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憧れが好きになる。

梅雨も明け本格的な暑さになり始め夏休みも近くなってきたなと感じる。夏休みに入れば行きたくない学校も行かなくて済む。

私は学校が苦手だ。いや、嫌いだ。毎日同じ事をするのが嫌だった。でも、学校を休む程の勇気はなくてもどかしいこの気持ちを抑えながら耐えながら学校に行っていた。

先生:はい、出席とるぞー

先生が出席を取り始める。

先生:○○ー…あいつはまた休みか

○○くんは隣の席の子。1回見たことあるけどThe不良みたいな男の子だった。ピアスも開いてたし髪も金に染めていた。彼は滅多に学校に来ない。私はそんな彼に少し憧れを抱いていた。学校に行かないって行動ができる彼は私にとって自由に見えた。

ひ:(私も○○くんみたいになれたらなぁ…)

窓から見えるプールの水の流れを眺めながら漠然と思っていた。


昼休み。私は1人、席で昼ごはんを食べていた。

みんながワイワイ盛り上がってる中で1人でいるのはとても息しずらい。友達は1人、2人といるけど一緒にお昼食べるくらいじゃない。
この息しずらいのに耐えられなくなりお弁当を半分残し教室を出た。

私が向かったのは屋上。唯一私が学校で好きな場所。屋上は誰も近寄らないし何より障害物がないから空を目一杯感じることが出来る。その自由さが好き。

ひ:(今日も誰もいない)

私は真ん中に座り空を眺めていた。

今日も変わりない日。この時まではそう思っていた。

?:あれ?珍しく人がいる

ひ:!?

私は人の声がしてびっくりして反射的に声の方を見る。

?:あ、驚かしちゃった(笑)ごめんね

声の人は顔が影なっててよく見えなかった。

ひ:すみません…邪魔ですよね…もう行きます

?:なんで?(笑)

ひ:え?

?:屋上は誰のものでもないんだし君がいたって俺は困らないよ(笑)

ひ:はい…

彼が近づいた事で顔が見えた。金髪にピアス。もしかして…。

ひ:○○くんですか?

○:あ、俺の名前知ってんの(笑)

ひ:あ、すみません…

○:大丈夫大丈夫(笑)俺も有名人なのかな(笑)あははっ…で君の名前は?

ひ:森田ひかるです

○:森田さんね…クラスは?

ひ:D組です

○:おぉー俺と一緒(笑)

ひ:はい、知ってます…それに隣の席ですし…

○:えっ?そうなの?じゃあ仲良くしとかないと(笑)

ひ:滅多に来ないのに?(笑)

○:それもそうか(笑)森田さんよく言うね〜

ひ:あっ…ごめんなさい…余計な事言って…

彼があまりにもフレンドリーでついつい喋ってしまった。

○:大丈夫だよ(笑)ってかずっと立ってないで座らない?(笑)隣いい?

ひ:はい…(密かに憧れてた人と話すのはなんか緊張するなぁ)

○○くんは私の隣に腰を下ろし空を見上げていた。

○:森田さんはよくここに来るの?

ひ:はい

○:なんで?

ひ:……1人になれるから?

○:まぁここ滅多に人来ないからね〜

ひ:はい…

○:なんか堅苦しいなぁ〜(笑)クラスメイトなんだしラフにいこうぜ(笑)

ひ:わかった(笑)

彼のラフさに少しだけ緊張が解けた気がした。
それから休み時間と忘れるくらい彼と話をしてお互いの事について話を交換し合った。この時、初めて自分のことを誰かに話した。

○:森田さんも学校嫌いなんだね(笑)俺と一緒だ(笑)

彼が少年のように無邪気に笑うから私は少し胸がギュッとなった。

ひ:でも○○くんみたいに学校休む勇気ないんよね…(笑)

○:じゃあ今度一緒に学校休もうぜ!(笑)

ひ:え?(笑)

○:1人でできないことだったら2人でだったらできるだろ(笑)

ひ:うーん…でも…

○:じゃあ決まりで!(笑)いつにしようかなぁ…じゃあ〜明日!!(笑)

ひ:えぇ!(笑)

彼の急な提案で学校を休むことに。

○:じゃあこれ追加しといて(笑)

ひ:うん(笑)

自然な流れで○○くんと連絡先を交換出来た。

○:もう昼休み終わっちゃうからまた連絡するね〜

ひ:はい…って○○くんはこれからどうするの?

○:サボる(笑)

彼がまた無邪気な笑顔で返してきた。また胸がギュッとなった。

ひ:だろうね(笑)…(なんなんだろ…この感じ…)


次の日。私は親に熱が出たと嘘をついて学校に休む連絡をした。両親ともに仕事が忙しい人で朝は私にあまり時間が取れないからバレる事もなかった。

ひ:○○くん…まだかなぁ…

1人近所の公園で彼を待つ。

○:森田さん遅れてごめん!

彼は自転車に乗ってやって来た。

ひ:大丈夫だよ(笑)今来たところ(笑)

〇:ほんと?(笑)待たせちゃってたらまじでごめん(笑)

ひ:だから大丈夫だって(笑)それよりどこ行くの??

〇:決めてないんだけど…俺のお気に入りの場所案内するよ!

ひ:わかった!

彼の事を少しでも知れるかもしれないと感じて嬉しくなった。

彼と2人乗りで自転車に乗る。
彼のシャツの裾をぎゅっと掴んでるだけで何故か緊張した。

〇:森田さん!もっと自転車飛ばすから裾掴むんじゃなくて抱きついて!

