シミックフードあれこれ

巷では既に禁止されたのと同じような扱いを受けているオーコデッキについて今更、わざわざ書くのもどうかと思うが、勝った時くらい書かないといつ書くのか分からなくなるので気合を入れて書く。ふんぬ。


GP名古屋1週間前、某所でのスタンダード練習会が始まる前から、GP、翌週のPTにフードで出る気は満々だった。アリーナMCQでのフードデッキの勝率は圧倒的であったし、実際の使用感も満足に足るものだったからだ。環境に対抗馬になり得る他の強力な戦略(死者の原野)は存在しておらず、メタゲームはフードだけで完結していた。マジックを始めてもうすぐ10年経とうとしているが、そういう立ち位置のデッキが存在する環境は何度も経験している。そしてそういう時にベストなデッキを選ぶ方法も学んできた。ひたすらにミラーマッチの練習をして、そのデッキを完璧に使いこなすことだと。目的の大会に向けてそのデッキを打ち倒す何か別の方法を模索したとしても、それは大抵の場合行き詰まることになるし、もがいた時間に他のプレイヤーはその最強のデッキを研ぎ上げてきている事だろう。結局、他の参加者より不十分な準備でそのデッキを手に取るか、あんなに練習したんだからと自分に言い聞かせながら最善とは言えない選択肢を選ぶことになってしまう。これは数多の失敗から成る、自分自身の経験だ。勝ちたいのならフードを使え、そして最強のフードを作れ。

ひとまず、先のアリーナMCQで純正2色型を選択したこともあり、スゥルタイに先立ってそちらを調整することにした。純正型を選んだ理由は単純に色を足すメリットが少ないように感じられたからだ。同じ2マナの干渉手段として霊気の疾風は害悪な掌握と遜色ない働きを見せてくれた。巨大なハイドロイドに困る一面こそあるものの、狼への対処、PWの置き土産を残さない、夏の帳に引っ掛からない、メタ外の置物への耐性向上など、掌握と比較したメリットも多い。厚かましい借り手を含めて軽い干渉手段が1スロット多く、僅かながらマナベースも強固な為、テンポでの勝利も一応ながら狙いやすい点も魅力だった。一方で、虐殺少女とリリアナは純正2色では絶対に出来ない盤面の捲りと蓋を行えるため、それらの点を調整、比較しながら最終的な選択を行うことになる。

純正型を回した中での各カード雑感を挙げる

◎金のガチョウ…デッキの核。打点を持たないマナクリながら、オーコでの強襲に役立つためにコントロール相手でもサイドアウトはしない。複数枚引いて土地が薄い場合に片方が機能不全になるのでマリガン、むかしむかしでの選択に気を付ける。

◎王冠泥棒、オーコ…核。ガチョウ以外は出来る時に積極的に交換していくのが吉。明日禁止になる予定。

◎意地悪な狼…核。やや大振りでテンポを取られやすいので純正同型のみ少量サイドアウト対象になる。コントロール相手にもそれなりに仕事はするが、これをアウト出来るくらいにサイドカードを用意できると盤石といえる。

◎世界を揺るがす者、ニッサ…核。大体のゲーム展開はいかにこれが定着できる盤面を作れるかに終始する。

◎ハイドロイド混成体…核。相手の混成体に超えられないために基本は奇数だろうと全力で唱える。

×成長のらせん…楽園のドルイドとの比較になるが、このカードは手札に土地が余っていないとマナが伸びないという致命的な欠陥がある。ちゃんと追加の土地が置けている限りはドルイドよりも強いのは確かだ。実質1マナ軽いし、他のインスタントと同時に構えられる。ただ、それ以上に土地を置けない場合のデメリットが本当に、本当に大きすぎる。このデッキは、ミラーマッチでは特にそうだが、最低でも5マナまではストレートに伸びて欲しく、ハイドロイドのことも考えるとそれ以上のマナも必要となる。らせんに求められていることはとにかくマナを伸ばすことであり、キャントリップでは決してない。また追加の土地、もといカードそのものが少なくなるマリガン時に非常に弱くなる。このカード自体を探せないことから、マリガンそのものを減らせるむかしむかしとの併用も難しい。結論として、フードでこのカードを使うことは必要を超えたリスクを背負うことであり、間違いだ。

〇楽園のドルイド…メイン戦でのキープ基準を担う。後手番で対戦相手への干渉手段と積極的に交換するスロット。虐殺少女の引き金になることも含め、サイドアウトの動機は数多い。

