青白ヨーリオンが出来るまで。

5/16のミシック予選に青白ヨーリオンで参加、10勝1敗で本戦の権利を得ることができました。勝利を切望していたイベントで結果を残せて只々感慨深いばかりです。どのようにこのデッキを構築、選択するに至ったかを紹介します。

1,始まりはコントロールから

4月末頃、イコリアドラフトを遊び飽きたので新カードを使って思い思いのデッキでスタンダードを楽しんでいました。ケルーガファイアーズやルールスサクリファイスなどが幅を利かせていた時代です。

遊んでいたデッキの中にカヒーラやヨーリオンを相棒に据えたコントロールデッキがありました。回していて中々に感触は良く、普段の環境ではコントロール嫌いの僕でもストレスを感じずに使うことができました。

何故僕がコントロールデッキを嫌いかというと、まず一つ目はリアクティブなカードが多く相手のデッキによってカードの強さに差が出やすいからです。クリーチャー除去はコントロール相手には不要ですし、重いパワーカードは速いアグロ戦で足を引っ張ります。二つ目はデッキの中でのカードの役割が明確に決まっている場合が多く、ドロー内容によってゲーム展開のムラが生じやすいことです。クリーチャーを軸としたアグロ・ミッドレンジであれば毎ターン何かしらのクリーチャーをプレイすることでプレッシャーをかけるなり、最低でも攻防に使うことが出来ます。しかし大抵のコントロールデッキは、相手のカードと1:1交換するための軽いカード、カード枚数を稼ぐためのドローカード、ゲームを切り返すための全体除去ないしフィニッシャーカード、そしてカードの重さに応じた多めの土地というようにそれぞれをバランス良く引けたなら勝てるけれど、そうでないとき、フィニッシャーを引けずにマナフラッドしたり、ドローとフィニッシャーばかり引いて相手のカードに対応する時間が無かったりなど、ちぐはぐな展開が起きるリスクを孕んだ構成になりやすいのです。

「相棒」メカニズムが浸透したことによってこれらの僕が考えるコントロールデッキの抱える欠点は大分緩和されたと思います。一つには対戦相手のデッキタイプが対戦前にある程度推測できるようになったことです。これにより相手のデッキがルールス、オボシュであればカウンターとドロー多めのやや重い初手をマリガンすることを検討できますし、マリガン後に相手がヨーリオンなら全体除去をライブラリーに押し込むことに躊躇いが無くなります。もう一つは「相棒」そのものがコントロール戦略の一部分を確定で担ってくれるため、他の要素を濃くすることでデッキの動きを均質化しやすくなることです。ヨーリオンを相棒に設定することでゲーム中のフィニッシャー要素を必ず確保できるため、デッキに1:1用の軽いカードを大量に詰め込むことが正当化されます。軽く相手の動きに対応しながらフィニッシャーを出すというコントロールの理想の動きをスムーズに、高い確率で実行できるようになったのです。

以上の理由からこの環境のコントロールは他のデッキにもよるけれどそれなりに使用に堪えるな、というのが僕の感想でした。2つ目に載せたエスパーヨーリオンはケルーガファイアーズの騎兵やバントヨーリオンが積み始めたサメ台風のトークンを軽く処理できる無情な行動を使用するため、そして上記の理由からカード自体の強さを理解したヨーリオンを採用するために1つ目のジェスカイコントロールを黒く組み替えたものです。ラダーの戦績もよく、結構いいデッキが出来たなと満足していました。

2,出揃う戦士達

5月初めには今現在のメタゲーム上位のデッキ達が殆ど登場し切りました。奇抜な見た目と確かな実力、サイクリングアグロとジェスカイルーカです。エスパーヨーリオンは無情な行動が繁栄の狐に当たらず、全体除去は肉儀場では狐を殺せずに空の粉砕系だとその隙に自分のランドから食らったダメージのせいで閃光一発KOとサイクリングに厳しい戦いを強いられました。ジェスカイルーカに対しては打ち消しがそこそこ多いので全然戦えないというわけでも無かったのですが、マストカウンターの多さから色々カウンターした後の互いにテフェリー着地からのパワーカード相撲になってしまうとケルーガやバントヨーリオンとは比較にならない無茶苦茶をしてくるので相手のテフェリーと死に打ち勝つが通った時点で大体負け、そして構えあう展開だと太陽の神のお告げとアーデンベイル城がちまちまプレッシャーをかけてきてこちらから動かざるを得ずそこから一気に寄り切られて負けと要するにそこそこ不利でした。