ひ:え??

〇:あ、嫌だった?

ひ:ううん…

〇:じゃあ…はいっ(笑)

彼が私の腕を引っ張り腰に巻き付ける。物理的に彼と距離が近くなってドキッとする。
彼の顔は見えないが今きっと彼の表情は私の好きなあの無邪気な笑顔なんだろうなぁ。

そうこうしているうちに海の方まで出てきた。

自転車が急に止まる。
自転車を降りて彼は隅っこの方に置く。

〇:ここ!俺のお気に入りの場所!

見ると海が一面に広がっていた。

ひ:わぁ…すごい!

〇:だろ!(笑)この広い海を見てると海って自由だなぁって思って羨ましいんだよね(笑)

ひ:なんかわかるかも(笑)

〇:まじ!やっぱり森田さんとは気が合いそうだな(笑)

彼は海の方へと歩いていく。私はそれを後ろから追う。

〇:どう?ここ気に入った?(笑)

ひ:うん!

〇:よかった(笑)

それから私たちは海の家でご飯を食べたり、波際で水を掛け合ったり、ただ海を眺めたり、存分に海を楽しんだ。

~~~

防波堤の上を2人並んで歩く。

ひ:こんなに海が綺麗だなんて初めて感じた…連れてきてくれてありがとね!

〇:いえいえ(笑)

その時強い風がふき、私の被っていた帽子が風で飛ばされた。

ひ:あ!帽子が!きゃっ!…

バシャンッ!

私は飛んで行った帽子を取ろうとしたが前が見えてなくて私は海に落ちてしまった。

〇:森田さん!!

ひ:ブハッ…はぁっ…はぁっ…〇…〇…く…

ひ:(あ…ダメかも…)

私は意識が段々と遠のいていくのを感じた。

バシャンッ!

〇:森田さん!

〇〇はひかるを抱き抱える。

〇:しっかりしろ!おい!

ひかるはぐったりして反応しない。

〇:おい!……森田さんごめん

〇〇は息を沢山吸い、ひかるの唇に自分の唇を重ねる。

ひ:………んっ……

〇:森田さん大丈夫?

ひ:〇〇…くん…

ひかるは虚ろな目で〇〇を見つめる。

〇:とりあえず海から上がるよ


私たちは近くにある海の家に行き、着替えとタオルをもらった。

私が着替えてる間、〇〇くんはデッキの方に座って海を眺めていた。

ひ:さっきは…助けてくれてありがとう

着替え終わって〇〇くんの方に近づく。

〇:おう…もう大丈夫?

ひ:うん…服は…濡れちゃったけどね…(笑)

〇〇くんの隣に座る。

〇:あのさ…森田さん

ひ:ん…?

〇:さっき…助けるときに人工呼吸するためにキスみたいな事した…ごめん

ひ:……なんで謝るの?助けてくれたんでしょ?

〇:だって…助けるためでも会ってまもない人からキスみたいな事されたら嫌でしょ

ひ:……

〇:だから…ごめん

私は〇〇の顔を覗き込み唇を重ねた。

〇:んっ…!森田さん?

ひ:嫌じゃないよ…〇〇くんだったら…

〇:え?

ひ:私ね…〇〇くんに憧れてたの…誰にも縛られない自由なところが

〇:……

ひ:昨日初めて〇〇くんに会って…話して…今日こうやって二人で学校サボって…気づいたら憧れが好きになってた…///

〇:うん

ひ:〇〇くんが好き…私と付き合って…?

〇:……

ひ:あ…その…嫌なら振ってもいいから…気持ち伝えたかっただけだから…

自分から告白をしたのに自信を無くして俯いてしまった。

〇:森田さん

ひ:ん?

顔を上げた私に〇〇くんは唇を重ねてきた。

〇:俺も森田さんの事が好きだ

ひ:えっ…

〇:今日1日一緒にいて楽しかったし会った時から思ってたけど俺たち気が合うなぁって(笑)運命なのかもなって…俺と付き合ってください

ひ:はい…お願いします…///……ってか運命って(笑)〇〇くんもそんなロマンチックなこと言うんだね(笑)あははっ

〇:そんなに笑うことか(笑)

ひ:あははっ!…意外すぎて(笑)

〇:笑いすぎてるヤツは置いてくからな〜(笑)

ひ:あぁ〜彼女を海に置いていこうとするな〜!

〇:置いてかねぇよ(笑)ほら行くぞ

ひ:うん!

二人で海の家の人にお礼を言って海の家を後にする。その時に海の家の人に『お幸せに〜』と言われたのはちょっと恥ずかしかったけど…(笑)

私たちは来た道を並んで歩いていく。

ひ:これからもよろしくね…彼氏として…///

〇:こっちこそよろしく(笑)

ひ:あ!そうだ!夏休みデート行こ!

〇:いいよ(笑)

ひ:やったー!

〇:なんか森田さん急に喋るようになったね(笑)

ひ:それは…仲良くなったから…///ってか森田さん呼びやめて!

〇:じゃあ…ひかるさん?(笑)

ひ:さん付けやだー!…呼び捨てがいい…///

〇:わかったよ(笑)ひかる…///

彼は少し照れた感じで私の名前を呼んでくれた。

ひ:よろしい(笑)

夕日に照らせれた彼の顔を今日の思い出と一緒に忘れたくないと思った。

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