◎むかしむかし…削減しているリストも散見されるが、個人的には高く評価しているカード。先にも書いたが同型戦はとにかくマナを伸ばして、最低でも5ターン目にストレートにニッサを出せなければ戦いの土俵にも上がれないことが多く、最終的にハイドロイドでリソースへと変換できることも含めて、マナの需要は非常に高い。その上で、序盤にマナソースを確実に確保し、フラッド時にはハイドロイドに向けてデッキを掘り進められるこのカードはデッキの理想的な動きを行うために必須のパーツだと言える。サイドアウトした場合の勝率の変化を実感しづらい為に気軽に手をつけてしまいがちなスロットであるが、ドルイドを減らした場合にマナソース、特に青マナの用意が出来ることは大きく、スペルを増やした程度の理由ではサイドアウトしないのが吉である。

△探索する獣…勝因になったり、腐って負けたり、振れ幅が大きいカード。狼が出てくると棒立ちになるが逆に出てこないとそこそこインパクトがあり、かと思うとあっさり鹿になったりで、リスクリターンの体感はそこそこ下振れ寄り。1枚程度なら腐るリスクを許容して採用する構築の仕方もあると思うが、そのために抜けているカードもあることを忘れてはならない。コントロールやかまどデッキへのサイドカードとしてなら優秀。

〇厚かましい借り手…純正を純正らしく見せているカード。特にサイド後は出来事を経由せず殴っていくことが多く、実際効果的である。ただ、他の青いカードと同時併用、例えば5マナからバウンスしつつプレイという動きが青マナの数が足りずに出来ないことも多々、そうなった場合に複数引いたために手札を十全に使えないことを避けるために3枚採用に留めることも視野に入れていた。

◎霊気の疾風…草案の火、荒野の再生、波乱の悪魔等々、ミラー以外でも基本使いどころはあるので、メインに積むことに最早少しの躊躇いも無い。

△神秘の神殿…各マナ域で常に動きたい場合が多く、円滑な展開の足を引っ張ることが多い。色マナを担保するために仕方無く入っているが、出来るだけ減らしたかったスロット。

〇総動員地区…MPLで突如見出されたカード。基本サイズが3/3の世界において立派な頭数であり、終盤の詰めで活躍する。このカードの加入によって青白コントロールの調整の道は絶たれた。

〇夏の帳…フード相手は手番によって入れたり入れなかったり。コントロール枠の青白に腐る場合があるので4枚必要なマッチは特に無い。

〇クロールの銛撃ち…フード同型で先手後手問わず、不確定ながらテンポとアドバンテージを取れるカードとして採用。純正は巨大なハイドロイドがネックになる以上、構え合った末にガチョウがライフを確保するのは明確な負けパターンであったため、勝利貢献度は高かった。繰り返すがパワー3は立派な頭数である。

〇軽蔑的な一撃、否認、神秘の論争…打ち消し枠は4~5枚。直前で青白コントロールが出現したため、テフェリー自体に触れるカードを大目に採用。軽蔑はスゥルタイ、特に虐殺少女に、論争は純正用に。

〇打ち壊すブロントドン…置物系コントロール用なのは勿論、エンバレスの宝剣擁するアグロ相手にもブロッカーとして運用出来る、汎用性の高いサイドカード。

△恋煩いの野獣…ブロントドンと異なり対アグロ限定であり、サイドスロットを節約できる恐竜に軍配が上がった形。ブロッカー性能は確かに高いが、出来事デッキのアドバンテージなど別方面で突破されることには無力だったり、用意した際の勝利貢献度には疑問があった。

△大食のハイドラ…こちらも対クリーチャーデッキ限定だが、エッジウォールの亭主を潰せることから優先的に採用。黒緑に対してはマナ効率が悪く、残った残骸にも殆ど価値が無いことから頗る使用感は良くないが無い袖は振れない。純正2色の明確な弱みといえる。

画像1

以上を踏まえてMPL八十岡翔太氏のリストのメインボードを少量変更、サイドボードを1から構成したリストでGP名古屋に参加、優勝することができた。対戦の7割近くがフードミラーだったが、プレイの選択肢が出来るマナベース、ゲーム展開を用意できたのは、4枚採用したむかしむかしの賜物だと確信している。プレイヤーズツアーファイナルへ一足飛びの権利を得られたのは調整チーム、そしてオーコのおかげだ。ありがとうオーコ、そしてさようなら。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?