対応できないデッキが昇ってきたのでエスパーに早々に見切りをつけて他のデッキで遊ぶことに。赤単オボシュ、マルドゥ騎士、サイクリングなど色々アグロを回していくと、噛み合った時の爆発力はどれにも感じましたが勝率自体は伸びず、トップメタのジェスカイルーカが全体除去を多く積み始めると容易に対策されることを肌で感じて2週間後のミシック予選に使うべきタイミングが来るかどうかは悲観的でした。全体除去以前にも、2マナのアクション→太陽の神のお告げ→ヨーリオンという流れだけで攻勢が一気に緩んでしまいルーカの隙の無さを実感することになりました。

ティムールクローバーとジェスカイウィノータ、コンボ系ミッドレンジにも触ってみたところ、厚かましい借り手が繁栄の狐に有効だったり、ジェスカイルーカに対してクロックパーミッションのようなゲームプランを挑む際の軸となって非常に強いと感じたものの、肝心の幸運のクローバー、ウィノータを引き込めない、もしくは処理されてしまうと各アグロとルーカに圧し潰されてしまう展開が頻出してしまい、単純に1枚1枚のカードパワーが足りておらずデッキとしての強さには疑問が残りました。

細々と回していて勝率も良いティムール再生、バントヨーリオン、ジェスカイルーカのいずれかを残り1週間で詰め切ろうか、そんなことを考えていたところ一つひらめきます。

3,天啓の光

除去のスロットにこの2枚を採用したヨーリオンコントロールを作ってみてはどうか。

アグロを回した経験から、太陽の神のお告げはルーカとのコンボ無しでも相当に障害になると認識していました。アタッカーがトークンとの相打ちに持ち込まれることが最悪なのはもちろん、忠誠値がわずかなテフェリーとナーセットをチャンプブロックで守ることでヨーリオンがそれらをまとめて再利用します。この動きで得たアドバンテージから1:1交換を続けるだけで十分にゲームの流れを掴むことが可能であり、後続の裏切りの工作員達が蛇足に思えるほどです。そして、最も重要なのはこのカードを使うことでルーカ側のこのカードによるクロックをインスタントタイミングで相殺できることです。これによりカウンターの構え合いから一方的にクロックとプレインズウォーカーへのプレッシャーを突き付けられるリスクを緩和でき、さらには対戦相手が持っていない場合にはこちらから攻撃に行くことさえできるのです。ケイヤの誓いだったり屈辱だったり色々と試行錯誤していた除去スロットと明らかに一線を画しています。

もう一つの厚かましい借り手は青白に他の色を足すことなく繁栄の狐、サメ台風、そしてルーカの-2能力を完璧に妨害することができます。最終的にヨーリオンでリソースを回収できることが確定しているためアグロ相手に必要なのは時間稼ぎでありただのバウンスでも十分、打ち消し損ねたパーマネントを改めて処理するオールドライクな戦法もしっかりと効果的です。ルーカ相手にはサメを戻し、その身で更にサメをチャンプブロックしてプレインズウォーカーを守り、自ら殴ることでナーセットや本体に相当のプレッシャーを与えることができます。構えあうゲーム展開で完璧な働きを見せるこのカードはまさしくデッキが求めていた1枚です。

2マナのアグロ相手に対する追加のアクションとしてメレティス誕生を数枚採用、エスパーから青白2色に生まれ変わったヨーリオンを試しにラダーで回したところ、上記のカードはイメージ通りに機能してくれた上に0/4の壁、3/1飛行、1/1トークン達によりコンバットが出来るようになりサメトークンと一緒にこちらから殴りきる展開が想像以上に多く、クロックをかけることでナーセットやルーカに対してカウンターを吐かずに済む展開もあり、デッキの可能性を強く感じさせます。初期のリストではエルズペス死に打ち勝つを4枚採用、カウンターはドビンの拒否権、中和、神秘の論争が4枚づつという構成でした。

