ぜんぺんです

7/25~8/2に行われたPTF、プレイヤーズツアーファイナルで黒単アグロを使用、準優勝することが出来ました。呼び名は変われど長年の夢だったPTトップ8を達成することができ、嬉しさから浮ついた日々を送っております。今週大きな禁止改定があったところですが、単なる備忘録として、今回のデッキを手に取るまでの流れを簡単に紹介したいと思います。


1.デッキ提出4日前まで

今回の大会はまさしく、荒野の再生に始まり、荒野の再生に終わるものでした。前環境のプレイヤーズツアーで4大会中3回制覇、圧倒的な好成績で一強ぶりを誇示したティムール・荒野の再生デッキですが、その勢いは基本セット2021が発売されても止まることはありませんでした。新たに追加されたパワーカード達はその多くが重いコストであったり、ソーサリータイミングだったりで、荒野の再生のゲームプランへの脅威とは到底言えないものだったのです。環境初期こそ時の支配者テフェリーや、崇高な天啓、精霊龍ウギンなどのニューカマーを活かしたミッドレンジ、ランプデッキが活躍しましたが、環境が成熟していくにつれ前環境の王者に駆逐されていくことになりました。
PTFに向けた調整初期にちょうど行われたRedBull Untapped International QualifierⅡでティムール再生がワンツーフィニッシュを決めたことが決定的であり、この環境で勝利するにはどうあっても荒野の再生と付き合っていかねばならないことが浮き彫りになりました。

このような流れで、PTFのデッキを作成するための2つの道筋が自ずと設定されました。一つは最強の再生デッキを作ること、もう一つは荒野の再生に勝てるデッキを作ることです。荒野の再生が最強のデッキであることはPTF参加者には当然周知の事実、環境に挑むための前提条件といえるものなので、最強の再生デッキとはミラーマッチに最も強く、かつデッキ自体の安定性を損なわないぎりぎりのラインを狙う構築になるだろうと想像できました。他の再生デッキがどの程度ミラーマッチを意識しているかを正確に把握しそれより一つ上の戦略を用意できるのが望ましく、デッキ提出期限ぎりぎりまで大きなイベントの結果を注視する必要があります。

そして荒野の再生が同系に重きを置いた結果、デッキの呪文スロットからはどんどん除去呪文が削減され、代わりに打ち消しや重いドロー呪文がその枠を埋める傾向になることが想定でき、それ即ちアグロデッキの大きなチャンスとなり得ます。クリーチャー主体の戦略の天敵であるサクリファイスデッキが再生環境で影を潜めていることも大きな追い風になるでしょう。逆に、再生側がスペル偏重の構成になることで、ミッドレンジ、コントロール戦略でそれに対抗することは難しいだろうと早々に諦めることにしました。

こんなことを考えていたのが7/14頃、デッキリスト提出は7/23木曜です。7/18、19の週末に行われるSCG Tour Online Season One Championship、Red Bull Untapped IQ IIIの大会の結果如何で全力で舵を切ることにして、それまではティムール再生をラダーで回したり、各アグロデッキとティムール再生の相性を確認したりの日々を過ごしていました。今回の調整も曲者の皆さんと行いました。お世話になっております。

回したアグロデッキは緑単、黒単(いわゆるレギサウルス+悪魔の抱擁型)、白緑オーラ、青白飛行などなど。結果はどれも箸にも棒にもかからず。メインボードに関しては再生側の不要碑の多さから一瞬で押し切ってしまう展開があるにはあるのですがサイドボード後になってしまうとその相性や一変。豊富な赤い呪文で時間稼ぎからのウーロによる蹂躙、再現性のありすぎる敗北の連続にマッチ相性はどう良く解釈しても五分といったところ。またそもそもメインボードですら3ターン目の荒野の再生+発破、もしくは夜群れの伏兵のいわゆるブン回りや、霊気の疾風や神秘の論争が直撃してしまいウーロの脱出が間に合ってしまうなどの展開でそれなりに星をこぼしてしまうことも多々、再生デッキの強さを称えるしかない結果になりました。白緑オーラのみ再生側の干渉の多くと多少のブン回りを無視できる点が評価され長めに時間をかけて回しましたが、デッキが成長の季節に依存し過ぎている点、それに伴い無理やり神殿を使い緑マナを確保したためにテンポとマナベースが阻害されている点でどうしてもデッキそのものの動きの安定性が担保できず、最終的な勝率もそれなりに落ち着くことになりました。

並行して練習していたティムール再生の感触は良くもなく悪くもなく。予定調和でメインボードから赤いカードが無くなったり厚かましい借り手を増やしたりのささやかな調整をしつつ、最終的には終局の始まりがメインボードに入って本番を迎えることになるだろうなと思いながら、九割方再生を使う見込みでした。


2.舵

SCG Tour Online Season One Championship、Red Bull Untapped IQ III終了。大きなトピックは白単アグロの登場とメイン終局の始まり型の再生が優勝したことの二つです。

白単は再生側のメインの色対策カードに引っ掛かることなくビートダウンを完遂することができ、かつ横並び+全体強化の戦略は再生側の高速発破というブン回りにもある程度耐性があり、炎の一掃が軽視されていることも踏まえて正に理想のアグロデッキでした。構造で再生に有利がつく稀有なデッキであることから本戦での使用者も多く予想され、再生側も白単を意識したサイドプランが求められるだろうなど、環境へのインパクトは非常に大きく思えました。

もう一つのメイン終局の始まり型再生の優勝はつまり、PTFで再生を使うにあたってどこまで同型に寄せた構築をするかの基準、スタートラインがそこに設定されたことを意味します。大きなイベントで結果を残した以上PTF参加者の誰もが当たり前にメインから終局の始まりをプレイしてくることになるでしょう。構築で先んじるにはそれより更に一歩進む必要があります。

個人的には2つ目のトピックの影響が大きく、メイン終局の始まりで、何人いるかは分かりませんがそれを思いつかなかった他の参加者に僅かに有利を取ろうという今思えばそれなりに痩せた考えは潰えることになりました。自分が思いつく程度のことは大抵他の誰かも思いつくものです。


デッキ提出は3日後です。サイドに炎の一掃を厚めに積んだティムール再生で同型は幽体の船乗りでも積んで腕相撲に持ち込もうか、そんなことを考えながら7/20夜の練習会に出席しました。アグロデッキの達人、MPLの佐藤レイさんがメタゲームに急遽現れた白単とティムール再生のマッチアップを試しているところでした。一通り終えたところでレイさんが「あと一つデッキ作ってきたんだけど再生と試していい?ダメそうならすぐに諦めるから」こんなことを言いながらデッキを取り出します。

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確かこのようなリストでした。黒単アグロの代名詞である朽ちゆくレギサウルスと悪魔の抱擁が入っていないことについて尋ねるとレイさんは「負け筋になるんだよね」と答えました。数回ティムール再生と戦い、割合は覚えていませんが結構な数を勝ち越しているところを眺め、明らかにカードパワーが低そうな鋸刃蠍を帆凧の掠め盗りに変更することが中村修平さんから提案され、現状のサイドボードは適当に組んだものであることを伝えられ、そして、この日の練習会は終わりました。



後編へ続く





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