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【諸行無常の向こう側のうた】坂上太一「花笑み」で1.3倍過去に未来に想いを馳せるnote

こんにちは!
アキレスと亀のともきです。

今回は

坂上太一「花笑み」について

並立の美しさ
対比で鳥肌
千年の向こうまで

3つのキーワード勝手に深読みしていきます!


並立の美しさ


太一さん「花笑み」では古典文学の引用が使われているのです。

歌いだしから

久方の光のどけき春の日に
しずこころなく花は散るらむ
散りゆくその姿を
見上げたあどけなき横顔

久方の光のどけき春の日にしずこころなく花は散るらむ
こいつが紀友則さんの歌なんよ。

小倉百人一首にも収録されている有名な歌ですから皆さんも聞いたことがあるかもしれません。いわんや平安時代にはすでに生まれていた太一さんが知らないはずはないだろう。

ざっと現代語訳すると、日の光が穏やかな春の日なのに、どうして桜は落ち着かない様子で散っていくのだろう。という感じ。
これ以上はほんとに古典講座になってしまうのでそのあたりは太一さんに任せます。枕詞の話とか面白いんだけどまたの機会に笑

この有名な和歌を引用することでこれだけ短い言葉情景をぶわぁっと広げる手法は斬新だしさすがです。マジ阿修羅。

そんでそこに続く歌詞もいいのよ

どうして笑っているのに
涙はあふれてくるのでしょう

これですよ。
先ほど和歌の話をしましたが、そこでは、どうしてこんなに穏やかな日に花は忙しく散っていくのでしょう。ということが書かれている。

穏やかな日なのに花が散っていく笑っているのに涙があふれるという並立。これがきれいよね。日本語の美しさ。

引用と自分の言葉のバランス感が良い。お互いを引き立てあってより美しい言葉にしています。うまし。


対比で鳥肌


そして2コーラス目でも引用が!
こちらは鴨長明さん。代表作は「方丈記」
結構大胆な引用です。

ゆく川の流れは絶えずして
しかももとの水にあらず
よどみに浮ぶうたかたは
かつ消えかつ結びて
久しくとどまりたる例なし
世の中にある人と栖と
またかくのごとし

ここまですべてが「方丈記」の引用となっております。聞いたことある!という方も多いかもしれません。
このままでは古典解説おじさんになってしまいそうですが軽めに現代語にしてみます。

川の水は絶えずながれ続け、しかも同じ水が流れることはない
淀みに浮かんだ泡は消えたりできたりを繰り返し、長く保たれることはない
世の中の人の暮らしもまた同じようなものである。

という人や人生の儚さを川に例えて書かれたものです。諸行無常。

とはいえ漢坂上太一は無常のままでは終わらせません。

桜舞うその姿は
あなたにどう映るの
名前もまだ わからずに
小さな手が空へと伸びてゆく
いま、わたしのすべてで守らせてください

このあえてひらがなを残している感じも平安香ってます。さすがは平安からずっと現役。

桜はすぐに散ってしまうから儚いものの象徴として使われることが多くあります。
名前もまだわからずにとか小さな手という表現は、冒頭のあどけない横顔という表現も相まっておそらくまだ言葉を話せないくらいの子供をイメージさせます。

この儚い桜これから成長していくであろう子供の対比!ブラボー!!

そこに大人である自分守らせてくださいってセリフですからね。
かつ消えかつ結びて続いていく営みを、この一言で無常から希望に変えてしまっている。何それ天才かよ。鳥肌立つわ。


千年の向こうまで


さて、なんだか引用ばかり話してしまっているような気がしますがここからは引用外の部分について!というかクライマックスの詩めっちゃ良いので喋りたい!と!思います!!

花笑みかける あなたの
命の輝きが
千年の向こうまで
永遠(とわ)に永遠に永遠(えいえん)であれ
いま、すべてのいのちで祈らせてください

花笑みとは花が咲くこと、また花のように笑うことだそうです。
花のように笑うあなた。という表現もきれいですが、ここはあえてもう一歩踏み込んで想像していきます。

花が散ることが儚いたとえとするなら、花が咲くことは生命の誕生ととらえることもできるような気がするんです。

つまり、花笑みは生まれたばかりのあなたがあどけなく笑う様子と解釈してしまいます。やりすぎかね?笑

そんな命の輝きが千年向こうまで続く。千年って昔、それこそ平安の時代なんかには永遠とほとんど同義だったんですよ。

平安時代は今から1200年ほど前ですが、そのころ生きていた人たちの言葉は今も残り、その人たちが築いてきた歴史の上に僕らは生きています
それはただの土台とかそういう話ではなくてもっと人間味のある温かいものであってほしい。
ゆく川の流れは絶えないしもとの水ではないけれど、だからこそ「あなた」は一人しかいない。だからその輝きが永遠になるように祈らせてほしい。

いのちのすべてでというフレーズも太一さんならでは。あんなに全力で命を燃やしている人もそういないでしょうから。

そんな諸行無常の向こう側のうた「花笑み」をお聞きください。

なんだか今の自分を全肯定してくれるような優しさを感じます。震える。

そんな坂上太一さんも参加しているジョイミューことEnjoy Musicから
コンピレーションアルバムEnjoy Music New Wave Generations vol.2のリリースが決まっております!そちらも忘れずチェックしてくださいね!

それではまた次回の記事でお会いしましょう!ばいばい!


おいしいビールが飲みたいのです・・・