デッキの概形が定まったなら細部の調整です。ジェスカイルーカは5ターン目以降のエルズペス死に打ち勝つを通し合う展開において環境最強です。青白側は相手の重いアクションを2~3マナでカウンターし続けることで残りのマナでプレインズウォーカーを展開してリソースを稼いだり、重いカードを抱えさせたままインスタントタイミングで3/1飛行やサメでクロックをかけてカウンターのバックアップでゲーム終了まで走り切って勝利することを目指します。このゲームプランにおいて対戦相手のテフェリーを、特に3~5ターン目でクロックが弱い状態で絶対に着地させることはできません。後手のゲームも考えると2マナ以下でテフェリーを打ち消せるカードを限界まで採用する必要があります。

後手番でテフェリーに届かずカウンターの打ち合いでも弱い3マナの確定カウンターを最低1枚否認ないし物語の終わりにすることは速やかに決まりましたが残りのスロットをどう捻出するか。この環境でコントロールデッキを回し続けた経験から抜くべきカードは比較的すぐに分かりました。エルズペス、死に打ち勝つです。前述したようにジェスカイルーカはこのカードを巡るスタック上以外での攻防において最も秀でているデッキです。このカードを何枚取っていようと、何枚手札にあろうと、ルーカと工作員でその3倍のスロットをデッキ内に有しているルーカ側に叩きつけ合いで勝つことは不可能です。5マナという重さからカウンターでのバックアップが機能するのは最低でも7ターン目、相手の致命的なカードが通ってしまいやむを得ずフルタップで死に打ち勝つ、そうなった時点でゲーム終了です。つまり、致命的なカードをそもそも解決させない、否認は死に打ち勝つより明確に優れたカードなのです。ジェスカイルーカ以外のマッチアップでも、サイクリングや騎士などのルールスデッキには対象が最初から無く、ティムール再生に対しても死に打ち勝つより否認のほうが明らかに良いカードです。赤単オボシュには死に打ち勝つの方が良いですが、軍旗や舞台照らし、踏みつけなど否認の対象はいくつかあるので最悪なカードというわけではありません。ルーカ以外のファイアーズデッキや変容するケラトプス等の打ち勝つが欲しいシーンはいくつかありますが、無視していいレベルの少数です。以上のゲームプランに必要ないという理由から死に打ち勝つを減らすことにしました。最終的なデッキリストで1枚残されているのは、ルーカ相手でも本当にマナが伸び切った終盤であればしっかり強いカードであること(複数枚引いてしまうとそれを軸にしたリスクの大きいゲームプランを取らざるを得ません)、いくつかの活躍できるマッチアップ、シチュエーションでナーセットでトップデッキ出来る可能性を残しておくためです。その場合1枚入っていることと0枚の場合の差が大きく響きます。

こうして作ったスロットで後手でテフェリーを打ち消せるカードをメインデッキに11枚用意することができました。先手なら3マナカウンターも加わるのでそれなりにしっかりした枚数が確保できたのではないでしょうか。1枚の物語の終わりは否認系を固めて引くシチュエーションの中にアナックスやルールス、サメトークンなどに触れる可能性を残して散らしてあります。更にルーカ相手に腐るカードを減らすために2マナの除去のスロットをガラスの棺から本質の散乱に変更しました。サイクリングのクリーチャーを打ち漏らす可能性もありますが、打ち消せた場合には2マナを得した上にサイクリング誘発もさせないと利点も多く、デッキのインスタントカードの枚数の多さからも良い変更だったと感じています。

メレティス誕生含めたマナベースが過剰だったのでその分のスロットで厚かましい借り手と太陽の神のお告げを増量。ヨーリオンという確定で使えるマナの使い道があるのでマナベースはフラッド寄りに組むべきです。3色デッキに比べて色マナカウントに余裕があるので爆発域を採用。かまど、赤単などに非常に効果的で、土地から受けるダメージの少なさと一緒にこのデッキのアグロ耐性を引き上げてくれました。

