使うこと自体なんら批判をされるものではありません。その地は大阪です。私のオンラインサロンのメンバーから、公営掲示板の写真が送られてきたり、「演説ワロタ!」とコメントがきたり、「よう喋るおもろいおばちゃんやで」という評価だったりしています。これも大阪独自の受け取り方なのかもしれません。

大阪では野党の自民党

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さて、自民党も座して死を待つわけにはいきません。選挙期間中、たった一度しかない日曜日に、どこに応援演説に入るかは、政党にとってとても重要な選択になります。10月24日の日曜日、大阪は気持ちの良い秋晴れでした。JR天王寺駅前の歩道や、駅ビルとつながる大きな歩道橋には、「岸田総理来たる!」の呼びかけに集まった人でいっぱいでした。3千人は居たかと思います。駅を背景に大きな自民党の街宣車の車上には、候補者が二人立って手を振っています。岸田総理が入るという予定時刻はもうとっくに過ぎていましたが、その気配はありません。SPと思しき黒服でキメ髪の人たちはまだ歩道側に立っているだけです。総理の車列が入るときは、複数人が車道に立って誘導するはず。まだ来ないなと思いながら、歩道橋から街宣車を覗き込みながらそこに立っていました。この後17時15分には、そこから車で10分ほどの場所に、立憲民主党の枝野代表が入るということでしたので、両方を見たい私には残酷なタイミング。「岸田さん、早く来てよねぇ」と思わずひとり言がでてしまいました。その時です、私の隣に立ってカメラを構えている男性が、真後ろの女性を怒鳴りつけたのです。その女性をふり返って「カメラが揺れるだろ!下がれよ!」と。するとその女性は間髪入れず「触ってません!」

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もう1時間近く同じ体制で場所の確保をしているのですから、それなりにみんなイライラしているのだと思いますが、周辺には緊張が走りました。「だから触るなって!!」「触ってません!押されただけです!」この押し問答も、繰り返すうちに声色にドスが効き始め、一触即発となりそうな雰囲気の時、下の車道のあたりに居たSPが片手でイヤホンを抑え、車道に駆け出しました。「あ、総理が入る!」視線は目の前の黒い車の車列に。岸田総理の登場です。この前の札幌の時と同じでした。「きゃーっ♡」という黄色い歓声はありません。ウォーッ!というような騒めきです。これはそこに現れる人によって違いますが、岸田総理は二回とも「ウォーッ!」でした。

身軽にサッと車上に上ると同時にマイクを持ち、演説が始まりました。時計を見ると、枝野代表が話をする予定時間を30分も過ぎています。雰囲気は見られたからもういいや。私は、さっき隣で小競り合いをしていた女性をふり返り「ここ、空きますよ」といって私の立っている位置を譲り、その場を離れました。

間に合った!枝野代表の演説現場

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混みあった歩道橋は降りるのもひと苦労。でも急がないと枝野氏の演説、終わっちゃう。この時間帯だから、演説の予定もぜったいに押せ押せになっているとは思うけど。私は通りで「回送」を出していたタクシーを見つけました。窓をたたいて「すぐ近くなんだけど急いでるの!乗せて!」とお願いし、気持ち良く乗せてくれました。大阪は人情の街でもありました。


渋滞を避けて横道をクネクネ抜けてくれた運転手さんのおかげで、枝野氏の演説に間に合ったようでした。遠くから枝野氏の声が聞こえてきます。「運転手さん!ありがとう!間に合ったみたい!」大きな声と人だかりがみえる公園の横につけてもらい、Suicaで支払って走り出しました。

枝野氏の演説は、何度も聞いたことがありました。落ち着いた低めのトーンで、聞きやすい声です。つい難しい話になりがちなのと、自民党批判だけになりがちなのが弁護士出身の政治家の特徴です。だから聞いていると飽きてくるのです。でも、このときの演説は、ちょっと違いました。立憲民主党の主張と、横に並ぶ候補者たちの奮闘ぶりを力強く伝えていました。「競争して、規制緩和をする、強いところがより強くなる。それがいつか下に滴り落ちてくる。これは昭和の発想です!」。枝野氏の演説は、維新対自民に埋没しがちな大阪で、野党代表として力のある演説だったように思いました。(今まで聞いた中で一番良かったかも)

選挙の行方

日本維新の会が大阪都構想を打ち上げてから、その是非について、議論を通して大阪府民と数年にわたり対話を続けてきたことは事実です。今回、その成果が選挙の結果として出るのか。近畿ブロックで7つの比例枠を勝ちあげるのではないかと言われるのも頷けます。

さて、大阪にはこのほかにも、興味の尽きない選挙区があります。候補者乱立で誰が得をするのか不明な大阪7区、現職が負けるかもしれない大阪11区、そして公明党副代表の北側一雄と立憲民主党の森山浩行、NHK党の新人西脇京子の戦いの大阪16区。マスコミ各社の調査でも、毎回数字が変わって出てくる選挙区は、それだけ不確定要素が多いということ。ゆらゆら揺れ続ける選挙区は、今回どんな結果を出してくるのでしょうか。口角泡を飛ばす舌戦の成果に注目して行きたいと思います。

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