サイドボードはメインをルーカに寄せているので対アグロカードを大量に採用する必要があります。サイドカードが不足しがちなヨーリオンデッキですが、厚かましい借り手や太陽の神のお告げはマッチアップを問わずに使い道が存在するので、ルーカ相手へのガードを下げずに対クリーチャーシフトをしっかりと取れるようになりました。基本的にサイドアウトするカードは3マナのカウンターと物語の終わり、先後手でナーセット1枚、死に打ち勝つで10枚程度です。否認系のカードですが、アグロ側のプレインズウォーカーや一心同体などのサイドカードと噛み合うことが多く、軽いことからもむしろサイド後は中々良い働きをすることが多いので3~4枚程度残しておいていいと考えています。対サイクリングで最も効果的な魂標ランタン3枚、ランタンが効果的でないクリーチャーデッキ、赤単や緑単には霊気の疾風がよく効き、対荒野の再生のサイドカードも兼ねます。2マナのクリーチャー除去を4枚、触りたいのは繁栄の狐、ドラニスの刺突者、雄々しい救出者、夢の巣のルールス、エッジウォールの亭主、漆黒軍の騎士、立派な騎士、鼓舞する古参、忘れられた神々の僧侶、波乱の悪魔、鍛冶で鍛えられしアナックス、変容するケラトプス、獲物貫きオボシュといったところ。大抵がシステムクリーチャーです。変容するケラトプスはメジャーなクリーチャーでは無いですが、メインの死に打ち勝つを削減したためイージールーズの確率が上がっており出来るなら触れるようにしたかった気持ちが出ています。安心と定番のガラスの棺が正に安定に見えますがカードリストとの睨めっこで神秘の制圧を見つけました。巨大になった狐を止めきれなかったり、1/1の救出者が場に残ってしまったりしますが、それを差し置いて先手2ターン目の2マナを無駄なく使ってプレインズウォーカーを安全に着地させられたり、些細な盗みやカウンター呪文と一緒に構えられるメリットは大きいのではないかと試してみたところ使い勝手は良好。エンバレスの盾割りもかわせるので採用に至りました。アナックスに貼るとパワーが無くなったり、序盤にプレイしてヨーリオンでオボシュに張り替えるなど渋い働きをしてくれるカードです。4枚のうち半分は狐に触れるガラスの棺と、心ばかりケラトプスにも対応できるヘリオッドの神罰を採用することにしました。最後はアグロ相手はやはり全体除去、一心同体で守られたり展開を絞られたり、何だかんだで連打して強いカードです。空の粉砕に加えて残り1枚も時の一掃を。メインボードでルーカに対して完全に腐るカードは空の粉砕の2枚のみ、入れ替えるために否認を2枚。ティムールクローバー用に夢さらいを取ることも考えましたが、否認をフル投入することで綱渡りながらも殴りきることができると分かり、デッキ自体も少数だと考え不採用としました。大抵のアグロにもヨーリオンが攻防切り替えを十分果たしてくれるので押し切られないための軽いカードを優先するほうが堅実だと思います。

4,終わりに

体感での各デッキとの相性はジェスカイルーカにやや有利で荒野の再生に大きく有利、アグロにもやや有利、似た構成かつマナ加速があるバントヨーリオンに僅かに不利と、大きく不利なマッチは無く使用に値するデッキだと判断しました。またミシック予選はデッキ非公開のイベントなためメジャーでないデッキを使うことは僅かながらプラスに働くことも期待できます。最後までジェスカイルーカと選択を迷っていましたが自分の練習を信じサブミットのボタンを押しました。

結果は初めに述べた通り本戦の権利を獲得。最高の結果に満足しています。色々なデッキを回してみることで得られる気付きは大きいものなんだなと改めて実感しています。これからも勝てるように、楽しみながら沢山デッキを回していきたいですね。読んでくださってありがとうございます。青以外のデッキにドビンの拒否権と否認を入れ替えるのを忘れないように気を付けてください。それではまた。

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